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しおりを挟むあれからアースィムは自分がここにいると怪しまれるとのことでここに身を置くことはせずに島を出て行ってしまった。近況報告はメールが届いていた。
私たちはまた長めのデートに行っているということにしてもらって身を隠している。
ちなみにツムギさんは現在学問区にはいるらしく、学長のチャームも解き2度とチャームにかからないようにしている。例の誘拐で作られた人たちも同様にしたらしい。
遺伝子組み換え技術に関しては政府に申請中とのことだった。技術の使用の制限が厳しくなる見通しであるが、それが決定するのはもっと先の話だろうとのことだった。
カタリさんに関しては行方をくらましてしまったようで捜索中だ。もしかしたらあの時約束したナナミさんのお墓には来るのかもしれない。
「なーツヅリー、暇やねんけど」
私がアンドロイドの命令信号を作っている横でゴロゴロとしていた。ハッカイさんに別れさせると言ってたのでてっきりすぐ離されるかと思ったがそうではなかった。やはりアースィムの言う通り私を殺す予定だから今は放置しているのかもしれない。
「な、散歩行こ。それくらいなら許されるって」
モモトセはいつもの重装備をして私の手を取って外へ連れ出してくれた。外はもうだいぶ暑いので私も帽子を借りて外を歩くことにした。この島は今トルストイさんしか居らず、たまにホワイトさんが遊びに来るそうだ。生活物資は転送装置で送られてきているらしい。
「この島買えるくらいのお金を稼いでたのすごいね」
「あー、ピンク先輩は社長とか重役とかに気に入られてたから余分に貰ってるかもしれへんなぁ…」
浜辺をゆっくり歩いていると釣りをしているトルストイさんがいた。
「よ!昨日も楽しかったか?2人きりだと飽きるだろ?たまには、混ぜてくれよ~」
「何の話ですか」
モモトセが不機嫌そうに返事をするとニヤニヤしながら私を見てきた。
「いやぁツヅリちゃんはスタイルいいから楽しいだろう。モモトセみたいや若い子は特に夢中になっちゃうね」
その発言でモモトセがトルストイさんの頭をボカンと叩いていた。
「デリカシーがないねん!ホンマに。もちろんツヅリのスタイルも好きやけど、それ以上にツヅリの性格が好きなんや。余計なこと言わんとって」
それにここに来てからは私が夜になると情緒が不安定になることが多かったので慰めてくれている時間の方が多かった。自分の親が本当の兄妹であったこと、母が人を殺したこと。とにかくすべてを受け入れきれていなかった。
ほどほどに散歩して疲れたので木陰で休憩していた。モモトセは私の肩を抱き寄せて頭を撫でてくれた。
「あのな、この前の握手会の話してもええかな?」
「うん?何かあった?」
「いや、無理やりやらされていたことだったけど、アイドルやっててよかったなぁって思ったんよ」
握手会の話をするモモトセの目がキラキラと輝いていた。
「事情があって発言はできませんって言ってたけど、ファンの子のあのキラキラした目とかずっと応援してたって言ってくれたりとか、嬉しかった。俺はそうやってファンとの交流は出来てこなかったから余計思うのかもしれないけど、ツヅリがいつか言ってたファンの力になれてたのかもしれへんなって思えたんよ」
モモトセは私のおでこにちゅっと軽くてキスをしてモモトセは自分のほうに私の体を寄せた。
「あの時にツヅリが肯定してくれたから余計そう思えたのかなって思った。元々ファンのことは大切やし好きやったけど、自信を持ってそう思えたのはホンマに嬉しかった。ありがとう」
嬉しいのと同時に少しモヤモヤしていた。元アイドルのためファンのことが大切なのはいいことだし当然のことだ。仕事をしている人として尊敬できる。だけど、今は今は
「私のだもん…」
気づくとモモトセの唇にキスをしていた。モモトセは顔を真っ赤にして驚いていた。
「え?ツヅリ…もしかして、ヤキモチ?」
「……うん」
「え、ニヤける…」
モモトセは何故かキャパオーバーしてしまったのでとにかくコテージに帰ることになった。
「よし、概ねできた」
帰ってさっそく命令信号の設計図を作ることができた。後はモモトセと作成時の微調整をしながら作っていくことになる。
「あいかわらずツヅリの設計図はすごいなぁ…。無駄がない上に細かい所でしっかり作られてる」
「これは、どちらかというとロストテクノロジーに準じているから少し細工があるだけで今の技術の方が効率的だよ」
「作る側としてはツヅリのやつの方がええけどな」
楽しめるしなぁと言って必要な材料を書き出していた。
「に、しても最近家に全然帰れてへんし怒涛の毎日やね」
「まさかここまで色んなとこに関係してると夢にも思わなかったよ」
「早く片付いて、俺も18歳になって早く結婚したいなぁ~」
「そうだね」
今起こっていることを解決してモモトセやアースィム、エミリーたちと平和に何気ない日常を送りたい。将来は子どもも作ってたくさん愛情をあげたい。
時に道に迷ってもきっとみんなが居れば大丈夫。
頭ではそう思っていても心に黒いモヤがある。父や母のように狂ってしまうのではないかと。
何度も何度もこの考えを頭に浮かべてしまうのを辞めてしまいたかった。
「じゃーん!完成したで~」
あれから2週間ほど立ち、モモトセはアンドロイドの命令信号の機械を作り終えていた。
「名前はー何にしようかなぁ」
「リモコンで」
「なんでそんなツヅリが冷たいんや」
とりあえず横で何かを言っているモモトセは無視してリモコンの操作確認を始めた。小型のなんちゃってアンドロイドを操作してリモコンのスイッチを押してみた。すると動きが止まった。
「成功やん!さすがツヅリ。他にも色々準備しとかんとな」
「そうだね」
何がいるのかと準備をしているとアースィムから連絡があった。
『今ハッカイさんがアンドロイドに拘束したツムギさんと共にそっちの島に向かってる。気をつけて』
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