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諦めること
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「……そういうの困る」
凪は顔を伏せる。千紘の提案は凪のことが好きだからということはわかっている。だからといって、無職になった男を簡単に家に住まわせるなんておかしな話だ。
「凪は1人で頑張り過ぎなんだよ。家庭事情も聞いたから思うけどさ、子供の頃から親にも甘えられずにきたんでしょ?」
「甘えるとかよくわかんないし……」
「甘え方もわかんないんだよね? もうちょっと他人に人生預けてみない? 俺なら全部受け止めてあげるから」
千紘の穏やかな声が、しっとりと凪の耳に届いた。凪にはよくわからなかった。どうして千紘が好きという気持ちだけでここまで凪の全てを受け入れようとしているのか。
自分だったら面倒事は絶対に嫌で、他人の面倒など見たくはない。可愛い女性であっても、自分のことはなんでも自分でしてくれるような自立した人を選んでいた。
千紘はそんな自分とは違って反対に甘えられることが好きなのか。けれど、樹月ほど依存されるのは辛いようだし、考えれば考えるほどわからない。
「それだけ寛容なのに、元彼のことは無理だっただろ」
「ん? 樹月? あれは頼るとか甘えじゃないよ。感情のある人間をモノ扱いしてたし、自分さえよければ他人はどうなってもかまわないって考え方がそもそも嫌いだった」
「……でも、甘やかされ過ぎたらそうなんのかも」
「……じゃあ、俺が作り出したモンスターか」
千紘は珍しく眉間に皺を寄せて、複雑そうな顔をした。その例えがあながち間違っていないような気がして、凪は思わずふっと笑ってしまう。
「やっと笑った。久しぶりに見た、笑った顔」
「んー……最近そんな余裕もなかった」
「うん。おいで。いっぱい甘えさせてあげる」
千紘が凪の髪を撫で、後頭部に触れる。先程のように千紘の胸の中へ凪の頭を抱え込むようにして誘導した。
凪は不本意にも居心地の良さを感じ、黙って頭を撫でられながら、千紘の背中に両腕を回した。
凪は顔を伏せる。千紘の提案は凪のことが好きだからということはわかっている。だからといって、無職になった男を簡単に家に住まわせるなんておかしな話だ。
「凪は1人で頑張り過ぎなんだよ。家庭事情も聞いたから思うけどさ、子供の頃から親にも甘えられずにきたんでしょ?」
「甘えるとかよくわかんないし……」
「甘え方もわかんないんだよね? もうちょっと他人に人生預けてみない? 俺なら全部受け止めてあげるから」
千紘の穏やかな声が、しっとりと凪の耳に届いた。凪にはよくわからなかった。どうして千紘が好きという気持ちだけでここまで凪の全てを受け入れようとしているのか。
自分だったら面倒事は絶対に嫌で、他人の面倒など見たくはない。可愛い女性であっても、自分のことはなんでも自分でしてくれるような自立した人を選んでいた。
千紘はそんな自分とは違って反対に甘えられることが好きなのか。けれど、樹月ほど依存されるのは辛いようだし、考えれば考えるほどわからない。
「それだけ寛容なのに、元彼のことは無理だっただろ」
「ん? 樹月? あれは頼るとか甘えじゃないよ。感情のある人間をモノ扱いしてたし、自分さえよければ他人はどうなってもかまわないって考え方がそもそも嫌いだった」
「……でも、甘やかされ過ぎたらそうなんのかも」
「……じゃあ、俺が作り出したモンスターか」
千紘は珍しく眉間に皺を寄せて、複雑そうな顔をした。その例えがあながち間違っていないような気がして、凪は思わずふっと笑ってしまう。
「やっと笑った。久しぶりに見た、笑った顔」
「んー……最近そんな余裕もなかった」
「うん。おいで。いっぱい甘えさせてあげる」
千紘が凪の髪を撫で、後頭部に触れる。先程のように千紘の胸の中へ凪の頭を抱え込むようにして誘導した。
凪は不本意にも居心地の良さを感じ、黙って頭を撫でられながら、千紘の背中に両腕を回した。
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