25 / 44
24.
しおりを挟む「はぁ~楽しかったなぁ」
商業区から私たちが住んでいる居住区へ帰るために箱型移動車を呼ぼうとターミナルに来ていた。
「そうだね。また来ようよ」
居住区の外に出たのは生まれてこの方初めてだったがものすごく楽しかった。
車を依頼しようと受付に並んでいるとポンと肩を叩かれた。
「よ!元気?」
そこに居たのはコスモさんと私服のSPさん数名だった。
「コスモさん!こんなところで会うなんて、お仕事ですか?」
そうだ、帰ったら彼に聞きたいことが山ほどあるのだ。急に現実に戻された気持ちになった。すると後ろからモモトセが抱きついてきた。
「またお前こんなとこに~もしかして、ついてきたん?」
「そんなとこ」
悪びれる様子もなくコスモさんはかわいこぶりっ子の顔をしていた。
「いやぁなんか今回の事って仕組まれているような気がしてなぁ、ちょっと心配だからついてきたわけ」
そんな予感はまさに適中した。今まさに初めて見る金髪碧眼で色の白いスラリと綺麗な女性がこちらに向かって走ってきていた。
モモトセは危険と察知したのか私を自分の背後にやり、戦闘態勢に入った。それに合わせてコスモさんとSPさんたちも構えてきた。がーーーーー
「ツムギーーーー!!会いたかったよぉ!あれまたナナミと一緒にいるじゃんなんで?相変わらず顔隠してのねアタシは隠したって匂いでわかるっていったじゃない」
ツムギ?とは誰のことだろう。ナナミはモモトセの叔父さんだ。この人は知り合いなのだろうか。コスモさんは「こりゃ大物が釣れた」と喜びを噛み締めていた。
「あんた誰なん?てかツムギ?ナナミって誰?」
「んんん?おかしいなぁ、ツムギはともかくナナミはアタシの事大好きだったじゃない。もう虜です~♡って感じだったのになぁ~」
モモトセの胸のあたりをクンクンと匂いを嗅いでいるとモモトセが露骨に嫌そうな顔をした。顔がだんだん真っ青になっていた。
「てか、近くない?なんかちよっと気分悪くなってきたわ…」
「酷いっ!てか匂いはナナミに近いけど違うにゃ~。むしろハッカイって感じ。ハッカイ整形した?」
ハッカイという言葉を聞いてモモトセはあからさまに厳しい顔をした。
「なに、お父さんのこと知ってるん?」
「お父さん…パパ…おう!君はあのハッカイとチトセのベイビーちゃんか!はぁ~ナナミそっくりに育って…およよ」
「…チトセって」
モモトセが母親のことを聞こうとした時綺麗な女性はコスモさんの方を向いて目をキラキラさせていた。
「K-50い「カタリ!久しぶり。俺今はコスモって名乗ってるからそれで呼んでくれ」……コスモ、久しぶり~」
この美しい女性はカタリさんと言うのだそうだ。どうやらコスモさんと知り合いのようでカタリさんの言葉を遮り名前を訂正していた。本名が気になる。
「ねね、後ろにツムギいるんでしょ?学問区から出てるなんて久しぶりだから会いにきちゃった。アタシ商業区か歓楽区しか出入りできないからなぁ~」
カタリさんはモモトセとコスモさんの間から顔を出して私の方を凝視した。
「ツムギが女の子になってる」
「違うぞ、カタリ。彼女はお前の子どもだよ。愛しいツムギとの」
お前の子ども…ということは
「お母さん…?」
「ええっかわいい!!!この子がアタシの子?えぇーーーラッキーすぎる。生まれてからすぐ引き離されたからすごく会いたかったぁ~」
とても母親のように見えないくらい少女らしいカタリさんは私のことをかわいいかわいいと抱きしめてくれた。
「さすがアタシの子。ツムギにそっくりでかわいい~♡匂いまでそっくり」
父の名前はツムギというのか。母に会えた嬉しさと戸惑いで何とも複雑な気持ちになっていた。
「カタリ…今日はチトセはいないのか?」
チトセとはモモトセのお母さんかもしれない人である。モモトセはその言葉を聞き少し緊張感が出ていた。
「いるよ~チトセはゆっくりだからそろそろこっちに追いつくんじゃない?ほら、チトセー!」
カタリさんはチトセさんも呼ばれる女性に向かって手を振っていた。チトセさんはミルクティ色の髪を靡かせてゆっくり歩いてきていた。近くに来てアースカラーのモモトセと同じ瞳でモモトセの姿を捉えた時その美しい瞳が大きく開かれた。
「モモトセ…」
モタモタ歩いていたら足取りが少しだけ早くなる。素早く動けないようでたどたどしくモモトセに向かっていた。
「モモトセ、モモトセ、会いたかった」
「チトセ珍しくたくさん喋ってる」
カタリさんは私を抱きしめてぐりぐりしながら感動の親子の初めての対面を見ていた。
「お母さん…って呼んでもええんかな。はじめまして。モモトセです」
「元気?母、私母。会いたかった」
チトセさんはずっと泣いていた。モモトセは突然の事にただただ動揺していた。
「ごめん。私離された。頑張った。ダメだった」
「カタリ、何でチトセはあんなに話せないんだ?昔はお嬢様みたいに話してただろ?」
コスモさんはモモトセとチトセさんに聞こえないようにカタリさんに聞いていた。
「あーチトセはモモトセを産んだら用済みって風俗に落とされたからね。生粋のお嬢様だったチトセは心を病んじゃって何年も話さなかったから言葉を忘れたみたい。5年前にアタシの面倒を見るようになってからは少し話するようになったよ」
「…ほら母親のキャラが濃すぎて子どもたちは完全についていけてないぞ。とりあえずゆっくり話せるところに移動するか」
そう言われてとりあえず商業区の空いているレンタルルームを借りることにした。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
肉食御曹司の独占愛で極甘懐妊しそうです
沖田弥子
恋愛
過去のトラウマから恋愛と結婚を避けて生きている、二十六歳のさやか。そんなある日、飲み会の帰り際、イケメン上司で会社の御曹司でもある久我凌河に二人きりの二次会に誘われる。ホテルの最上階にある豪華なバーで呑むことになったさやか。お酒の勢いもあって、さやかが強く抱いている『とある願望』を彼に話したところ、なんと彼と一夜を過ごすことになり、しかも恋人になってしまった!? 彼は自分を女除けとして使っているだけだ、と考えるさやかだったが、少しずつ彼に恋心を覚えるようになっていき……。肉食でイケメンな彼にとろとろに蕩かされる、極甘濃密ラブ・ロマンス!
病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜
来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。
望んでいたわけじゃない。
けれど、逃げられなかった。
生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。
親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。
無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。
それでも――彼だけは違った。
優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。
形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。
これは束縛? それとも、本当の愛?
穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
ヤンデレエリートの執愛婚で懐妊させられます
沖田弥子
恋愛
職場の後輩に恋人を略奪された澪。終業後に堪えきれず泣いていたところを、営業部のエリート社員、天王寺明夜に見つかってしまう。彼に優しく慰められながら居酒屋で事の顛末を話していたが、なぜか明夜と一夜を過ごすことに――!? 明夜は傷心した自分を慰めてくれただけだ、と考える澪だったが、翌朝「責任をとってほしい」と明夜に迫られ、婚姻届にサインしてしまった。突如始まった新婚生活。明夜は澪の心と身体を幸せで満たしてくれていたが、徐々に明夜のヤンデレな一面が見えてきて――執着強めな旦那様との極上溺愛ラブストーリー!
独占欲全開の肉食ドクターに溺愛されて極甘懐妊しました
せいとも
恋愛
旧題:ドクターと救急救命士は天敵⁈~最悪の出会いは最高の出逢い~
救急救命士として働く雫石月は、勤務明けに乗っていたバスで事故に遭う。
どうやら、バスの運転手が体調不良になったようだ。
乗客にAEDを探してきてもらうように頼み、救助活動をしているとボサボサ頭のマスク姿の男がAEDを持ってバスに乗り込んできた。
受け取ろうとすると邪魔だと言われる。
そして、月のことを『チビ団子』と呼んだのだ。
医療従事者と思われるボサボサマスク男は運転手の処置をして、月が文句を言う間もなく、救急車に同乗して去ってしまった。
最悪の出会いをし、二度と会いたくない相手の正体は⁇
作品はフィクションです。
本来の仕事内容とは異なる描写があると思います。
人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている
井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。
それはもう深く愛していた。
変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。
これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。
全3章、1日1章更新、完結済
※特に物語と言う物語はありません
※オチもありません
※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。
※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる