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しおりを挟む「ナナミさんは誘拐したんですか?」
「ナナミのことは誘拐してないよ。聞きたい?長くなるけどボクの昔話を聞いていって」
そこから話された内容はこうであった。以下はツムギさん視点で話をする。
ボクは約520年前にリリアム家に生まれた。その当時、遺伝子組み換えを人に出来るのかという非人道的で非道徳な実験がリリアム家でされていた。そこに生まれたのがボクだった。ボクは幼い頃から実験を見て育った。その当時組み換えは不成功ばかりで、No.だけつけられて出来損ないの命が捨てられていった。
ボクは大きくなるにつれて天才である事がわかってきた。そこで父が遺伝子に関する事を学ばせて、自分の研究を共に出来る様に育てていった。
するとメキメキ能力を発揮してボクが17歳の時初めて遺伝子組み換えをした人間が誕生した。K-501というNo.をつけられた。その子はその研究施設で育てられた。それ以降は国から認可が降り、その技術を世の中に浸透させていき、生殖医療技術として後世に残ることとなった。
ボクは大人になり、研究室の所長となった。そこにクゼ家の人がそこにやってきた。莫大なお金をそこに出されて「これから生まれるクゼ家の子どもは全て遺伝子組み換えをして優秀な子のみ誕生させてくれ」と頼まれた。断る理由もなく快く引き受けて以来今までずっと担当している。
そんな時にアンドロイド戦争が起こった。アンドロイドが世界的に普及し意思や思想を持ち始めて人を滅ぼそうとした。アンドロイドに対抗するために所謂ドーピング剤というものを作らされた。体の自己回復を高めたり、身体能力を跳ね上げたりする技術だ。それでは解決にならない事を理解しながらも10代という未熟な思考と周りの大人の力によってどうすることもできなかった。
ドーピング剤を打っても適合の人と不適合の人がいて、不適合の人は死に至った。そこでの適合の人として選ばれた20人のうちの1人がボク、もう1人はカタリだった。その副作用で歳をとるのが止まってしまい、なかなか死ねないのだそうだ。
アンドロイドとの戦争はギリギリ人間が、勝利したが、人がほとんど死んでしまった。ただでさえ海が広がり、陸が少なくなっていた地球において、無限にあった国がここで1つになった。それほどに人はいなくなっていた。戦いの傷で地球が傷ついた。そこから生態系も少し変わった。
一体は何がしたかったのか分からなかった。人の役に立つために一生懸命研究し、新しい技術を生んでいたのに。選ばれた仲間も数名生き残った以外は死んでしまった。1人はどこかへ行ってしまったが、カタリはずっと一緒にいてくれた。
あれから450年ほど経った時、ボクは結局遺伝子組み換えの研究などを行っていた。研究室の人は次々と入れ替わっている中、ボクだけが永遠に取り残されていた。そんな時なんとか生き残ったクゼ家の遺伝子組み換えされた子どもたちが生まれていた。
少しずつ年齢はずれているが全部で8人か。そう思って子どもたちが遊んでいるのを眺めていた。その中の1人が珍しい髪の色と目をしていた。アルビノか。この子は室内だとみんなと同じように遊べるが外には出れないかもしれないな…。日光に当たると皮膚に問題が出てくる可能性がある。身体も弱いかもしれない。なんて思っていたが、外に出るのを克服していた。
その時に自分が何故遺伝子組み換えの事をあんなに熱心に学んでいたのかを思い出した。そうだ、自然であれ医療技術を使ったのであれ弱い子どもが生まれてくることもある。生まれながらに宿命を決められて、人生を全うできないかもしれない。そんな子に少し手を加えてあげて少しでも生きやすいように出来ればいい…そんな綺麗事を考えていたではないかと。
それからその男の子がとても気になるようになった。No.AA-773…そのままナナミと名付けられていた。
それからボクにとってナナミは特別になった。話しかけることもなく、ずっと成長を見守っていた。この歳を取らないボクを見てきみ悪がらないのは研究大好き変態研究員くらいなものだった。
そんな時ナナミがアイドルとしてデビューすることが決まった。ボクは彼の成長や勇姿を見たいとライブやイベント、全てに参加した。楽しかった。きっとたくさん練習したんだろう。元気な姿を見ると元気になれた。子どもを持つとこんな気持ちになるのだろうかとも思った。ナナミは圧倒的に女性ファンが多かったためかある時ボクが覚えられていた。
「ねね、キミいつも来てくれてるよな?いつもありがとう。男の子って珍しいから覚えちゃった。でも他のファンが嫉妬するから内緒だよ」
びっくりした。なんとも言えない気持ちだった。
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