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2.囚われの人を探しに
特訓の成果
しおりを挟む一晩明け、いつものように魔力を補充しもう一度昨日いた街へ戻ってみた。
干魃の具合が気になったからだ。干からびた池の方に行くと雨は降ったが少ししか水は溜まっていなかった。
「おい、シェリア。見た目がそのままだけどいいのか?」
「まぁもう警戒されているなら無駄かなって」
幸いなことに水のマナが満ち溢れていたのでここに魔力を集めて一気に水へと変えた。
すると思った通り元の池の姿に戻っていた。
「やった!」
私が喜ぶとルカは頭を撫でてくれた。すると後ろからものすごい勢いで走ってくる男がいた。
「シェリア……シェリアなのか」
「げ」
リオンだった。いつにもまして気持ち悪い。こんな態度取られたことがない。会うと嫌味を言われるか意地悪されていた。
こうも嬉しそうにされると変な感じがした。リオンはルカの方を見て不思議そうな顔をした。
「…誰だこの男は」
「知りませんか?ラ・フォア王国第3王子、リオン様。わたくしはオルタ・モンドラゴン帝国第2王子のルカ・オルタモンドラゴンと申します」
めちゃくちゃ嫌味っぽい言い方だった。しかしやはり王子様だ。動きが優雅で美しかった。
「なっ…そんな、健康そうな顔であったか…おかしいな。それは失礼した。挨拶が遅れた…」
「長いのでいいです」
ルカはやはりめんどくさがり屋なのだ。と、いうかリオンは私がルカといることを知らないのか。あんなに有名になったというのに。
相変わらず世間知らずでズレていた。と、いうか他人の顔を覚えていないのだろう。
「それよりなんでしょう。シェリア様を捕らえに来たのでしょうか?」
「いや、捕らえには来ていない。ぜひ私のところにきてもらおうと思っている」
「なぜ?」
そして来てもらうとは。
「嫁に来いと言っている、シェリア。光栄だろ?」
だめだ、こいつ。私が王国に実験台にされた挙句ブチギレて宣戦布告したことを微塵も覚えていないのだろうか。
「ルカ、行きましょう。まーちゃんが待ってるわ。どうしてここに飛ばしてくれやがったのか知りませんけど、行きましょう」
「そろそろここにノエたちがくるはずだったんだが…ノエの魔力的に…ほら、もうすぐだ」
「シェリア!無視するな」
私たちがリオンを無視して話し込んでいると割って入ってきた。
「あーもううるさーーい!!!」
私は風の魔法でリオンを首都の方まで飛ばした。
「ホームラーン!」
「あれは流石にかわいそうじゃないか?不敬罪に問われるぞ」
「私にはもうこれ以上落ちる社会的地位など無いのです。だからやりたいようにやるのです」
うるさい外野はどこかに行ってのでとりあえずノエさんの到着を待つことにしよう。
†
私たちが端の方で休んでいると1人のおばあさんが話しかけてきた。
「あの、もしやあなた様は以前ここにいらしていた魔法使い様?」
「…えぇ、視察で来たことはあります」
そう、魔法使いとして仕事をしていたときにこの辺りの視察に来たことがある。
そのときはこの辺りが雨ばかり降って大変だということで光の魔法を使い、日照りを良くしたのだ。
「あのときはありがとうございます。そして、今回のことも…」
「いえいえ、そんな当然です」
そう、魔法使いはこうして人が困っていることを魔法で助けるのが仕事だ。
「聖女様が来たからこれからもっとよくなると思っていたのに、日が照るばかりで溜まったもんじゃありません。聖女様なんぞ名前だけです」
おばあさんは私の手を強く握ってくれた。
「そんなことよりこうしてきちんと問題を解決したくださる魔法使い様の方がよっぽどありがたい。どうしてシャルル様はあんな決断をなされたのか…」
なんとも言えなかった。正直なところ、「そうでしょ今更もう遅いのよ」とか言ってみたいとこだが、こうなったことにここの人たちは関係ないのだ。国の決定に振り回されているだけの善良な国民だ。
「そう言っていただけて光栄です。今は一時凌ぎでしか力は貸せませんが、出来る限りみなさんが過ごしやすいようになることを願っています」
私とおばあさんが話をしていると他の村人も出てきて同じように話をしてくれた。
「おねーたんはいい魔女?悪い魔女?」
突然の純粋な質問に詰まってしまった。どちらかと言えば悪い魔女だ。
「…困ってる人を助ける魔女だよ~」
「じゃあいい魔女だ!これあげゆね」
女の子は花冠をくれた。泣きそうになった。
「人は…優しい……」
お礼にここで取れたお米でおにぎりを握った。洋風の風景におにぎり…。
「これ美味しいわね!似たような料理があるわよ」
どうやらお寿司的なものは存在するらしい。ここは水の魔力も多いので漁業も盛んなのだ。
「ぜひ今度その料理も食べたいです」
私が街の人とわちゃわちゃしているとルカがノエさんとまーちゃんを連れてこにらに来ていた。
「シェリア、来たぞ」
「ま…まーちゃんっっ!!!」
『 !!!!』
思わず本名で呼ばれたが、誰も気にしないだろう。様子を見るになにもされてなさそうだった。
「久しぶりシェリア嬢。よくもあんな素敵なことやってくれたね。君は礼儀というのを知らないのかな?」
「ノエやめとけ、こいつラ・フォア王国の第3王子も吹き飛ばしたから」
「マジ??見たかったなー絶対面白いじゃん…ププ。やっぱり飽きないなー楽しいなー」
「じゃあまーちゃんと会えたのでまた城に引きこもりますわ」
私は帰ろうとするとノエさんに止められた。
「ちょっとだけ話いいかな?」
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