弱者だった少年が英雄になるまでの物語。

白達磨

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少年が英雄譚を歩み始めるまでの物語。

英雄志望のすすかぶり

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 そこは、神々が地上へと降り立つ世界。

 人々は神々から授けられた加護により生活を営んできた。ある者は、物作りが得意になり、ある者は、薬学に精通し、またある者は、剣技が上達する。

 そして、かつて封じられた邪神とその眷属が蔓延る世界へと繋がるゲート。そこからそれらが侵入してくることを未然に防ぐため戦うギルド所属の冒険者達がいる。富と名声を求めたり、それ以外の職がなかったりと彼らの目的は様々だ。

 そして、十七歳の黒髪黒眼の少年、ヒロ・プラヴァンもそんな冒険者の一人だ。

 ここは、伝説の3人と呼ばれる元冒険者の内の1人、《剣王》ユロス・エスパーダ・ルミエールが治める王国。そこに設置されたギルド本部だ。

 ヒロは、ヨロヨロと疲れた様子でギルド内を進み、顔なじみの職員のカウンターへと近づく。

「コギーさん、今日の鑑定よろしくお願いします」

「お、来たかすすかぶり」

 コギーと呼ばれた中年の男は、ヒロの姿を認めると、咥えていた煙草を手に取り、ニっと笑った。そして、彼の前に盆を突き出した。

 ヒロは、その盆に四つ小さな宝石の様な物を乗せた。それらは、ゲート内のモンスター達の核だ。モンスター達は死亡すると稀に残す部位と核以外は塵となり消えてしまう。
 冒険者達は、それらをギルドへ売却し、報酬を受け取っている。

「ふむふむ……ホーンラビット二体とゴブリン二体ね……。お前、朝から潜ってたんだろ?」

 コギーは核を一つ、また一つと手に取り眺め、モンスターの種類を素早く鑑定した。熟練者のみが為せる技だ。

「……はい」

 ヒロは、申し訳なさそうに縮こまる。コギーは、その姿を見て大きくため息を吐いた。

「お前そろそろ違う仕事探せよ。一日中命張ってその日の食い扶持繋いでやっとって……」

 コギーは、傍にあった灰皿に煙草を押し付け火を消した。

「他の冒険者達に最弱だのすすかぶりだの馬鹿にされて、挙句の果てには騙されて痛い目見て……どうして未だに冒険者辞めないんだ?」

 コギーの疑問は、最もだ。

 ヒロが冒険者になったのは唯一の肉親である祖父が亡くなったのと同時で一年以上前だ。

 それだけの期間があれば、大抵の者は最低ランクのGから一つ上のF、上手くいけばEランクへと昇格する。しかし、ヒロは未だにG。

 その理由は、明確だ。この世界の人間が十五歳になると同時に神々の一柱から授かる加護。ヒロは、加護を授かっているものの、それが効果を発揮していないのだ。

 その弱さと毎日傷と汚れを全身につけ満身創痍で帰還する彼を馬鹿にし、黒髪黒眼に掛けてつけられたあだ名が''すすかぶり''と言う訳だ。

「僕は……」

 今まで縮こまっていたヒロは、若干前のめりになる。

「伝説の三人みたいな英雄になりたいんです!!」

 ヒロの声は、ギルドの建物内に響き渡った。そして、一瞬の静寂の後、建物内にいたほとんどの者が吹き出し大笑いした。

「ギャハハハ!!あのすすかぶりが英雄か!!」

「こりゃ、大きく出たもんだ!!ハハハハ!!」

 仕事後の酒を飲み酔った冒険者達が口々にヒロを小馬鹿にした。それに対し、彼は、赤面し小刻みに震える。

「たく……ほれ、報酬だ」

 コギーは、再びため息を吐くと、ヒロに報酬を渡し早く帰れと手を振った。

 ヒロは、それを受け取るとギルドから走り去った。

「英雄様がお帰りだぞ~」

「明日も活躍期待してるぜ、英雄様~、ハハハハ!!」

 ヒロは、冒険者達の彼をからかう声を背に受け走った。彼は、ひたすら悔しさと惨めさを感じたのだった。
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