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2.囚われの人を探しに

リオン・ラ・フォアはツンデレである

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「さて…」 

 ルカと共にラ・フォア王国の城の前に来た。リオンのあの感じだとシェリアがきたといえばすっ飛んでくるだろう。

「リオン王子に頼るって言ってたけど、その自信はどこから来るんだ」

「ラ・フォア王国で処刑されそうになってた時、実験の後とかずっとずっと私のことを見にきていた。決して助けてはくれなかったけど」

 ルカが眉間を寄せた。顔に不快感が出ていた。

「派遣された時からずっとブスとかぶりっ子とか言われてからかわれてた。でも立場が悪くなってからもずっと一緒だった。態度が同じで言葉が辛かった反面態度の変わりのなさにホッとしたとこもあった…」

 それに何故か捕まえられていて夜中に会いに来る時はやけに大人っぽかった。悪口も言われたことない。偉そうにふんぞり返っているところだけは同じであったが…。

「……なるほどな」

 ルカは何かを考え込むように腕を組んでいた。

「それならリオン王子は単純で簡単かもな」

 そう、きっと。いや確実にリオンはシェリアのことが好きなのだ。
 
 元々のシェリアは箱入りお嬢様で魔法のことばかりやってきていて、ラブロマンス小説なども一切読んでいなかった。ガチガチの堅物だった。

 だから、あんな小学生の子供みたいなあからさまな態度に気づかないのだ。

 リオンの視界に入るとちょっかいをかけられて、意地悪を言う。そうするとシェリアが反応するから“話せた“と誤学習をする……。


 私が好きでも言ってしまえば簡単に寝返ってくれそうではあるが…。生理的に無理なので嘘でもごめんだ。


「メイドとして行くってのは割と正解かもなぁ…あーいうガキには堪らんだろ」

「ルカ…」

 なんとも複雑な気分だった。その発言が出るということはルカもメイドは悪くないと思っているのだろう…。





 門番などを通すと大ごとになりそうなので、光魔法の通信魔法を使い、今いる場所まで呼ぶことにした。

「光が蝶で闇がカラスなら、他の属性はなんなんだろう」

「どうなんだろうな。闇といっても人によっても姿が違うしな」
 
「たしかに」

 今後研究したいことが増えた。そんなことを考えているとリオンがものすごい勢いで走ってきた。…猪かなと思うくらいいつも全速力だ。



「シェリア!会い……あいかわらずブスだなっ」

「リオン様も相変わらずお子様で何よりです」

 リオンはかぁーと顔が赤くなった。実際リオンは2つ歳下だった。

「コホン…それより用はなんだ?」


「私をあなたのメイドにして欲しいの」


「?!!?」

 リオンはわかりやすく動揺していた。

「…どうしてだ?もしかして…」


「このままラ・フォア王国が廃れてもいいのか?」


 横からルカが割り込んできた。リオンはまたキョトンとした顔をしていた。

「お前は誰だ?」

「……」

 自己紹介するのもめんどくさくなったのだろう。やはり、リオンは人の顔を覚えるのが得意ではなかったのだ。

「私の騎士ですわ…。あの、さっきの話に戻りますけど、シャルル第一王子の様子がおかしいとは思いません?」

「たしかに、兄様はあんな抜け殻みたいじゃない。芯が通っていて女性に振り回されるような人ではない」

「リオン王子はラ・フォア王国の現状を見てきただろ?どうにかできるのは第二王子かリオン王子、あなただよ」

 リオンは少し嬉しそうな顔をしたあと、悲しそうな顔をした。

「そうだけど、俺は役立たずだし脳筋と言われて育ったから、これを活かす騎士を目指してる」

 何とド・ストレートな悪口を言われていたんだ…。ちょっと可哀想になってきた。

「リオン王子にしか出来ないことがある。それは騎士を活かして外の様子を直接見て民の声を聞くことだ。それは城の中にいるばかりじゃできない。だから、シェリアと俺と3人で頑張ろう」

 おっと説得はうまくいきそうだが、このままだと城の中に入れそうにない。外回りをする羽目になりそうだ。


「そんなこと言っても信用出来ない。シェリアだっていつも僕のことあしらっていた」

「あの、それは男性慣れしていなくて恥ずかしかったの…」

 会うたびに意地悪を言われて喜ぶ人がどこにいるというのだ。と、思わずツッコミたくなったが、心にしまっておいた。


「男性と一緒にきたのに説得力がないな」

 その通りだ。これはいっそ本当のことを話した方がいいかもしれない。
 シャルルの現在の状態のことを話しすることにした。







「そんなことになっていたなんて…あの聖女は怪しいとは思っていた」

 意外と素直に話を聞いてくれて良かった。こんなありえない話信じてもらえなくて突然なはずだ。

「では、その水晶を取り戻して兄様を元の体に戻せば元の兄様に戻るんだな?」

「そういうことになるわ」

「わかった。協力する。こちらの国のためにありがとう」

 リオンはとても王子らしく見えた。やはり政務に関わっていなくても王子としての誇りはそのままなのだ。

「では、僕の婚約者として城に入ることにしよう」

「えっ」

「それは、ダメだ。リオン王子。王子の妻候補になると常に使用人がついて動きづらい。出来ればメイドとして雇って欲しい」

「メイド…メイド……メイドって僕専属?」


「貴方が望むのならば」

「……いいよ」

 顔を少し赤くして承諾してくれた。なんとか城への潜入は確約された。

「ありがとうございます!リオン王子様!」

「…別に、ちょうど小間使いが欲しかったから…」

 モジモジしていてかわいい。やはり年下はこうでなくては。

「1つ、リオン王子に言っておかないといけないことがあります」

 ルカが私を強く抱きしめてキスしてきた。それも深くて長いやつ。

「ん???ん……ちょっやめなさい!」

「俺、シェリアの婚約者だから絶対手を出すなよ。手を出したら……」

 黄金の目がメラメラと輝いてリオン王子を射抜いていた。

「そ、そんなのに屈しない!好きって気持ちはシェリアのものだ。これから振り向かせることもできる!」

 リオン王子も負けじと反抗していた。若いっていいね。遠回しに好きって言ってるのに気づいていない。

 ともかく、増やせる味方は増えたのだ。早めにシャルルの救出をしてしまおう。







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