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3.王子様の救出
メイド楽しいですわ
しおりを挟むリオンにメイドとして雇ってもらうことに成功した。見た目はカツラなどで誤魔化してシェリアとはわからないようになった。
最初はメイド長が研修をしてくれて、その後に専属ということだそうだ。
ちなみにルカは騎士として雇われることになった。本当はリオンのメイドという話だったが、結局普通のメイドとして雇われた。
正直その方がありがたかった。専属になると動く範囲が決められてくるからだ。
ルカとリオンは何人か騎士を連れてラ・フォア王国中を回っているらしい。
†
「今日からメイドとして働くことになった。シェリーです。よろしくお願いいたします」
ここのメイドはかなり優秀でまるでロボットのように動いていた。魔法使いとしてここにいた時もお世話をしてくれる人は居たが、人が入れ替わっているようだ。
「では、まず今日はおおよその流れを教えます。ついてきてください」
朝からまず掃除に洗濯、料理作りに畑仕事まで…私は下っ端なので給仕は無かった。
これまでノエさんに魔法でのやり方を教えてもらったばかりなので楽できそうだった、
「あと、聖女様の目に写らないように行動してください」
「何故でしょうか」
「聖女様は若い女性を見ると何も理由がなくとも怒られて、辞めさせてしまわれるからです」
なので周りは執事や男性の使用人が多く、身支度などは年齢の高い女性がやっていたようだ。
「わかりました。十分に気をつけます」
なんとわがままなのだ。と、いうかハーレム目覚ましてるんだろうか。世界征服という厄介なことを考えて、恋愛小説から本格ファンタジーにジャンル変えしているのかと思っていたのに。
自分が主人公になったから好き放題しているのだろう。
新人のため聖女と鉢合わせすることが少ないように、しばらくは畑仕事と掃除を主にすることになった。
ありがたい。こんなに普通の上司を持てるなんて前の私にこっちはいいぞーと教えてあげたいくらいだ。
†
翌日、庭の掃除を始めることにした。担当ごとに分かれているらしくこの辺りは誰もいなかった。
…こっそり魔法使いながら楽しちゃうかなんてずるいことを考えていると遠くから怒っている女性の声が聞こえた。
向こうからは見えないように木に隠れて様子を見るとそこには聖女とメイドがいた。
「もうなんで今日はリオンがいないの!私はリオンと遊びたい気分だったのに」
「申し訳ございません」
「あなたに謝ってもらっても意味ないの。じゃあリオン連れてきてくれるの?出来ないよね?何で謝ったの?若いからそんなこともわからないの???」
若いメイドがプルプル震えて顔が青ざめていた。あまりにも、理不尽すぎる。
「もー今日はお人形と遊ぶしか無いかぁ…。じゃああなた明日から来なくていいから」
でたーーー。伝家の宝刀「明日から来なくていいから」あれ言われると正直きつい。悲しくて涙が出てくる。
「そんなっ…お待ちくださいっ!うち生活のために…ご容赦を」
「そんなの私に関係ある?あなたが困ってもわたしは困らないわよね?…それによくわかりもしてないのに謝って済ませようなんて考えじゃどこでもやっていけないわ」
メイドはカクリと腰を抜かして静かに泣いていた。可哀想だ。なんてあまりにも理不尽なんだ。
ここで声をかけるのもためらわれたので自分の仕事に集中することにした。
聖女は現実世界のお局上司…クレーマーを彷彿させる人物であった。
†
聖女に近づけないとは言っても水晶を探し出す上では聖女の部屋の捜査が必要になってくる。
このままだと何の収穫もないまま時間だけがすぎそうだった。
近づくのが難しすぎる…。容姿を変えることが出来るのでいっそ男性に見える魔法をかけてみて捜査するのもいいかと考えたが、あの様子だと少し気に入らないことがあるとなにかと文句をつけている感じがする。
いつものルーティンとまではいかなくとも、そういうことを大切にしている印象があるので、見せかけを変えるだけでは難しそうだった。
…でもやらなければならない。夜に勇気を出して行ってみるかな……。
「ねぇ、新入りさん。食べないの?」
他の使用人と一緒に食事を取っていると年の近そうな活発な女の子が話しかけてきた。
「あ、食べる。初日で疲れてたのかも。あはは」
活発な女の子はにこりと笑うと食事に戻った。
他のメイドたちの話を聞いていると昼間の聖女の行いをヒソヒソと話していた。
「本当にひどい!しかも男性の前だと猫被りしちゃって…シャルル様は何がいいんだろう」
「リオン様、リオン様ばかりいうし、シャルル様の次はリオン様に…って男遊びも激しいこと」
「使用人にも手を出してるらしいですし」
噂がどこまで本当かはわからないが、転生してきて周りにイケメンがいっぱい
いて自分が最強つえーになったらそりゃ横暴にもなるわと思ってしまった。
なんとも欲望に忠実な人なんだ。
「だから前いた魔法使い様も追い出したとか、シェリア様真面目でいい人だったのに…」
「そうよ!シェリア様と婚約の話が出ていたじゃない!シャルル様も満更でもなさそうだったし…」
なんか本人が聞いていいものか分からず、ご飯を駆け込んで腹に入れてその場を立ち去った。
思ったより嫌われていないことにホッとしていた。
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