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プロローグ
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俺の名前は木下龍。またの名をルイス・ネイサン。
元々は純日本人の両親の元から産まれ、姉と両親と4人で普通な暮らしをしていた。そんな暮らしのおかげもあって良くも悪くも俺自身も平凡な顔と平凡な脳みそと平凡な運動能力をだった。
そんなつまらなくも平和な生活をしていたのだが、大学1年の頃不慮な交通事故によってあっけなく他界してしまい俺は姉がどハマりしていた乙女ゲームの世界に来てしまっていた。
……
うんうん。
今これを見てる人が何を言いたいか俺にはよくわかる。
たぶん一言目は「は?」だろ?
俺も初めは「は?」って思った。
ラノベでよく異世界転生系読んでいる俺ですらも「は?」ってなったから読んてない人からしたら「頭おかしいんじゃねぇの?」まで思うかもしれない。
だけど、俺は断じてふざけてない。
俺は本当に乙女ゲームの世界に来てしまい、しかも超美少年サイコパスの悪役令息となっていたのだった。
元々平凡に嫌気がさしてた俺はこれみよがしに権力やあまいマスクやありあまる財産(俺の物じゃないけど)で悪役令息を全うしていた。
だけど、本当は初めから悪役令息になる気なんてなかった。いつも通り平凡で過ごそうと思っていた。
だけど、横暴で人間を操れるという甘美を1度味わってしまったらもうそれから悪役令息になるのは早かった。
まぁ、こんな長々と自己紹介をしている間にもカンカンっという軽快な裁判所にあるような小槌の音がさっきから5回は聞こえてきた。
あと、1回この音を聞いたら次は俺の出番だ。
え?
なんの出番かって?
そんなの決まってるだろ。
人身売買の順番さ。
◇◇
「はい! 1000万! 1000万が出ました! 次は! 他にはいませんか~……? 行きますよ~?」
カンカンっ!
「東北の赤毛の少女1000万での落札です!」
「いや! いやだああああ!!!」
女の絶叫とは裏腹に観客は1000万もの大金を払った人に対しての歓声と拍手を送っている。
本当にこんなの馬鹿げている。
いざ自分が商品側になるとこのバカバカしさが嫌ってくらい伝わる。
「さぁて! 次でラストです! 本日のラストはかなりの目玉商品ですよ~!」
司会者の合図でガタイのいいスキンヘッドの男に肘で小突かれた。
「いけ」
俺はのそのそとスポットライトの当たる地獄のステージへと足を進めた。
「この人はかつてネイサン家のご子息であり、かの有名な悪魔の令息。ルイス・ネイサン! 容姿端麗で、もちろん心身共に健康です! ただ舌が肥えてるため味が悪い物を与えた時には殺されちゃいますよ~」
『あっははは!!』
早口で面白おかしく俺を紹介する司会者に会場はどっと笑い声が起きた。
別に面白くもなんともないジョークによく笑えるよ。
俺はハッと鼻で笑いじっと前だけを見据えた。
「それでは早速行きましょう! 初めは1000万から!」
さっき買われた少女の値段が俺のスタートライン。かなりの高額だがそれくらいの価値があるということか。
そう思うとなんだか悪くは無い。
「2000万!」
「3000万!」
「5000万!」
次々と俺の額が上がり司会者も嬉しそうに口端を釣り上げている。
「1億!」
その額で会場が「おお!」という感嘆の声を上げその上を言う人が出なくなった。
「おおっと! 1億が出ました! ここで落札か!?」
会場には司会者の声だけが響き渡る。
どうやらそれより上を出すやつはもういないようだ。
やるなら今だな……
俺はダンっ! 力強く足を鳴らせ司会者や話している人達を静まり返らせた。
本当にこんなの馬鹿げてる。親や兄弟だってあっさり死ぬ事ができた。
なんで俺だけ生き地獄を味わなきゃいけねぇんだよ。
そんなの100回殺されてもごめんだ。
もし、これが神からの天罰だというのならそれすら横暴に逆らってやる。
「俺は誰のものにもならねぇ!! 誰かの犬になるくらいならここで死んでやる!」
負け犬のように叫び散らすと俺はズボンのポッケに隠し持っていたナイフを取り出し縛られている両手で胸元に突き立てた。
俺の自決に面白がって囃し立てる人もいれば、やばくない? と引いてる人もいる。
でも、俺はそんなの気にしない。
ここで死ねば、商品に傷がつけば値が落ちるしなんなら売れなくなる。
こんなバカげたお遊びなんてぶっ潰してやる!
「うおおおおおお!!!!」
恐怖を打ち消すためにお腹の底から声を出しながら胸元にナイフを落ち込んだ。
痛いけどなかなか深くまでは刺さらない。
それに手が震えて思うように力が入らない。
死んでやる死んでやる死んでやる死んでやる!!
死んで……!!
パァンっ!
突如ステージの脇から乾いた発砲音が聞こえ俺はゆっくり発砲の音が聞こえた方を向いた。
そこに居たのは銃口を俺に向けた茶色いフードを被った背の高い男。
ぐわんっと視界が揺れ、自分が撃たれたことに気づいた。
え? 俺、撃たれた?
痛みは感じない。
ただ、意識がすうっと遠のいていく。
立っていることも出来ずバタンと倒れた。
薄れていく意識の中で司会者が慌てた様子でその人に話しかけていた。
「困りますよ! お客様! これは商品なんですから!」
「ごめんごめん。僕が責任もって買わせていただくよ。10億で」
10億か……俺、めっちゃ価値あるじゃん……
そこまで聞こえたところで俺の意識は完全にシャットダウンされた。
元々は純日本人の両親の元から産まれ、姉と両親と4人で普通な暮らしをしていた。そんな暮らしのおかげもあって良くも悪くも俺自身も平凡な顔と平凡な脳みそと平凡な運動能力をだった。
そんなつまらなくも平和な生活をしていたのだが、大学1年の頃不慮な交通事故によってあっけなく他界してしまい俺は姉がどハマりしていた乙女ゲームの世界に来てしまっていた。
……
うんうん。
今これを見てる人が何を言いたいか俺にはよくわかる。
たぶん一言目は「は?」だろ?
俺も初めは「は?」って思った。
ラノベでよく異世界転生系読んでいる俺ですらも「は?」ってなったから読んてない人からしたら「頭おかしいんじゃねぇの?」まで思うかもしれない。
だけど、俺は断じてふざけてない。
俺は本当に乙女ゲームの世界に来てしまい、しかも超美少年サイコパスの悪役令息となっていたのだった。
元々平凡に嫌気がさしてた俺はこれみよがしに権力やあまいマスクやありあまる財産(俺の物じゃないけど)で悪役令息を全うしていた。
だけど、本当は初めから悪役令息になる気なんてなかった。いつも通り平凡で過ごそうと思っていた。
だけど、横暴で人間を操れるという甘美を1度味わってしまったらもうそれから悪役令息になるのは早かった。
まぁ、こんな長々と自己紹介をしている間にもカンカンっという軽快な裁判所にあるような小槌の音がさっきから5回は聞こえてきた。
あと、1回この音を聞いたら次は俺の出番だ。
え?
なんの出番かって?
そんなの決まってるだろ。
人身売買の順番さ。
◇◇
「はい! 1000万! 1000万が出ました! 次は! 他にはいませんか~……? 行きますよ~?」
カンカンっ!
「東北の赤毛の少女1000万での落札です!」
「いや! いやだああああ!!!」
女の絶叫とは裏腹に観客は1000万もの大金を払った人に対しての歓声と拍手を送っている。
本当にこんなの馬鹿げている。
いざ自分が商品側になるとこのバカバカしさが嫌ってくらい伝わる。
「さぁて! 次でラストです! 本日のラストはかなりの目玉商品ですよ~!」
司会者の合図でガタイのいいスキンヘッドの男に肘で小突かれた。
「いけ」
俺はのそのそとスポットライトの当たる地獄のステージへと足を進めた。
「この人はかつてネイサン家のご子息であり、かの有名な悪魔の令息。ルイス・ネイサン! 容姿端麗で、もちろん心身共に健康です! ただ舌が肥えてるため味が悪い物を与えた時には殺されちゃいますよ~」
『あっははは!!』
早口で面白おかしく俺を紹介する司会者に会場はどっと笑い声が起きた。
別に面白くもなんともないジョークによく笑えるよ。
俺はハッと鼻で笑いじっと前だけを見据えた。
「それでは早速行きましょう! 初めは1000万から!」
さっき買われた少女の値段が俺のスタートライン。かなりの高額だがそれくらいの価値があるということか。
そう思うとなんだか悪くは無い。
「2000万!」
「3000万!」
「5000万!」
次々と俺の額が上がり司会者も嬉しそうに口端を釣り上げている。
「1億!」
その額で会場が「おお!」という感嘆の声を上げその上を言う人が出なくなった。
「おおっと! 1億が出ました! ここで落札か!?」
会場には司会者の声だけが響き渡る。
どうやらそれより上を出すやつはもういないようだ。
やるなら今だな……
俺はダンっ! 力強く足を鳴らせ司会者や話している人達を静まり返らせた。
本当にこんなの馬鹿げてる。親や兄弟だってあっさり死ぬ事ができた。
なんで俺だけ生き地獄を味わなきゃいけねぇんだよ。
そんなの100回殺されてもごめんだ。
もし、これが神からの天罰だというのならそれすら横暴に逆らってやる。
「俺は誰のものにもならねぇ!! 誰かの犬になるくらいならここで死んでやる!」
負け犬のように叫び散らすと俺はズボンのポッケに隠し持っていたナイフを取り出し縛られている両手で胸元に突き立てた。
俺の自決に面白がって囃し立てる人もいれば、やばくない? と引いてる人もいる。
でも、俺はそんなの気にしない。
ここで死ねば、商品に傷がつけば値が落ちるしなんなら売れなくなる。
こんなバカげたお遊びなんてぶっ潰してやる!
「うおおおおおお!!!!」
恐怖を打ち消すためにお腹の底から声を出しながら胸元にナイフを落ち込んだ。
痛いけどなかなか深くまでは刺さらない。
それに手が震えて思うように力が入らない。
死んでやる死んでやる死んでやる死んでやる!!
死んで……!!
パァンっ!
突如ステージの脇から乾いた発砲音が聞こえ俺はゆっくり発砲の音が聞こえた方を向いた。
そこに居たのは銃口を俺に向けた茶色いフードを被った背の高い男。
ぐわんっと視界が揺れ、自分が撃たれたことに気づいた。
え? 俺、撃たれた?
痛みは感じない。
ただ、意識がすうっと遠のいていく。
立っていることも出来ずバタンと倒れた。
薄れていく意識の中で司会者が慌てた様子でその人に話しかけていた。
「困りますよ! お客様! これは商品なんですから!」
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