鮮明な月

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第一章

6.

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悲鳴にも似た音なのにどこか甘く感じる吐息。恭平の吐息交じりの声を直に聞き、仁聖は全く嫌悪感すらも感じない。それどころか、その行為自体に欲情し再び肉茎を口に含んだ仁聖はわざと音を立てる。弱々しく頭を振る恭平の淡く色づいた頬を眺めながら、舐める様にスイと足の付け根を探る指を後孔へと伸ばす。

「ひっ!!……うあっ!!」

予想だにしない部分に異物を差し込まれる感覚に全身を仰け反らせる様にして震える。恭平の反応をゆっくりと眺めながら、その指を少しずつ探る様に奥に潜り込ませていく。唾液に濡れた指先の動きと肉茎を含む口の動き。声にならない悲鳴を上げながら恭平は全身を朱に染めて、探っていた仁聖の髪に触れた指をきつく自身に引き寄せる様にして体を強張らせた。

「んうぅっ!!!」

体の内部を指で探られビクリと大きく震えながら恭平は、肩を喘がせてきつく眼を閉じ眉をよせる。次の瞬間弾ける歓喜を感じながら恭平が解き放つモノを、躊躇いもなく仁聖はそのまま口の中に全て受け止めていた。

「は……ぁ………う……。」

余りの快感の衝撃に呆然としている恭平の表情を、仁聖は言葉もなくうっとりと眺めた。やがて仁聖の空いた方の手がスルリと、弛緩した体の下に潜り込み細い腰を掬い上げる。未だ内部を探り続けている指の動きに翻弄され、恭平の意識は快楽に朦朧とする。奥から沸き上がる熱を感じながら困惑した視線を向ける恭平の目の前で、仁聖はそのしなやかな足を軽々と抱え上げた。恥ずかしい場所を曝される仁聖の動作に、驚愕した彼の声が上ずった。

「な…っや…やめ!!…やだ!!仁聖っ!!!」

膝の後ろに添えられた熱い手に抵抗も儘ならない体を開かされて恭平の喉奥から悲鳴が上がる。その声に無言のまま見下ろしていた仁聖の表情が、陶然とした微笑みを浮かべて振り落ちた。まるで当たり前の行為をするとでも言うかの様に、躊躇う仕草もなく後壁を広げる指先と一緒に仁聖の唇が触れる。トロリと自分が放ったモノを内部に注ぎ込まれる感触を、信じられないと見開いた瞳が真っ直ぐに見つめていた。グチグチと濡れた卑猥な音をさせて、更に深く指を差し入れながら唇を離した仁聖が音を立てて残滓を音を立てて飲みこむ。ペロリと淫らな仕草で唇を舐めながら、呆然とする恭平の表情を見下ろす。

「恭平?」
「な…なんで……、ぇ…そ…んな……。」

クスリと笑みを溢しながら仁聖は身を伸ばして、その頬にキスを落とした。そうしながら執拗に緩やかに熱く蠢く様な内部を探りあげていく。指の動きに反応して息を跳ね上げる体の隅々までを味わう様に、肌に舌を這わせうっとりした仁聖の甘く低い囁き声が耳を擽る。

「…美味しかったよ?…恭平。」

煽るような声に甘い悲鳴が上がり、自分の手の下で白磁の肌が薔薇色に染まった。熱をもった肌が不意に甘く強い香りを立ち上らせていく。媚薬の様なその香りに酔った仁聖の指の動きが激しくなるのを、濡れる卑猥な音と一緒に感じながら耐え切れずに恭平は頭を振った。緩慢に執拗に指が穴を寛げ、違和感が熱に変わっていく。遂には恭平にもどれだけ中を探られ・掻き回されたか分からなくなっている。朦朧と絶え絶えの息を上げていた恭平の体内から、不意に音をたてて指が引き抜かれ安堵の吐息が恭平の唇から漏れた。しかし、次の瞬間足を割った仁聖の異常なまでに熱っぽく滾る様な瞳で、真っ直ぐに恭平は射すくめられる。

「恭平、俺……もう・我慢……できない。」

チャリとベルトのなる音がして見慣れた制服を脱ぐ訳でもないまま、その姿が自分の足を割ったまま身を寄せてくる。頭上でうわ言の様に囁きながら、不意に質量のあるモノが今まで探られていた部分に押し付けられて恭平は現実に引き戻された。驚きに悲鳴を上げて身を捩り逃れようとする恭平の弱い動きを物ともせずに、ヌルリと激しい熱と質量が体の中に打ち込まれていく。

「ひっ…あああぁっ!!!」

自分の放ったモノを中に注がれていたためなのか、突き入れられる杭自身が滲ませる露のせいなのか恭平には理解できない。なのに、ひきつれるような痛みを伴いながら、ズルリと中に押し込まれていく激しい違和感が止まらない。耐え切れずに悲鳴を上げ続ける恭平の体にしっかりと指を立てて引き寄せながら、仁聖が思わず感嘆めいた吐息を零していた。

「…ぁ…恭平…、きつ……。」

溜息のような感嘆に満ちた吐息混じりの声に、恭平はきつく眉を寄せながら戸惑いに満ちた視線を漂わせた。軋む体を裂く熱と痛みに浮かされながら縋るしかない指先が、仁聖の白いシャツから覗く腕に爪を立てる。更に悲鳴をその口から搾り出させようと言うように、唐突に勢いをつけてズンッと押し込まれる仁聖の楔に恭平は一際鋭く喘ぐような悲鳴を上げた。

「いやあぁああっ!!!…や…やだ…あ…あぁぁ……。」
「もう少し…力抜いて…?痛いでしょ?恭平。」
「わか…ってる…な……、…ぬ…ぬけっ………。」

恭平の言葉を無視して、仁聖は更に体を重ねてくる。覆い被さる重みに、軋みが更に大きく腰に響いて体の中に太い楔が穿たれて行く。体の裂ける痛みの中で滲んだ涙に気がついた仁聖が、そっと頬に唇を寄せ体を動かさないように緩やかな動作で舌を這わせる。その唇から逃れられないまま息を弾ませる恭平の表情と甘美な内部の感覚を直に感じながら、仁聖は陶然と微笑む。

「このまま…暫く…こうしていてあげる、ね?恭平。」
「な…なん…で。」

喘ぐような吐息を吐く恭平の額にかかる髪をそろりと掬い上げながら、その額と頬にもう一度順に柔らかなキスを落とす。滑る制服の布地を肌に擦れさせながら、仁聖が魅惑的に甘く低く囁きかける。

「きついでしょ?……だから恭平の体が…俺の…に…馴染むまで…このまんま、だよ?」

酷く甘くそれでいて残酷な言葉に、恭平が眼を見開く。痛みに身動きもままならないその状態で、そのものから逃れるには当の仁聖がそれを抜き取ってくれるのを待つしかない。それは恭平にもよく分かっていた。しかし、こうして明確にそうするつもりは無いと意思表示をされて、恭平は混乱したようにその顔を見つめる。言葉通りに埋め込まれた楔をそのままに、ただ微かに降り落ちるキスが、溢れ出す涙だけを甘い感触を残して拭っていく。不意にチクンと体の奥が疼くような感覚が、そのキスの後に生まれて恭平は微かに眉を寄せた。

「んう……ふぅ…っ………。」

思わず零れ落ちた自分のものとは思えない吐息の甘えたような音に、恭平の表情が驚きに微かに歪む。それに気がついて眼を細めた仁聖が、囁くように熱っぽく耳元に言葉を溢した。

「……馴染んできたみたいだね?……動かしてほしい?恭平。」

その言葉に硬く眼を閉じたまま、恭平は強く首を横に振る。咄嗟の仕草に僅かに揺れた体に走った鋭い感覚に、恭平が微かに息を荒げると甘い喘ぎが放たれた。その様子を眼に、仁聖はクスリと小さく笑みを溢す。少し意地悪い声で甘く囁き、そっと閉じられた綺麗な瞳を覆う瞼に軽い音を立てて唇を触れた。

「動いて欲しくないんなら、何時までもこうしてるよ?俺は別にいいけど。」
「や…っ…うぅん!!?」

放った自分の声の反動に思わぬ悲鳴を放ちながら恭平の体が仰け反り、その動きは更に次の反応を連鎖のように引き起こす。自分が身動ぎをした事で生まれた衝撃が、次の衝撃を繋いで連鎖反応をもたらした。恭平は焦ったように仁聖に戸惑いの瞳を向けながらその腕に指を絡ませる。自分の動作の反動で体が動き、それが衝動の連鎖を引き起こしたという事すら、既に恭平に知覚出来る世界のものではなくなっていた。

「や…め…、うごかさ……じんせ…っ!」
「動いてないよ?……恭平が動いてるんだよ?気持ちいい?」

微かに汗ばんだ額からサラリと艶やかな黒髪を撫でる指の下で恭平が必死に頭を振る。恭平自身の止められない体を揺するようなしなやかな体の動きを感じながら、仁聖はうっとりと恥態を曝す彼を見つめた。望んでいたものを目の前にして、望んでいた以上に鮮やかで甘美な快感。初めて触れた全てと繋がった部分から激しく沸き起こり、微かに息が熱を持って湿っていくのが分かった。

あぁ…やっぱり違う…、全然違う…恭平………

緩々と腰をうねらせてしまう自分の状況が分からないという様に身悶える綺麗で酷く官能的な姿。堪えきれなくなった仁聖は、ハッと一瞬激しい息を吐いて細い腰を掴み引き寄せるようにして思い切りズンと腰を突き上げていた。

「ああああぁぁああっ!!」
「恭…平…っ!もう…っ!…もう限界っ!動くからね?!」

激しく突き込まれた熱がズルッと引き抜かれ、再び熱を放ちながらガンと埋め込まれていく。とてつもない衝撃に腕の中の体は、仰け反り逃れようともがく。それを力一杯引き寄せながら仁聖は何度も何度もその行為を音を立てて繰り返す。言葉にならない悲鳴が擦れてやがて鋭く短い吐息のような音に変わっていく。仁聖はその揺さぶられるままにされる、歪められた表情を見下ろす。

「恭平…っ……、恭……平……ぁ…ん……、凄い……いい…。」

激しく穿たれる動作の生み出す蟲惑的に溢れる卑猥な水音の先で、蠢く中の熱と絡みつくような感覚が次第に強くなる。動きを早める度に仁聖の腰を蕩けさせるような快感が広がっていく。その最中微かに突き込む動作の向こうで、仁聖の言葉に反応したように艶やかに色づく表情が僅かに変化を見せた。今までと違う困惑に揺れる恭平の瞳が不安に仁聖を見上げて、唇を震わせる。

「じ……じん…せ……っ。」
「ぁ…あぁ…恭平……、凄く……気持ち、いい……、凄い、いいよ…?恭平の中……。」

その甘く蕩けて低く囁きかける声に、不意にその感覚が何か知った様に蠢く体に組みしかれた恭平が身を引き攣らせていた。激しい熱と共に鋭く体を裂く痛みや苦しみは、今だ確かにある。それなのに恭平は不意に湧き上がる体の芯を炙る歓喜の感覚に戸惑い、喘ぐように息を放ち自分が体を仰け反らせて身を硬くするのを確かに感じる。

「ぅん……、恭平……凄い…、きつ、い…、気持ちい……。」

擦れた熱を持つのし掛かる甘い声に煽られ、その腕が自分の体を離すまいと引き寄せ抱き寄せる。抱き寄せられる感覚に眉を寄せ甘ったるい悲鳴を上げ続けている自分に気がつく。
思考は白く塗りこめられて

何故?どうして?

と短い単語ばかりが弾けて落ちて、やがて何も考えられない程に吐息の激しさだけが全てを埋め尽くす。抱き寄せながら歓喜に満ちる甘い擦れ声で名前を呼ばれ続け、痛み以上に快感が甘く全身に沁みこんでいくような気がした。

必要と…されている?

抱き寄せられた腕の感覚にフワリとその思考が閃く。ギシギシと突き込まれる熱さの向こうで、制服姿の年下の青年の姿が縋るようにして自分を抱き締めている。そうしながら囁き続けている自分の名前を耳に、せかす様に恭平は甘く熱い擦れた声でその青年の名前を喘ぐように叫んでいた。

「じ…仁聖っ!!も…、仁聖っあっ!!あぁっ!仁聖っ!!」

堪えきれないというように頭を振りながら首に回される腕と一緒に、激しい吐息と重なる様に名前を叫ばれて仁聖は脈打つような強い快感を感じる。その声に誘われるように、更に自分をその体の中に押し込んだ。不意に体の奥底に弾け感じ始めた快感に流され上ずる恭平の甘い嬌声と、その体から立ち昇る蕩けるように甘く扇情的な香りに眩暈を覚えた。甘い香りに仁聖自身の限界も近いことを自覚した。

「恭平っ…俺・も…いくよ?!」

ズッと擦る音を立てて再度注挿される熱に仰け反る。恭平の体をきつく抱き寄せながら、その体で息づいた恭平自身の熱をその手に握りこみ自分の動きと同調させて擦り上げる。

「んああっ!やっ!ぅあぁっ!!いっ…ああっ!!あぁあっ!」
「いくよ?!恭平…っあぁ…恭平も…いって?!!」

激しく擦りあげられる動作に鋭い歓喜の声を上げながら、殆ど同時にそれぞれの場所にそれぞれが、熱く弾ける様な勢いで白濁した歓喜の証しを放っていた。

「あ…あぁ………。」
「……恭……平、す…っごい…いい……、たまんない…。」

熱く甘い吐息を激しく喘ぐように肩で溢しながら、まだ繋がったままの体が不意に重みを増して覆い被さる。顔を寄せ近寄り唇を探るように舌の先が撫でる。動きに乱れた制服の白いシャツの裾に腹部を擽られながら、自分の体を引き寄せるその腕に痺れる感覚の中で恭平は眼を走らせた。

お前は…俺のことを……

そう言葉を紡ごうとした瞬間、フワリと目の前の表情が満足そうな笑みに変わったのに気がつく。

「今迄してきたエッチの中で…いっちばんよかった……恭平。」

ぎくりと体の中が大きく軋んで、その言葉の持つ意味に今迄の甘く陶然としていた感情が恭平の中でハッキリと凍りついた。

目の前にいるのは、自分と同じ同性。
ちゃんと彼女もいて女とセックスだってしている。
今迄…それはつまり…

不意に湧き上がったように体の苦痛が弾けて恭平は、悲鳴を上げて圧し掛かっている体を突き放そうと腕を突っ張らせた。突然の反応に驚きに満ちた瞳で仁聖が眼を見張り、押されるままに痛みを伴う悲鳴を上げる彼を見下ろす。

「き、恭平?!な・何?」
「はな・れろ!!さっさと抜けよっ!離れろって言うんだ!!」

困惑したその体が音を立てて引き抜かれた途端、激しい痛みに顔を顰めながら恭平はその腕の下から身を捩った。寸前までの甘い想いなど無かったかのような激しい抵抗に仁聖は呆然とする。そんな仁聖が身を寄せようとするのを、恭平の体は全身で拒絶した。

「き・恭平…どうしたの?何?…なんで?」
「うるさい!近寄るな!!何でこんな…っ!!」

激しい痛みで思うように動かない体を捩って逃れる恭平の体を、抱き寄せようとした仁聖の腕を音を立てて払いのける。その瞳は、涙に濡れたように輝きながら仁聖を睨み付けた。その視線の余りの鋭利な感情の輝きに仁聖は息を呑む。
初めてここに足を踏み入れた日から唯の一度もそんな視線を投げられた記憶はなかった。まるで鋭利な刃物のような、それでいて白々と虚空に輝く鮮やかな月の様な冷たく孤独で凍り付く様な冷え冷えとした怒りに満ちた瞳。それでいて、その瞳はまるで子供のように真っ直ぐに仁聖を見つめながら、一滴だけの涙を溢した。

「恭…平………。」
「俺が間違ってた………勝手に思い込んでいた……お前は…。」

喘ぐように息をつきながら、その吐息は怒り以上に深く憂いに満ちた悲しみに色を変えていく。

「お前だけは…特別だって……お前は俺を必要としてるって思い込んでたっ。」

語気を荒げるでもないのにその言葉は静かな室内の闇の中で血を吐くように痛みを伴った言葉に変わった。見ている目の前で恭平の表情が、まるで泣いているかのように歪む。伸ばそうとした指先から身を捩って逃れ、鋭い視線は全ての言葉を拒絶している。

「間違ってた………女の代用品にされてやっとわかった。」
「そんなっ?!!何で?!何でそうなんの?!!」

その体を抱き寄せようとした仁聖の腕を払った手が音を立ててその頬を殴りつけて、呆然とした仁聖の顔を真正面から怒りに溢れた瞳が冷酷な光で射抜いた。

「出て行け…二度と顔も見たくない。」

はっと息を呑んで仁聖の動きが凍りつく。数分前まで一瞬想いが通じ合ったと感じた全てを覆されて、突きつけられた最後通知の大きさに困惑した表情が急に深まった様な夜の闇の中で泣き出しそうに歪む。

「恭平…どうして…?ねぇ…話聞いて?!俺はっ…俺はただ…っ!!」
「もう何も訊きたくない!!出てけって言ってるんだ!!!」

言葉の先を繋ぐ事も許されずに視線も合わせない恭平の凍り付いて蒼ざめた表情。呆然とそれを見下ろしていた仁聖の手が、伸ばそうとして躊躇いがちに震えながら握りこまれる。今まで一度として怒りをぶつけられた事も、それ以上に視線を向けようとしないなんて事も目の前の青年にされた事はなかった。それは彼から突き付けられた明確な最後通知に他ならないのだと仁聖は気づいていた。

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