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甘えん坊

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 知らないふりをすることもできた。しかし、千紘はもう十分我慢したのだ。ガツガツ攻めたい時も、なんとか踏ん張って欲を抑えた。

 可愛い凪が必死に頑張ろうとしているというのに、ここで動かなければ男が廃る。千紘はそう思いながら、頭を撫でる手を軽く浮かせて指先で凪の耳をなぞった。

 千紘に抱きついたまま、凪はピクリと体を震わせた。

「ねぇ、凪。どこまでなら触っていいの?」

「~~~~~」

 千紘が尋ねてもギュッと力を入れるばかりで、余計恥ずかしそうに口を閉ざした。千紘は嫌がっていないことを確認すると、ふっと口角を上げて親指と人差し指とで挟み込むようにして首筋を撫でた。

「っ……」

「本気で嫌だったらストップね。凪が教えてくれたセーフワードってやつ」

 SMなどをする時に、事前に決めておくプレイの中断を示す合言葉だ。千紘はそれを思い出し提示する。凪が本気で嫌がったら止める。でも、求めているのならいくらでも与えてあげたかった。

 千紘のセーフワードの提案にも反応を示さない凪だが、千紘の触る手には拒絶することなく素直に受け入れていた。
 上の服を捲って手を入れても、脇腹を撫でても、胸の突起に爪が掠っても凪は甘い声をあげながら体をビクンビクンと反応させるばかりで嫌だとは言わなかった。

 その内凪のパンツを下から押し上げるように膨れているのを見つけて、千紘はゾクリと血が騒ぐのを感じた。
 実に久しぶりの感覚だった。もう凪とこんなことをする機会はないかもしれないと思うこともあった。チャンスがあってももっと何年もかかることを覚悟していた。

 千紘は、散々我慢し続けた自分を褒めてあげたかった。あの時欲に負けて凪に手を出していたら、今ここに凪はいなかったかもしれないし、こんなふうに甘えてくる凪を見ることは絶対になかった。
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