【完結】少しでもあなたの力になれたなら

優希

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13 グラナート視点

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「……これは骨が折れていますね。治るまでは時間がかかると思います」

 医者はそう言うと俺の右手を固定した。

「そうですか。可哀想に……」

「手の固定はしたので後は骨がくっつくのを待つしかありません」

「わかりました」

「それでは私はこれで帰ります。料金は……」

「ああ、私が払います」

 医者はお金を受け取ると、使用人の女性と一緒に部屋を出ていった。

 俺はゴルトに頭を下げてお礼を言った。

「本当にありがとうございます。お医者様を呼んでくださったうえにお金まで……」

「いやいや。人として当然の事をしたまでだよ。……ただ、君がどうしても感謝の気持ちを伝えたいというのであれば明日とある場所に一緒来てくれないか?」

「ええ、もちろん」

 俺がすぐに答えるとゴルトはニヤリと笑う。

「ありがとう。とても助かるよ。今日はこの屋敷に泊まっていきなさ——」

「ゴルト様」

 扉の外から女性の声が聞こえた。

「何だ」

「お客様がいらっしゃいました」

「客だと?」

 そう言ってゴルトは眉間に皺を寄せながら部屋を出た。

 ……客人との会話を聞けばゴルトの弱みを知る事ができるかもしれない。

 俺はこっそりと部屋を出て玄関に向かった。

 使用人とすれ違うのではないかと心配していたが、広い屋敷の割に使用人の人数が少ないのか誰にも姿を見られる事なく玄関の近くまでたどり着く事ができた。

 どうやらゴルトと客人は外国語で会話をしているようだった。

「〈……いつになったら出ていくんだ?〉」
 
 客人の男性はゴルトにそう聞いた。

「〈何の話だ?〉」
 
「〈とぼけるな。近々パーティーを開くそうじゃないか〉」

「〈ああ。婚約したのだから当然だろう? それがどうした〉」

「〈……それがどうした、だと?〉」

「〈そんなに怒るな。わかっている。パーティーが終わって結婚したら出ていくつもりだ〉」

「〈本当だろうな〉」

「〈ああ。用件はそれだけならさっさと帰ってくれ〉」

 ゴルトがそう言うとバタンと扉が閉まる音が聞こえた。


 ……客人はゴルトを早く出ていかせたがっていたようだが一体何の話だろう。

 ゴルトは結婚をしたら出ていくと言っていたから、この屋敷の事だろうか?

 ベリル嬢と結婚後は新しい屋敷に移る予定で、その話をしていたのか?

 昨日街で脅していた相手とは違い、客人はゴルトと対等に話しているように聞こえたが一体何者なのだろうか。
 

 ……いや、考えるのは後にして早くさっきの部屋に戻らないと。

 俺がその場から動こうとした時にゴルトの息子の声が聞こえた。

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