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しおりを挟むとうとう大学での握手会が開催されることとなった。とりあえず警備の人をたくさん連れて動くこととなった。モモトセは喉を壊している設定で握手会を開くことになった。握手会の会場はスタッフの人もたくさん居るのでおそらく安心であろう。あの時コスモさんに渡されたコンタクトも一応付けていた。
私はアースィムと2人で動いていた。大学の文化祭に遊びにきたということにした。
「ここってツヅリが受けたかったところでしょ?オープンキャンパス的なのも兼ねて見たらどう?」
「それもいいかもしれないけど、その余裕はないかも…」
なんせツムギさん…もといサトリさんに会うのだから。どうやら遺伝子組み換えの簡単講座の体験講師を今日の午前に行う予定なのだそうだ。講座が終わるときに話しかけようと思い廊下で待っていた。
「そうだ。これ」
ふいにメモみたいなものを見せてきた。そこには「骨董市で手に入れたから帰ったら渡す」と書かれていた。どこで何を聞かれて見られているかわからないのでかなり慎重に動いている様だ。
「わかった。ありがとう」
旧式のアンドロイドを手に入れれば多少の穴になっていた設計図も埋まるはずだ。そう思っていると教室から人がたくさん出てきた。
「いこう」
アースィムは私の手を引き教室へ向かっていった。教卓の方には髪の黒い癖毛の男性が立っていた。やはり容姿は若く私たちとほぼ変わらなかった。ふっとこちらを振り向くと大きく目を見開いてこちらに駆け寄ってきた。
「ツヅリ…?ツヅリなのかい?」
声が震えていた。私にそっくりの男性が目に涙を浮かべていた。
「はい。貴方は…私のお父さんですか?」
「うん。うんそうだよ。名前は…ツ…。サトリだ。そう、サトリ。ずっと会いたかった」
ツムギではなくサトリと別の人格で名乗り出てきた。それにどういう意味があったのかははかりかねるが、優しく抱きしめられて少し嬉しかった。
「隣の子はお友達かい?それとも…恋人?」
「すみません。僕はツヅリさんの友人で、今はツヅリさんが育った施設の職員をしています」
「そうかそうか。それはうちのツヅリがお世話になっています。ここは次の講義で使うから私の研究室へおいで」
ニコニコした笑顔が優しそうでカタリさんとは違いどことなく父親っぽいなと思ってしまった。
「さて、どうして会いにきたのかな」
目の前にはお茶とお菓子を用意された。ここはサトリさん個人の部屋らしく小さくこじんまりしたところに4人がけのテーブルが置いてあった。そこに腰をかけた。
「私は父親としての役目を果たしていない。…本当にダメな親だ。でもどうしても一緒に過ごせなかったんだ。すまない」
まるで父親をしていない事を責めに来たのかと言わんばかりの態度だった。
「色々思うことはありますが、今回聞きに来たのはその話じゃありません」
「ちょっと待ってツヅリ。やっぱりおかしい」
アースィムは私より庇うように少し前に出た。何がおかしいのだろうか。
「サトリさんは自分で名乗りでないですよね?それにそんなに表情豊かじゃない」
「バレたか。ボクは勉強しかしてきてないから流石に無理か」
どうやらあった時から既にツムギさんの人格だったようだ。カタリさんと同じで子どものようだった。
「そんなに警戒しなくてもボクは君たちに何もしないよ」
どこでどうツムギさんの人格になっていたのだろうか。
「あのナナミに似ている子は誰かな」
ツムギさんはニコニコの笑顔で質問してきた。
「婚約者です」
ツムギさんはグイッとみを前のめりにしたがアースィムが壁になってくれた。
「そうなのかボクもサトリも賛成だよ」
「ツムギさんは選民しようとしてるんじゃないですか?殺してしまうから最後に思い出でもってことですか?」
アースィムが思い切って切り込んでいた。が、ツムギさんはポカンとして何を言ってるのかわからない顔をしていた。
「選民か…それはボクには関係ないよ」
「何人か誘拐しているじゃないですか」
ツムギさんはうーんと考えるポーズをして悩んでいた。しかし何も心当たりがないのか何度か向きを変えても出てきそうになかった。
「何人か誘拐してるのはボクじゃないよ。誘拐された後の採血や遺伝子操作をしてるのはボクだけど。ボクはアイドルの遺伝子情報とアイドルを眺めるのと、最高に相性の良い遺伝子同士を結ばせることに命をかけているからそれ以外のことに全く興味なんてない」
どういうことなのだ。とアースィムと私は2人で思っていた。ハッカイさんから聞いていた情報と違う。
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