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2.囚われの人を探しに
野菜が出来ました
しおりを挟むあのノエさんの課題の時にまーちゃんが消えた。というかノエさんと共に移動させてしまったのだろう。
私が動こうにも今王国の兵隊が血眼になって私を探しているらしいのでルカが代わりに動いてくれていた。
そんな中、まーちゃんが心配な気持ちのまま気を紛らわせるために野菜収穫をしていた。
「出来たー!」
レタスらしきものとラディッシュらしきものができた。また料理に使おう。
「しかしこの量はやばい」
これは販売できるくらいの量がある。次ルカが帰ってきたときに一緒に売ってもらえないか交渉してみようかな…。
………まーちゃん。まーちゃんがいないと不安で仕方ない。
正直、ここに転生したときだって処刑が決まったから死にたくないってだけでアドレナリンドバドバのテンションマックスでここまでやれた感あるし、なんとなく鬱になりそうになったときにまーちゃんが現れてくれたことで安心したし、自分でやったこととはいえめちゃくちゃ後悔していた。
「あのとき怒りに任せて移動させなければ…」
ノエさんはスクロールで変なところに飛ばされたところで特に不便はないだろう。そこが悔しいが、やられたことを考えたらどうにも出来なかった。
あの宝箱の中にはお風呂に入っている私の写真(大切なところはうまいこと写ってない)と数枚の下着が入っていた。あれは完全に嫌がらせ目的にしたのだろう。
悔しい…魔法を教えることに向いているのに、人柄が先生らしくない。
どうしたってノエさんに怒りの矛先を向けてしまうばかりだった。
「まーちゃん…」
悲しい。私は前世から特に群れるタイプでも無かったが友達はそれなりにいたタイプだ。友達の心強さを知っている。
意を決して街に出てみるか…。だってマツリカに会いに行くときだって特にバレてなかったし…。
一応家族に世間はどんな感じか聞いてみてはいる。
期待しないで待っておこう。
†
私はなんとも我慢が効かない性格なんだなと思った。
気がつくと大量の野菜を荷台に乗せて、変装をして街の方へ出かけていた。
ノエさんを飛ばしたのはラ・フォア王国の方なのでそちらに向かって歩いていた。
…どこかで移動の魔法陣作って近くまで移動しよう。
そう決めて木の枝を拾い、ガジガジと移動スクロールに使う際の魔法陣を描き始めた。
周りに人がいないのが幸いだ。こんなとこ見られたら殺されてしまう。
しかし感情が先走ってまーちゃんを助けなければということに支配されていた。
「あ、シェリア」
前から聞き覚えのある声が聞こえたが無視した。
「シェリア~」
目の下がクマだらけのルカがいた。
「あ、気づいた。あっちで収穫あった。いくぞ」
ルカは移動スクロールの上に立ち魔法を使った。彼もだいぶ魔法が使えるようになっていた。あの時出かけて以来だ。
少し練習したのだろうか。
†
移動した先はラ・フォア王国の辺境地だった。このあたりは農作が盛んで王国の農産物のほとんどはここで作られていた。
魔法国・ユグドラシルは土壌も悪く、緑などほとんどないような国なので魔法使いの派遣と引き換えに農作物を輸入してもらっていた。
主にお米がよく作られていた。ここのお米は美味い。洋風なのに米。創作クオリティ。
今となっては魔法使いの派遣が終わってしまったので、輸入されているのだろうか。
そう考えると自国のユグドラシルに野菜を売りに行った方が儲かるのでは…とゲスい考えが浮かんだ。
「なにぼーっとしてんの」
いろいろ考えているとルカに声をかけられた。ルカは私の肩に顔を乗せて耳元で話し始めた。
「ほら、あそこどう思う?」
すっとルカは指を差した。その先を見ると大きな穴が空いていた。
「あれは、聖女が来る前になってたマナの枯渇?」
「そう、あそこには本来大きな池があったんだがラ・フォア王国のマナの枯渇から水が戻ってない」
「聖女が来た時元に戻ったって聞いたけど」
「この辺りまでは聖女の魔力が届いていなかったんだろうな。それにほら、聖女は光の魔法使いだ。だからか力が強すぎて日照りがすごくて干魃が起こってる」
まさか、聖女があわられたから用済みだと捨てられたのにこんなことになっているなんて思いもしなかった。
何かせずにいられず、大きな穴の前にやってきた。そこで水のオドを出してみたが、せいぜいコップ一杯分のみだった。
そもそもここに水のマナが少ないのだ。
あんなに魔法を練習したのに無力さを感じていた。と、いうか聖女はなにをしているのだ。
「シェリア、ノエと練習したことを思い出せ」
ノエさんと練習したこと…。そうか。
私は光のマナを吸い込んだ。少し限界が来そうになると以前やっていた光の通信魔法に姿を変えてマナをよそに飛ばした。
良かった。前みたいに白い蝶々だ。
「きれいだな。いつものカラスも好きだけど」
「でしょ?こんなにお清楚だったのにな~」
ちなみに通信魔法の中身は「あ」だけだったり「今日の運勢は~」とかそういうお遊びを入れて飛ばした。誰かわからないところに着くのだ。それに重要な意味は必要ない。
今はしばらくこの辺りの、マナを均等にすることに集中していた。
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