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2.囚われの人を探しに

ルカと婚約?

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 魔力を均等にする作業をしたが、本来の目的はまーちゃん探しだ。
 ここで私の作った野菜を売り捌き、お金を手に入れて宿代の足しにするのだ。
 ゆっくり休めばまーちゃんのところへ一っ飛びできるかもしれない。

「野菜いりませんか~?」


 声をかけるが返事がない。私たち2人ではきっと怪しいのだ。
 見た目もこんなに真面目で人の良さそうな感じに仕上げてきたのに…!!

「あの時魔法使ってるの見られちゃったからな。警戒されてるな」

「親切心が仇となる…」

 別の問題だが、干魃のことは概ね解決しそうだった。日照りも落ち着き、なんならあちらから雲がやってきた。雨が降りそうだ。
 ここで野菜販売するのは諦めて、宿を取るか、野宿先を決めてしまわなれけばもうすぐ日が落ちそうだった。

「…前からラ・フォア王国の騎士団が来ている」

 ルカは私をそっとマントで隠し、抱きしめて木の上に登った。
 すごい、こんな飛べたっけ?

「あいつは…ラ・フォア王国第3王子のリオンだな」

「リオンって名前なんだ」

「…失礼だな。仮にもそこで仕事してたことあるんだろ?」

「騎士様なんて関わりないし」

 それに嫌いだしシャルルからリオンまで全部の王子。あの無駄に高いプライドをなんとかしてへし折りたい。絶対する。なにがなんでも。

「顔が怖いぞ」

「目の下にクマがあるルカにいわれたくなーいでーす」

 冷静に私たちを客観視すると怪しい二人組だ。たとえ今は真面目勤勉超絶優等生風に姿を変えていても。

 王国の騎士団は数名で視察に来ているようだった。私の残された野菜は危ないから捨てろとの命令だった。
 マジでキレそうだ。


「……ここに金髪の派手目な女は来なかったか?」

 リオンが街の人に尋ねていた。やばい…やっぱり探し回っているんだ…。

「騎士団長、もうやめましょう。あの者はもう魔王城に引きこもってますよ」

 騎士団の団員らしき男性が探すのをやめようと提案していた。そうだ!いけいけ!やめさせてくれ。

「だが…ここにいる気がするんだ。匂いがする」

 匂いだ…と。

「え?ルカ、私くさい?」

「臭くないな。薔薇のいい香りはするけど」

「……逃げよう」


 私たちはここで宿を取るのを諦めて一旦外に出ることにした。






「このあたりにいい感じに洞窟があってよかった」

「魔物いそうだけど」

「大丈夫。私結界はれるから」

 ラ・フォア王国は光のマナが多いのでオルタ・モンドラゴン帝国に比べて魔法は使いやすかった。

 小スペースのみ結界を張り、そこで今晩は休むことにした。




「お嬢様はこんなとこで寝るの初めてなんじゃないのか?」

「そうね…」

 そもそもふかふかベッドのあるお屋敷に住んでたシェリアだし、前世もこんな固いとこで寝るということはなかった。


「では、僭越せんえつながら俺の胸の中で寝てください」

 ルカは大きく手を広げておいでという仕草をした。

「……お言葉に甘えます」

 ここで変に意地を張ったとしても良いことはないので素直に従うことにした。

「少し火の魔法で暖めておこうかな」

 そう言って何本か小枝を持ってきて少しだけ火を焚いた。光の結界の中なのでそれなりには過ごせるが、やはり肌寒い。

「シェリアはノエと婚約するって話をどこまで知ってた?」

 唐突になんの話をし出すのだろうと思ったが、手持ち無沙汰だし付き合うことにした。

「全くもって知らなかった」

「あれ、最初はシャルル第1王子と婚約の予定だったらしいな」

「えーおぇぇ、きしょいきしょいむり」

 私の暴言にルカは引いていたが話を続けた。

「いや、でも私なんて無理だと思う。釣り合わないし…それに」

 シャルルの相手はマツリカと決まっているのだ。その他に心が奪われることなんてない。

「そんなことはないだろ。シェリアが1番適任だ。年も近い、家柄も容姿もいい。成績優秀。でも、うちの姉…帝国の第1王子がシェリアを気に入っていたんだ」

「女王候補のあの方ね」

 正直なところ嬉しい。私はオルタ・モンドラゴン帝国の第1王子のことが好きだ。それはシェリアの人格の時からだ。

 帝国は男女どちらが王になってもよく、次代の王を決めるときは今の王が1番国に貢献している王子を指名するのだそうだ。

 完全実力主義かつ公平で、国が廃れないのはこれのおかげだろう。

 そんな帝国での第1王子は特に活躍しており、ものすごく好感を持っていた。

「姉様は魔法使いと結婚してるから余計理解があるのかもしれないが、シェリアはかなり優秀だと言っていた。うちに招きたいからと恋愛にまだ興味がありそうなノエが上がっていたんだ。王国から君を奪おうとしていたみたいだな」

「なんと光栄な」

「…なんの話がしたいかというと、俺この前出かけた時にシェリアの親に会ってきた」

「ん???」

 今何と言ったのだろうか…。あんなに血まみれでしたけども…。

「罪悪感があったんだ。未婚の女性に魔力をコントロールするためとはいえずっとキスするの。例えば将来恋人や結婚相手ができたとする。そこにこんなコブつきなら相手は嫌がるだろう?それなら俺が貰おうかなって」


「ん?」

 話が見えないぞ。というか見たくない。

「シェリアの親には結婚の許しを貰ってきた。だからとりあえずは婚約者ってことでいいか?絶対キス以上は手を出さないし、シェリアに好きな人ができたら応援する」


「つまり、免罪符が欲しいと」

「……」


 沈黙は肯定とみなす。私の意見は聞かずに勝手に決められてしまった。
 しかしルカは私の目をじっと見つめて何かを言いたげだった。熱のこもった目であったが、知らないふりをした。


「…事前に相談はして欲しかったけど、とにかくその件に関しては受け入れる」

 たしかにその方が都合がいいのだ。どうせこの身体じゃ貰ってくれる人なんて居ない。白い結婚で愛がなければもしかしたら…というところであるが、そんな者好きもこんな大魔女になってしまえばいないだろう。

 両親もそれを理解した上で了承したのだ。


「血まみれになるまで魔法のこと鍛えられたけど、粘ってよかった」


 めちゃくちゃ反対されたのかもしれない。

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