異世界で予言の巫女になりました

青野滝エリ

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不思議な出来事

4. 身近な存在

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それからというもの、千佳は夢の中で頻繁にレナードの元を訪れていた。

レナードの元を訪れる時、千佳は決まって庭園のガゼボ近くに現れる。
初めのうちは警戒心を持っていたレナードも心を許したのか、気づけば2人はこの場所でお茶を飲みながらお互いの国の話をして、千佳が帰るまで一緒に時間を過ごしている。


「・・・なんだ、チカ。
 お前、今日も来たのか。暇人だな。」

「ちょっとー。
 人の夢に毎度登場してるのはそっちなんですけどー。」

いつものように突然現れた千佳を適当にあしらったレナードは、何も言わずに素振りを始める。

テーブルに置かれたティーカップを見つけた千佳は、椅子に座りお茶を飲みながら彼の素振りを見学することにしたらしい。


「素振りばかりしているけど、先生はいないの?」

「・・・いない。」

出されたお茶を飲みながら何気ない質問をする千佳に、レナードは言いづらそうに答えた。


「そーなんだ。
 そう言えば、このお屋敷って他に人いないの?」

「・・・今はいない。」

思わぬ返答に千佳は驚き、質問した事を後悔する。
素振りをしながら答えるレナードの顔は、酷く悲しそうだったからだ。


「・・・ごめん。
 私、何も考えずに聞いてしまって。」

「別に構わない。
 ここは、別邸で僕しかいないんだ。」

淡々と答えるレナードに、千佳は目を丸くする。


“こんな広い所に1人で住んでるなんて・・・”

「偉いね。」

「・・・なんだ。急にっ」

自分よりもだいぶ年下のレナードが、気丈に振る舞っているように見えた千佳はそう言って立ち上がる。
素振りをする手を止めたレナードに近づいた千佳は、そっと頭をなでた。


「・・・っ」

「レナードはよく頑張ってるよ。偉い。」

突然のことに驚いて目を丸くするレナードだったが、どこか恥ずかしそうにしている。


「・・・仕方ないんだっ。」

「そっか。」

そう言ったレナードの肩は小さく震えていた。


「・・・・。」

「寂しくなったら、いつでも胸に飛び込んでおいでー」

と笑顔で言う千佳の言葉を間に受けたのか、顔を引き攣らせながらレナードは距離をとる。


「誰もいなかったら、お世話する人もいないの?」

レナードの表情に苦笑いしながら、冗談が過ぎてしまったと感じた千佳は、先程の彼の言葉が気になりそう尋ねた。


「・・・自分のことくらい自分でできる。
 それに、食事は日に3度届けられる。」

「え、それで大丈夫なの?
 レナード、まだ幼いじゃない。」

「幼く無い!これでも、14歳だ!!」

「私からすれば幼いわ!」

思っていたより年下で驚く千佳をよそに、
「僕は偉いからな。自分のことくらいちゃんとできるんだ。」
と言ってレナードは胸を張る。


“普通、良い所の子供はお付きの人にやってもらうのでは?”

思わずそう言いそうになった千佳だったが、誇らしげに言う彼が微笑ましく見え、
「私の知っている14歳はそこまでしっかりしてないよ。偉い。」
とだけ返した。


「それより千佳。
 お前、日に日にここにいる時間が長くなってる」

「言われてみればそうだね・・・」

突然、話題を変えるかの様にレナードはそう言いながら千佳へ真剣な眼差しを向けた。
自覚していたのか、千佳は少し考え込んでいる。


“確かに。以前より、夢の時間が長くなっているかも”

「そのうち、レナードの世界に居座ったりして」

「・・・僕は世話しないからな。」

朝起きる時間は変わっていないはずなのに、夢で過ごす時間は長くなっている様な気がした千佳は、冗談めいた事を言って笑う。
レナードは冷ややかな目を千佳に向けていたが、少しだけ満更でもなさそうな表情をしていた。



「本当にチカが居てくれたらいいのにな・・・」

この日も、いつもの様にたわいない会話をして千佳が完全に消えるまで見送ったレナードは、静けさが戻った庭園で、空いたティーカップを片付けながら願うようにそう呟いた。
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