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3.王子様の救出
灯台下暗し
しおりを挟む夜になりその辺のモブ顔男に変えて聖女の自室へ向かった。
今は聖女は入浴中なのでこっそりと侵入することができた。
†
中に入ってみるときれいに整えられてはいたが、プレゼントの箱の山と高級品がそこら中に置いてあった。
こんなに散らかっていると何がどこにあるのか…。
水晶はここに……あった。
「何もいない……」
そこに何か魂があれば一定の魔力を感じるはずだが無い。
「聖典」
聖典を開いた。私は聖典を使って魂の移動をしたのでは無いかと考えたからだ。
聖典は聖女の枕元に置いてあった。中身はどんな感じになっているのかというと……。
ザックリ読むと、メインキャラの男性陣とハーレムを作りたい。と書いてあったが、国の干魃や水害なども書かれていた。ある程度放置してから聖女が助けに行く予定らしい。
…なんと計画的な人なのだ。でも純粋に許せなかった。自作自演で自分の名誉を上げるために国民を犠牲にするのはよろしくない。
以前よりは聖典は薄くなっていた。あの時燃やしたからだろう。最後の結末はまだ書いて無いのだろうかと見てみると「マツリカとシャルルは結婚して幸せに暮らす」と今まで書いていた文字では無い字で書かれていた。
これは、まーちゃんが最初に書いていたことかもしれない。それを書き換えようとしている痕跡が残っていた。シャルルのところを消して何か別の名前を書いてあったが、それも魔力の影響なのかよく読めなかった。
パラパラと無造作にページをめくると魂の入れかえのことは書かれてはいなかったが、ハーレムの代償について書かれていた。
それが「見た目が変わっても愛すること」だった。それをクリアすればその男の心を手に入れることが出来る。
シャルルを手に入れようとしているとは考えにくかった。まーちゃんが書いたエンディングを変えようとしていたからだ。
本当にシャルルはどこかへ行ってしまうまたのだろうか…。
色々考えていたその時廊下を人が歩く音が聞こえたので早急に自室へ移動した。
†
自室に帰ってくるとルカとリオンがいた。素早く変身を解き、軽く結界を張ってお茶の準備をした。
「使用人なのによくこんな部屋準備してもらえたな」
ルカは周りを見て感心していた。それは私も思った。何人か同室だろうと思っていたので1人部屋はありがたかった。
「そうか?ここは元々細かく分けられた倉庫だったところを無理やり部屋にしたところだ。ベットと机くらいしか置けないじゃないか」
どうやらリオンの部屋のトイレくらいの広さしかないらしい。そう言われて思わず足をぐりぐりと踏んでしまった。
「ちょっと、やめろシェリア。この人はリオン王子じゃない」
ルカの言っている意味がわからなかった。リオン王子じゃない?リオン王子なら足を踏んでもいいのか。
「どこからどう見たってリオンじゃない。その傲慢な態度。むしろ昼間の方が少年らしくて可愛かったくらいよ」
「シェリア、ちょっと口を慎め。この方は俺らが探しているシャルル王子だ」
「……はい?」
今なんと言った?
「だから、シャルル王子の魂がここにあった」
なんということだ…。リオンと思っていたのがシャルルだったとは…。
「シェリアは何か誤解しているから訂正しておくが、私は夜だけリオンの中に入れる。というか王子3人が入れ替わっている」
夜だけ入れ替わっている?
「シャルル王子だけはうさぎが入っていてそこには入れないから、第二王子のシモンとリオン王子と水晶の中で魂が入れ替わっているらしい」
「ちょっと頭が理解できてないんだけど…」
簡単に図式すると以下だそうだ。
シャルルの体→うさぎの魂が入ったまま。
シャルルの魂→昼間水晶、夜リオンの身体へ。
シモンの魂→昼間自分のまま、夜不明。
リオンの魂→昼間自分のまま、夜不明。
「これでもよくわからん…」
「とにかく今リオン王子の中にシャルル王子が入っていることだけ覚えてくれていたらいい」
そういうことにしておこう。そして、私が聖女の部屋で得た情報を2人に話した。
†
「なるほど…。それならマツリカの様子が変わったのも頷ける」
「そのままでも愛するってどういうことなんだろう。それもいまの聖女に与えられた試練なら私たちがどうこう出来るものなのかな」
政治的なことはさっぱりだが、ラ・フォア王国の王子たちは割と3人ともよくにていた。容姿も性格も。よくある母親が違うとかそういうややこしいことはなく、今もラブラブな王様と王女様なのだ。
平等に育てられ平等に愛されている。政治的なやっかみや大人の黒いところは普通の人よりはたくさん見てきただろうが、家族の愛がそんなものを跳ね除けているイメージがあった。
「だからもうこの状況を利用して楽しめばいいのでは」
もう誰でも一緒だし。
「シェリア!考えを放棄するな。例えば兄弟3人でそのように、やりとりされてればいいが、シャルル王子の体は魔物に取られたままなんだ」
「冗談だって、ごめんなさい。あまりにも無謀だと思ったから。これからどうすれば元に戻れるんだろう…」
原因がわかったところでこちらで解決出来ない。どうすれば…。
「本当に恋に落ちてもらうしかないかもな」
ルカはそう言ってチラリとシャルルの方を向いていた。
「…言っておくが私は」
「シェリアは無し」
「……恋愛がよくわからないんだ。マツリカとの結婚もその方が国にとって有益だからだ」
シャルルは頭を抱えた。
「元のマツリカとならばもしかしたら何か分かったのかもしれないが、もうあのマツリカはダメだ。悪の女王すぎる」
ぐうの音も出なかった。私の目指していたポジションをあっさりと取られてしまうのだはと思うくらい悪役だった。
話し込んでいると日が上りそうな時間になってきた。するとシャルル(リオンの体)はカタンと急に気を失って倒れた。
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