魔法使い令嬢は婚約破棄されたあげく

こと葉揺

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彼の望む愛の行方

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 今日は以前雨が続いていたと言われていた街の定期視察の日だった。マツリカ様とシャルル様に加えてリオン様と私、ノエ様も一緒に行くことになった。

 ノエ様は現在ラ・フォア王国に交流という名の勉強にきているらしくしばらく滞在されるそうだ。 

 あの時通った洞窟もマツリカ様は綺麗に全てが見えるように照らしていた。
 私の力だと灯りをつける程度しかできなかったけど。

 私は他の人たちが喜んで前に進む様子をどこかガラス越しで見ているような気持ちで見つめていた。

「シェリアさん」

 肩に手を置きぼんやりした私の顔を覗き込んできたのはノエ様だった。

「どうしたの?行こうよ」

「はい…。本当にマツリカ様は凄いですね」

 私が話し始めるとノエ様は「話してもいいよ」と優しく微笑んでくれた。

「以前もここに来たことがあるんです。その時は私が灯りを照らしました。でも、こんなに明るく照らせなくて、夜の街頭程度しかできなかったんです。こんなに力の差を見せつけられると…情けなくなります」

「そっか。…ほら、シェリアさん。こっち来て」


 ノエ様は私の手を引いて洞窟の方へ進んでいった。すると指を指していたのでその先を見ると黒いうさぎが死んでいた。先にはコウモリやカラスたちも倒れていた。

「この子闇の精霊だけど、きっと光の魔法にやられちゃったんだね。ほら先も見て弱い子は魔力の強さに、強い子は騎士に殺されている」

 ノエ様は弔うように祈ると彼らをマナへかえしていた。

「マツリカ様は確かにすごいよ。こんなに強い光をかざせて。でもね、強すぎる光で生きていけないものもいる。シェリアさんの光は優しい光だったんだね。だから彼らは生きていけたんだ」

 ノエ様の言葉がすっと胸に入ってきた。自分では気づかないくらい胸に穴が空いていたみたいだ。そこを優しく埋められて嬉しくて思わず涙が出た。


「ごめんね。嫌だった?」

「いえ、嬉しくて……。そう言ってもらえて…」

 ノエ様は私の涙をハンカチで拭いてくれた。

「頑張ってたなってシェリアさんを見てるとわかるよ。マツリカ様と比べるからしんどいんだ。魔法使いの中では優秀だよ。自信を持って」

 
 頭を優しく撫でられた。その手が優しくてすがりたくなってしまった。

「ありがとうございます」


 それしか言葉が出なかった。それくらい今日の言葉が自信のない私に希望を与えてくれた。

「ほらほら、泣き顔も可愛いけど笑顔でいかなきゃ。魔法もさ、帰ったら僕と一緒に特訓しよう。もっといい女になってみかえしてやろう」

 無理やり口元を上にあげられて笑顔を作らされたが嫌じゃなかった。


「おい!ブス早くこい!」

 リオン様が向こうの出口から叫んでいた。どうやら待っていてくれたようだ。

「あの素直になれないガキンチョもさ黙らせるとっておきの魔法教えてあげるよ」

 ノエ様はそう言うと白いドラゴンの 通信魔法を出してリオン様のおでこにぶつけていた。

「ほら、正直に手紙や灯りとか役立つものだけに使うんじゃなくて、自分を守るのにも使おう」

 いつのまにか少し笑顔を取り戻していた。





 

 あれからノエ様と魔法の特訓をする時間を作ることにした。ノエ様の指導は本当にわかりやすくてすごい。自分が頭でっかちだったと思い知らされた。

「シェリアさんは本当に吸収が早いね。オルタ・モンドラゴン帝国にきて欲しかったな」

「まさかこんなに自分の仕事の役に立つとは思いませんでした」

 今までは人の役に立つこと以外に使ったことはないが、仕事の効率化や護身のために使える幅が広くなって楽しかった。

「目がキラキラしていてかわいい」

 ノエ様は私の目の下を親指でそっとなぞった。彼は女性に対してこうした態度をとっているのだろう。シャルル様はノエ様のことをいろんな女性と関係を持っていると言っていたし、なんともないことなんだろう。
 私はあまりにも男性に慣れていないのでこういうことされると純粋に照れた。

「シェリア」


 少し焦った声でシャルル様が声をかけてきた。どうかしたのだろうか。

「…こちらへ」
 
 シャルル様が私に手を伸ばした。それを見たらもう手を取るしかない。
 好きな人に呼ばれたのだ。


「何?ろくに相手せずに牽制だけはしますってことですか?シャルル王子」

 自然に動いていた体をノエ様は止めていた。腕を優しく掴まれたかと思ったら腰を掴まれて優しく彼の方へ寄せられた。

「ノエ王子には関係ないことです」

「うーん?僕は一応来賓なんだから、シャルル王子のお姫様に相手してもらっててもおかしくはないでしょう。それにほら、貴方の本当のお姫様がお迎えに来てますよ。寂しそうにこちらを見ている」

 マツリカ様は息を切らして倒れそうになっていた。それを見たシャルル様は慌てて駆け寄っていた。

 ズキリと胸が痛んだ。そうすると周りに白いドラゴンがたくさんまとわりついたかと思うと城の屋根の上に移動していた。

「わぁ…すごい!」

 ノエ様の魔法だった。彼は通信魔法を大量に使って私たちを運んだのだ。

「怖くない?掴まってもいいよ」

「まったく!怖くありません」

 屋根の上をはしたなく走ってしまった。楽しい。こんなことしてもいいのかわからなくて我慢していた。

 私は結界を空のところに少し張りその上をぴょんぴょんと登ってみせた。


「そうか。シェリアさんは結界を使えたんだね。そりゃ怖くないな」

 その場から動かないノエ様を見て私は手を取って結界の上に連れてきた。

「空に浮いてるみたいじゃないですか?これ、小さい時から段差のあるところではやってたんですけど、屋根の上からはしたことなくて、一度やってみたかったんです」

「…かわいいね」

 ノエ様は最近ずっとかわいいと言ってくる。おそらくそのかわいいの意味は子どもっぽいねという意味だろう。
 でも不思議と嫌じゃなかった。


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