漆黒の大魔将軍は勇者に倒されたはずでした!?

武家桜鷹丸

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第一章 勇者に倒されたはずだった。

集める者達。

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 春の陽光が木々の間から降り注ぐ中を軽快に動く三つの影がいた。
 見た目は猫だが大きさは幼稚園児ほどで首に葉っぱのスカーフや肩掛けバッグを身につけている。
 先頭を走る三毛猫は時折後ろをチラチラと見ながらも迫る自然の障害物を難なく乗り越えていく。
 この者達はケット・シーと呼ばれる種族で主に森で集落を作って生活している。
 この【大黒林だいこくりん】は広大な森でしかも毒草や毒虫などが外周を囲っており外敵の侵入を防いでいる。だからケット・シー達は安全に生活しているのだ。

「ちょっとミケラ!速すぎるよ!」

 後ろをついていく虎柄の毛並みが先頭のミケラに呼び掛ける。

「これでも遅く走ってんだよルグラ!ロピ!ついに見つけたんだから早く早く!」
「そ、そんなこと言っても~!村一番の脚には勝てないよ~!」

 ミケラの少し後ろにルグラからまた少し後ろの最後尾を走る灰色の毛並みのロピは必死で追いかけていた。
 3匹は森を駆け抜けて開けた場所に着く。そこには森の中には似つかわしくない瓦礫の山があり巻きつく蔦や生えた草花が年月を語っていた。
 ミケラは瓦礫の山の中腹あたりまで登ると右手を指して他の二匹に伝える。

「ここだよ!この瓦礫の下に見えたんだ!だからどかすの手伝って!」

 ミケラの指示でルグラとロピは大きな瓦礫を三匹がかりで引っ張って動かす。ゴリゴリと擦れる音を立てて瓦礫が動くとさらに身体を押しつけラストスパートをかける。

『んんんにゃあああああああ!!』

 最後は声を上げて瓦礫を押し倒し下へと転がして落とす。瓦礫を落とすとミケラはすぐに自分が見たものを確認しに向かう。

「うん!間違いない!これがきっと最後の欠片だよ!」

 見つけたものにミケラは瞳を輝かせた。
 そこにあったのは先に赤紫の飾りが付いた黒い角のようなもの。ミケラは角の大きさ故に両手で持つと喜ぶ。

「やったみゃ!これで兜が完成するみゃあ!」
「よかったねミケラ。早速村に戻ろう。」

 角を木の蔓で自分に巻きつけ固定するとミケラ、ルグラ、ロピの三匹は集落に向かって走り出した。



 小さな集落ながらミケラ達の住み処に着くと住人から声がかけられる。

「あらミケラちゃんおかえり。また冒険してきたの?」
「おいミケラ、ルグラ、ロピ、あまり集落から出るんじゃない。今年は暑い日が続いて毒草の出来が悪いんだから気をつけろ。」

 大人達の言葉を聞き流しながらミケラ達は長老の家である大きめの木と葉っぱで出来た家に向かった。
 奥に進むと杖を手に特徴的な布のマントを身につけた年老いたケット・シーがいた。

「どうしたミケラよ?まだ昼飯の時間ではないはずだ。」
「長老様!ついに最後の欠片を見つけたよ!」

 ミケラの言葉に長老は長い眉毛を大きく動かすと振り返る。

「おお!ついに見つけたか!数十年かけて我々が探し集めてきた最後の欠片が!」
「はい!この角で間違いないかと!」

 頷いたミケラは角を長老に見せる。角を見た長老は色と肌触りに確信を得られたのか杖をついて歩くと祭壇らしき場所に向かい布をゆっくり引いて下ろすと一つの兜が姿を見せる。

「よいかミケラよ。この兜は我々の大恩人であるお方が被っていた漆黒の兜である。かのお方がいたからこそ我々は今日まで平穏に生きておる。」

 長老は下の者達に何度もした話をする。
 かつて自分達ケット・シーは魔族の中で弱小種族に入り虐げられていた。
 しかしそこに救いの手が現れる。
 漆黒の鎧を纏い圧倒的な魔力で敵を蹴散らしてみせた彼は自らを大魔将軍と名乗り彼はケット・シーを保護した。
 大魔将軍は他にも似た種族を保護し、自分の管理下で種族に合う仕事を与え生活を保証してくれた。
 しかし勇者が現れ大魔将軍の城に向かった時、彼はケット・シー達を兵士に使いはしなかった。
 むしろすぐにこの大黒林に逃がしたのだ。
 大魔将軍の部下に必要な知識と技術を伝えて共に森林に逃がしてもらったケット・シー達は大恩人の想いを忘れず今日まで生き延びてきたのだ。

「しかし、とある日のことである。一匹のケット・シーがこの兜を見つけてきたのじゃ。」

 持ち帰ってきた兜を見て当時の長がこの兜は大魔将軍のものであると言い切ってみせた。
 当初は半壊していたが見つけた場所の周囲に散乱している可能性があると判断し探索を開始した。
 ケット・シー達は森で黒い破片を見つけては持ち帰り合っているか確かめる。
 驚くのは破片が合っていると近づけた瞬間に宙を舞って兜に亀裂すら残さずくっついてみせるのだ。
 よってケット・シー達は破片を見つけては兜に近づけて修復させていった。
 そして破片を探し続けること数十年、兜はほぼ本来の形に復元していたのだが、唯一三本ある角の真ん中が折れたままで見つからず時間が過ぎていた。 
 その角をついにミケラが持ち帰ってきたのだ。

「さあミケラよ。その角を近づけるのじゃ。合えば角は自然と兜にくっついてくれる。」

 長老に言われてからミケラは合いますようにと心の中で願いながら歩み出そうとした時だった。

「みゃみゃあ!長老様!」
「何事じゃ!?」

 緊張の瞬間を打ち消すように一匹のケット・シーが駆け込んできて言った。

「ひ、ヒト族にゃあ!ヒト族がやってきたのにゃ!」

 言われたことに長老とミケラ達は驚く。
 ヒト族とはケット・シー達にとって驚異であるからだ。
 平穏に暮らしたい自分達の森に勝手に入っては追い出したり、捕まえてどこかへと連れていかれると親から子へと伝わってきて悪いことしたらの戒めにも使われてきた存在だ。
 そんな恐ろしい奴らがどうやってここまでこれたのかと疑問を口にする長老に駆け込んできたケット・シーは話す。
 今年は例年より雨が降らず、木陰でも暑く感じる日々が続いた。
 そのせいで毒草地帯の一部が枯れており、そこを通ってきたのではないかとのことだった。

「ええいヒト族め!皆に伝えよ!急いで長老の家に集まるのじゃと!」

 長老は指示を飛ばすと普段動かさないテーブルをひっくり返し木の板を剥がすと洞穴が見えた。

「ルグラとロピよ!二匹で兜を持って穴に行くのじゃ!あれだけは絶対にヒト族に渡してはならぬ!」

 長老の指示にルグラとロピは二匹で兜を下から持ち上げる。正直大きく重い兜なのでよたよたとした足取りながら洞穴へと入っていった。

「長老!私は皆を連れてくる!年寄りとか幼い子もいるから!」
「わかった!頼むぞミケラ!」

 長老の返事を聞いてミケラは角を洞穴のすぐ近くに置いてから家を出た。
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