【完結】おっさんはエロいだけの生き物だと思ってた?これでも一途に絶賛トキメキ探し中!!

天羽 華月

文字の大きさ
13 / 55
4日目 ダブルデートは地獄絵図!?

6ー2

しおりを挟む

 誰も予想していなかった発言に、颯と悠人は顔を見合わせた。

 目の前の翔に顔を近付けた貴史を、悠人が止めようとした時だった。


「……日本。住んでる場所は日本」

 翔が俯いたままぶっきらぼうに答えた。


「ブフッ!」

 まるで小学生のような返答にこらえきれず吹き出す颯に、今度は悠人がテーブルの下から脛を蹴って黙らせる。

「いって!!」

 痛がる颯には誰も触れず、貴史の暴走は加速するばかりだ。


「そうなの?あら、奇遇~!アタシも日本なの。これって、やっぱり運命なのかしらぁ~?」


 もはや蚊帳の外である颯と悠人は、このまま翔を見捨てて帰ろうかと遠い目をして空気状態だ。


「それなら~、好きな女性のタイプは?」

「夜になっても髭が生えてこない子」

「やだぁ~!ジョニーったら、ジョークまで上手なのねぇ~。惚れ直したわぁ~!」


 翔は吹っ切れたのか、貴史の質問に淡々と答えていく。
 少し余裕が出てきたのか足を組んでいるが、相変わらず目線は落としたままだ。


「タカちゃん、ちょっといい?」

 見かねた悠人が席を立ち、貴史の腕を引いて強引に連れ出した。

「翔、ちょっと待ってて」

 その場に翔を残し、颯も後を追いかけた。


「もぉ~。どうしたのよ、悠ちゃん!」

 自動ドアが開き暑い空気を受けて外に出ると、貴史は唇を尖らせて目を吊り上げた。


「いやいや、あれは流石にダメだって!グイグイ食いつきすぎでしょ」


 悠人が呆れたように溜息を漏らすと、それまで乙女モード全開だった貴史が不敵に笑って言った。


「分かってないわね、悠ちゃんは。最初はあれくらいでいいのよぉ~!第一印象でバンッと存在感を与えたいの。恋は駆け引きでしょ?これもアタシの作戦なんだからぁ~!見てなさい、悠ちゃん。アタシの魅力をこれからた~っぷり見せてあ・げ・る」


 貴史は顔の前で人差し指を立てて左右に揺らし、唇をすぼめて投げキッスを飛ばしては、上機嫌で店内へと戻っていった。


「なるべく早く終わらせるしかねぇな」

 あの勢いは止められないだろうと、ウキウキとした貴史の背中を見て呟いた。

「仕方ないなぁ……」

 悠人はすっきりした髪に触れて顔をしかめるが、貴史の後を追うしかなかった。


 席に戻ると貴史の質問攻めは止まらない。

「本当にジョニーとは気が合うわぁ~!もっとゆっくり話したいわねぇ。今度は、お酒でも飲みながらゆっくりと」


 酒と聞いた瞬間、翔はハッと顔を上げて目の色を変えた。

「酒?それなら、良い店があるんだけど!」

 それまで暗い顔をしていた翔が前のめりになり、すかさず食いついた。


「あら、アタシお酒を飲めるお店って詳しくないの。ジョニーに任せていいかしらぁ~?」

「も、もちろん!絶対楽しませるから!」

「ヤダ~!楽しみぃ~~!」


 颯と悠人はもう間に入る事を諦めた。

 何やら上手く話が纏まった所で、今日はこれにてお開きとなった。


 別れ際これでもかと両手をぶんぶん振って貴史の背中を見送る翔を、遠くから颯と悠人は見守り、そのまま帰路に就いたのだった。



 家に戻ると、二人はどっと疲れが出てフローリングに倒れ込んだ。


「なんか、すげぇ疲れた……」

「颯ちゃん、なんでカラオケなんかいるんだよ。普段絶対いかないじゃん……」

「悪ぃ。ちょっと一緒に歩くのしんどかった」

「気持ちは分かる」


 何もやる気が起きず、風呂に入るのもかったるかった。

 帰ったら掃除をしようと思っていた颯は、もう一歩も動かないと固い意志でトイレに行きたいのをグッとこらえる。


 悠人は片付いていない部屋を見回して、床に落ちた髪の毛を摘まみ溜息を零すと、気怠そうに体を起こし寝室に向かった。


 リリリリーン、リリリリーン──


 騒がしい着信音が部屋中に響き渡る。


 リリリリーン、リリリリーン


「颯ちゃん、電話鳴ってる」

 なかなか出ない颯に、痺れを切らした悠人が寝室から顔を出した。


 重くなってきた瞼を擦り、ポケットをまさぐってスマホを取り出すと、耳に当てるのすら怠くスピーカーにして電話に出た。


「……はい」

『よぉ、颯!風呂でも入ってたのか?俺だよ、俺!』

「オレオレ詐欺ならまた来週にしてくれ」

『違う違う!俺だぜ、翔!またの名をジョニー!まさか親友の番号を登録してないわけじゃないだろ?』


「うわ、ダル」

 着替え終わった悠人が一連の話を聞いていたのか、ポツリと悪態を吐いた。


「ん、んんっ!」


 颯は大根役者っぷりを発揮し不自然に咳払いをして誤魔化したが、翔は全く聞こえていないのか明るい声で話を続けた。


『実はうっかりして、さっきの奴の番号聞きそびれちゃってさ。悠人に聞いてくれないかな?』

「無理ですよ。一応許可は取らないと勝手には教えられないんで」

『あれ?悠人も聞いてたのか。頼むよ、悠人!俺のホスト人生がかかってるんだぜ!!』

「人の友達をホストクラブに連れて行こうなんて外道しかしないでしょ」

『オイオイ悠人。俺はお前の先輩だぜ?』

「先輩は先輩でも、翔先輩は一度も俺に勝った事ねぇじゃん」

「……そうか。分かった。もういい」


 プツン。プープー──


 そこで電話は切れた。


 普段なら悠人もここまで食ってかからないだろう。

 疲れているのか前髪を掻き上げ長く息を吐いた。


「ごめん、颯ちゃん。今日は寝るよ、おやすみ」

「ん、ゆっくり休めよ。おやすみ」


 暗い寝室に入っていく悠人の背を見送り、一人になった部屋で今日一日の出来事を改めて思い返しているうちに、颯の瞼は再び重くなっていた。


 話に聞いていた貴史が予想以上にインパクトがあって驚いた事、昔は自分の後をついて回っていた翔が40歳のチャラ男系ホストでも目指しているかのような姿。


 考えているうちに全てがどうでもよくなり、そのまま意識を手放した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

「自由に生きていい」と言われたので冒険者になりましたが、なぜか旦那様が激怒して連れ戻しに来ました。

キノア9g
BL
「君に義務は求めない」=ニート生活推奨!? ポジティブ転生者と、言葉足らずで愛が重い氷の伯爵様の、全力すれ違い新婚ラブコメディ! あらすじ 「君に求める義務はない。屋敷で自由に過ごしていい」 貧乏男爵家の次男・ルシアン(前世は男子高校生)は、政略結婚した若き天才当主・オルドリンからそう告げられた。 冷徹で無表情な旦那様の言葉を、「俺に興味がないんだな! ラッキー、衣食住保証付きのニート生活だ!」とポジティブに解釈したルシアン。 彼はこっそり屋敷を抜け出し、偽名を使って憧れの冒険者ライフを満喫し始める。 「旦那様は俺に無関心」 そう信じて、半年間ものんきに遊び回っていたルシアンだったが、ある日クエスト中に怪我をしてしまう。 バレたら怒られるかな……とビクビクしていた彼の元に現れたのは、顔面蒼白で息を切らした旦那様で――!? 「君が怪我をしたと聞いて、気が狂いそうだった……!」 怒鳴られるかと思いきや、折れるほど強く抱きしめられて困惑。 えっ、放置してたんじゃなかったの? なんでそんなに必死なの? 実は旦那様は冷徹なのではなく、ルシアンが好きすぎて「嫌われないように」と身を引いていただけの、超・奥手な心配性スパダリだった! 「君を守れるなら、森ごと消し飛ばすが?」 「過保護すぎて冒険になりません!!」 Fランク冒険者ののんきな妻(夫)×国宝級魔法使いの激重旦那様。 すれ違っていた二人が、甘々な「週末冒険者夫婦」になるまでの、勘違いと溺愛のハッピーエンドBL。

異世界にやってきたら氷の宰相様が毎日お手製の弁当を持たせてくれる

七瀬京
BL
異世界に召喚された大学生ルイは、この世界を救う「巫覡」として、力を失った宝珠を癒やす役目を与えられる。 だが、異界の食べ物を受けつけない身体に苦しみ、倒れてしまう。 そんな彼を救ったのは、“氷の宰相”と呼ばれる美貌の男・ルースア。 唯一ルイが食べられるのは、彼の手で作られた料理だけ――。 優しさに触れるたび、ルイの胸に芽生える感情は“感謝”か、それとも“恋”か。 穏やかな日々の中で、ふたりの距離は静かに溶け合っていく。 ――心と身体を癒やす、年の差主従ファンタジーBL。

魔王の息子を育てることになった俺の話

お鮫
BL
俺が18歳の時森で少年を拾った。その子が将来魔王になることを知りながら俺は今日も息子としてこの子を育てる。そう決意してはや数年。 「今なんつった?よっぽど死にたいんだね。そんなに俺と離れたい?」 現在俺はかわいい息子に殺害予告を受けている。あれ、魔王は?旅に出なくていいの?とりあえず放してくれません? 魔王になる予定の男と育て親のヤンデレBL BLは初めて書きます。見ずらい点多々あるかと思いますが、もしありましたら指摘くださるとありがたいです。 BL大賞エントリー中です。

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください! ユィリと皆の動画つくりました! お話にあわせて、ちょこちょこあがる予定です。 インスタ @yuruyu0 絵もあがります Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!

【完結済】あの日、王子の隣を去った俺は、いまもあなたを想っている

キノア9g
BL
かつて、誰よりも大切だった人と別れた――それが、すべての始まりだった。 今はただ、冒険者として任務をこなす日々。けれどある日、思いがけず「彼」と再び顔を合わせることになる。 魔法と剣が支配するリオセルト大陸。 平和を取り戻しつつあるこの世界で、心に火種を抱えたふたりが、交差する。 過去を捨てたはずの男と、捨てきれなかった男。 すれ違った時間の中に、まだ消えていない想いがある。 ――これは、「終わったはずの恋」に、もう一度立ち向かう物語。 切なくも温かい、“再会”から始まるファンタジーBL。 全8話 お題『復縁/元恋人と3年後に再会/主人公は冒険者/身を引いた形』設定担当AI /c

イケメン後輩のスマホを拾ったらロック画が俺でした

天埜鳩愛
BL
☆本編番外編 完結済✨ 感想嬉しいです! 元バスケ部の俺が拾ったスマホのロック画は、ユニフォーム姿の“俺”。 持ち主は、顔面国宝の一年生。 なんで俺の写真? なんでロック画? 問い詰める間もなく「この人が最優先なんで」って宣言されて、女子の悲鳴の中、肩を掴まれて連行された。……俺、ただスマホ届けに来ただけなんだけど。 頼られたら嫌とは言えない南澤燈真は高校二年生。クールなイケメン後輩、北門唯が置き忘れたスマホを手に取ってみると、ロック画が何故か中学時代の燈真だった! 北門はモテ男ゆえに女子からしつこくされ、燈真が助けることに。その日から学年を越え急激に仲良くなる二人。燈真は誰にも言えなかった悩みを北門にだけ打ち明けて……。一途なメロ後輩 × 絆され男前先輩の、救いすくわれ・持ちつ持たれつラブ! ☆ノベマ!の青春BLコンテスト最終選考作品に加筆&新エピソードを加えたアルファポリス版です。

身代わりにされた少年は、冷徹騎士に溺愛される

秋津むぎ
BL
魔力がなく、義母達に疎まれながらも必死に生きる少年アシェ。 ある日、義兄が騎士団長ヴァルドの徽章を盗んだ罪をアシェに押し付け、身代わりにされてしまう。 死を覚悟した彼の姿を見て、冷徹な騎士ヴァルドは――? 傷ついた少年と騎士の、温かい溺愛物語。

処理中です...