【完結】おっさんはエロいだけの生き物だと思ってた?これでも一途に絶賛トキメキ探し中!!

天羽 華月

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4日目 親友はイケてるホスト!?

5ー2

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 受付を済ませてドリンクバーで飲み物を入れたグラスを片手に指定された部屋に入ると、翔が真っ先に部屋の照明を薄暗くしてソファに腰掛けた。

 スペースを開けて颯も座り、ずっと気になっていた疑問をぶつける。

「それで?何がどうなったらそうなるんだ?」

「どういう意味かな?」

 問いかけの意味が分かっているのかいないのか、翔はデンモクを操作しながら聞き返した。


「前と全然違うじゃん。服装とか」

「あー、これ?実は今の俺はホストなんだぜ!」

「ホスト!?」

 あっけらかんと言う翔に、颯の細い目は倍ほど大きく見開いた。


 颯の中でホストは、20代の心身ともに元気な男が就く職業のイメージで、同い年の翔が実際にホストをしているなんて想像も出来なかった。


「なんでまたホストなんだよ」

「颯は分かってないなぁ~!ホストは夢のある仕事なんだぜ!!シャンパン一気飲みすれば、若い女の子にキャーキャー言われる!ヒーローみたいだろう?俺は色んな卓を回るから、その度に一気しなきゃならなくて大変だぜ。若い奴は女の子の隣で肩抱いてるだけで、ガッツが足りないからな!!」


 あ、コイツ売れてないんだなと直感で分かった。


 少し会ってない間に人間をここまで変える夜の世界は恐ろしい。


 これ以上聞いてもきっと同じ話の繰り返しだろうと思った颯は、冷たい炭酸と一緒に複雑な思いを飲み込んだ。


 翔は流行の歌なのか、テンポの速い盛り上がりそうな曲を歌っていたが、やはり颯には分からない。


 歌に無知な颯は何を歌ったらいいのか悩んだ。

 自分から誘って歌わないのも気が引ける。


 悩みに悩んで、音楽の教科書にも載ってる故郷を懐かしむ有名な曲を歌った。


 歌い終わった颯を見つめる翔は、温かな眼差しとは言えなかったが昔ながらの仲だからこそだと、自分を無理やり納得させた。



 歌があまりに酷かったのかカラオケはそこで終わり、後はただの雑談になった。


「颯も今度店に来いよ。初回は安く飲めるし」

「嫌だよ。それだったらキャバクラ行くわ」

「なんだよ。つれないなぁ~。付き合ってるのは男なのに、飲み屋の男はダメなのかよ」


 悠人と翔は面識がある。

 翔も剣道部で、今でも会えば話をする。


 半年前に会った時は悠人も一緒で、二人で落ち込む翔を励ました思い出が懐かしい。


「そういえば、最近悠人とはどうなのかな?」

 翔は営業中なのか、スマホを操作しながら言った。


 変わりないと伝えようとしたが、翔の意見が聞いてみたくなった颯は話題をトキメキ探しへと移した。


「なぁ。トキメキってないとダメだと思う?」

「突然どうしたのかな?」


 質問に質問で返された翔は、何を言ってるのか分からないと言うように首を傾げた。

 だけどじっと答えを待つ颯の顔を見て、真剣さは伝わったようだ。


「ないよりはあった方がいいと思うぜ!もしかして喧嘩でもしたのかい?」

「別にそういうわけじゃねぇけど……」


 口籠もる颯に、翔は困ったように肩を竦めた。


「颯は、どう考えてる?」

「俺は……」


 悠人がどうして突然そんな事を言い出したのか分からない。

 何の問題もなく一緒に暮らしてきたつもりだが、悠人がトキメキについて考えていたなんて思わなかったからこそだ。


「今の俺達にトキメキはないかもしれない。でもそれが悪いとは思わない。今しかないものだってあるし、長く一緒にいたらそういうものじゃね?」

「それは悠人に伝えたかい?」

「いや……」


 ちゃんと言葉にはしていない。出来なかった。

 口が上手い方でもなければ、不用意に言った言葉で悠人を傷付けるかもしれないと不安もあったからだ。

 それなら言わない方がいい。余計な波風は立てない方がいいと黙っていた。


「伝えた方がいいぜ。悠人も何か考えてるだろうし、これは男の勘だぜ!」


 自信たっぷりの翔を見ていると、颯は自分の悩みがどうでもよくなった。


 グラスに入った小さな氷を口に入れて舌で転がし、次は翔の話を聞くべく体の方向を変えて向き合った。


「翔は何か悩んでる事とかねぇの?」


「俺?勿論あるぜ!」


 待ってましたとばかりにキラキラとした眼差しで見つめる翔。

 颯の第六感が反応している。これは聞いてはいけないやつだと。


「は、話を聞くくらいしか出来ないけど……」


 嫌な予感がして慌てて予防線を張ったつもりだった。
 が、既に遅かった。


「そんな事言わずに頼むよ、颯」

 怪しい笑みを浮かべて立ち上がり、ゆっくり距離を縮めてくる翔。
 颯はソファに片手をつき、上体を後ろに反らして離れようとした。


「颯、マジで頼むよ……」

 それでも翔は詰め寄ってきて、颯の肩に手を置き艶っぽい声で迫ってくる。


 一体この状況はなんだ?

 ちくわの危機なのか!?


 と、体を強張らせた時──


「頼むよ、颯!一緒に店に行ってくれる女の子を紹介して!!」

「は?」


 泣きそうな顔で懇願する翔に拍子抜けして、強張っていた体は脱力し颯はソファに寝そべった。


「実はまだ一度も同伴してなくて、このままだと俺のホスト人生ヤバいんだぜ!頼むよ、颯!!一生のお願いだ!!」


 こんな事とは言い方が悪いかもしれないが、こんな事に一生の願いを使っていいのかと何とも言えない気持ちで親友を見つめた。


 複雑な心境で頭を搔きながら体を起こして座り直す。


「なんつーか、思い浮かぶ知り合いがすぐに出てこないから少し考えさせて。悠人にも聞いてみるよ」

「本当?ありがとう颯!二日以内で頼んだぜ!」


 本当に切羽詰まった状況らしい翔には悪いが、多分無理だろうなと苦笑いを浮かべた。


「そろそろ時間になるから出るか。そういえば、店ではなんて名前なん?」

城ヶ崎じょうがさき、愛称ジョニーでやってるんだ!颯も気軽にジョニーって呼んでくれてもいいんだぜ!」

「あー……考えとく」


 城ヶ崎の原形がほぼないなと、颯はどうでもいい事を考えながら、二人は揃って部屋を出た。
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