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20代の話 Prodromal
26.次の札
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午後の仕事は自分で言うのも何だが散々だった。
新生児に何かしでかしたわけではないが、せっかく温めた粉ミルクの哺乳瓶を落とすわ、看護記録は文章にならないわ、集中力が散漫にもほどあると私は溜息をつきながら残った看護記録をまとめる。
こんなにもたった一つのメールが自分を動揺させるとは思っても見なかった。普段の私にあるまじきミスばかりだが、周囲は特に何を言うでもないのがわずかな救いではある。
まぁ、陰で何を言っているかは別としてだが。
残った仕事を何とか仕上げて帰途に着いた私は、一先ず車の中でメールを打った。
『この後は家にいるから何時でもいいよ。』
暫く待つが、そのメールに返事は来ない。
恐らく彼は、今は塾で先生になっている時間なのだろう。品行方正な小学生から中学生を対象にした国語と社会を教える塾の先生。時には数学も理科も教えるというから、結局は英語以外は何でもできるということなのだろう。そんなスーツ姿で眼鏡をかけて子供を教える塾の先生が、まさか夜はSMサイトで日々交流をかわすご主人様だとだれがおもうだろう。まさかのそのサイトでひっかけた私ともう一人彼女、まあ自分が彼女じゃないとしても世間的にみれば女二人に男一人・二股とはだれが思うだろう。裏の顔とはよくいったもので、教師というお堅い職業とは思えない奔放ぶりは何とも皮肉なものではないか。そう思いながら、私は北の特有の早い秋の気配の漂う夕闇を眺めながらハンドルを握った。
その読みが正解だったのだろう、彼からの電話は真夜中に近い時間、いや既に真夜中といっていい時間に携帯を光らせる。私は落ち着かない気持ちで、携帯を取り上げた。受けるわけでもなく、その震える携帯を握り締めたまま私はその着信ライトを見つめる。
話って何なのかしら・・・・。
もしかしたら、もう来なくて良いとか?
もしかしたら、彼女にばれたからもう会えないとか?
様々な悪い考えしか浮かばないのは、やっぱり自分が後から来た女だからだろうか。
実際どっちが先だったなんて知らないし、私を彼女とするにはネットからなのか電話からなのか実際会った日からなのか、大体にして彼女にすらなってない。たぶんなってない。
堂々巡りする思考の最中、ふっと一度着信が途絶え携帯は無言におちる。私はかけ直す事もせずに、そのままかかってこなければ寝たことにしてしまおうかと思いながら手の中の携帯電話をただぼんやりと見下ろしていた。
しかし、5分とせずに再びかかってきた彼からの着信に不安を押し隠したまま耳を当てる。
「もしもし?」
《あぁ、良かった、もう寝ちゃったかと思った。》
思わぬほど明るいシュンイチの声に私は戸惑う。何だか昼のメールとはそぐわないようなその明るさが逆に不安だった。
「話って・・・?何?」
不安に押し潰されそうな私の声に、もう少し明るく話そうよ、と彼が言う。しかし、それどころではない私はシュンイチの言葉を無視して先を促す。不安の最中に明るい声で会話が出来るほど自分は器用でもなんでもないと心のどこかが呟くのを聞きながら、彼が先を続けるのを待った。
《俺、彼女と別れたから。》
「は・・・?」
《だから、何も気にしないで会いに来ていいよ?アキ》
その言葉がどれだけ無神経な言葉なのか彼は分かっていない。実際、私自身もそれを喜ぶべきなのかそうではないのかが全く分からないでいるのだから。心の中で私自身が叫ぶ声が聞こえる。
あなたは二股を自分から証明しているのよ。
あなたは私がそれを平気だと思っているの?
でも、これは喜ぶべきことなの?
好きな人が私に会いにこいと言っているのは喜ぶべきことなの?
でも、あなたは私をどう思っているか口にしてないのよ?私は何?私はあなたの何なの?
「喜ばないの?」と問いかけた彼に私は何も答えることが出来ないまま、ただ「そう」とだけ呟いた。
―――好きだからこそ憎いことがある。
その言葉が脳裏に閃く。
まるでこの感情は薔薇の花のようだ。
美しい大輪の真紅の花弁の下には、鋭い棘を持つ茎が隠れている。それはけしてどちらかだけでは存在しない。どちらもあるからこそ薔薇は美しいともいえる。
確かに私は彼の言葉や行動に癒され恋愛感情を持っていた。だが、同時に彼の女性を扱う姿勢に憎しみを感じてもいる自分がいることに気がついてしまっていた。
※※※
相反する感情が残ったままなのに再び遠い距離をバスと電車を乗り継いで出て行く自分の矛盾。私は夜勤の疲労感にウトウトと電車の中でまどろみながらそれを直に心に感じながらも無理やり心の奥にその感情を飲み込んだ。
上野の駅で新幹線を降りて、山手線乗り換えて池袋に着く。そうすると一先ず化粧室で化粧の崩れ直す。化粧を気にしながら少し不安げな自分の顔を私はまじまじと見つめた。その表情がどうして浮かんでいるのかは良く分かっていた。
彼は分かれたと言ったけど、私を好きだと言った訳ではない。
けして相手の言葉は鵜呑みには出来ないし、その上彼女以外に私のようにサイトから始まって会っている女性がいないという確証すらもない。つまり、未だ自分の状況は何一つ変わらないということだった。
私は溜め息をつきながら、少し乾いた唇にグロスを乗せて、崩れた目元の化粧に軽くコットンを押し当てる。こんな風に化粧室で化粧を直すなんて考えもしない行為だったが、今では当たり前のような気もするのが不思議だった。
女は変わるとよく言うけれど、自分がその立場になるとは考えもしないものだ。
―――だけど、私からは、けして言わないようにしなくちゃ・・・。
ふと彼女はそう思った。
私が彼に全てをさらけ出すには私が分が悪すぎる。
やはりこれはゲームなのだ。そう思うしか今はない。彼から自分が必要と確証がもてなければ、結局自分はただの都合のいい資金源のダッチワイフ。ただし、最悪の結果で納得するには自分は彼に尽くしすぎている。
ふと携帯のメールの着信に気がついて、私は少し物憂げな気持ちでそれを開いた。
『何時もの分かれる私鉄は分かる?』
『分かるよ?』
上野から山手線で池袋まで行き、いつもの私鉄の改札口で待ち合わせ。それが何時ものパターンだと考えていたのだから、分からないはずがなかった。
『じゃぁ、それに乗ってきて?どれに乗っても止まる駅だから。』
一瞬、その言葉の意味が判らず動作が凍る。
乗っていく?
駅???
私は暫くその言葉を頭の中で反芻すると、やっとその意味がぼんやりと形を成し始めた。
今までは池袋までがリアルだった。
その先のお互いは全く知らないで過ごしてきたのだ。
アキコは池袋までのアキとネットでのリエしか見せたことがないのと同じように、ヤネオシュンイチも池袋までの彼とネットの上でのフィしか存在しなかった。しかし、彼は今その均衡を崩そうとしている。今までの線を崩して、私を自分のラインに引き込もうとしているのだ。それは、微かな驚きを伴って、凍りつくように立ちすくんだ私の心を震わせている。
彼はゲームの次の札をきったのだ。
そんな予感に私は微かなおののきを感じながら、気忙しげに化粧を直すと小さな鞄を取り上げて構内を歩き出す。私の心の中はまるで2つに分裂しているかのような気がした。
希望と不安。
それは言い換えればやはり愛と憎しみになるのかもしれない。ただ、それでも希望にすがりたいと私は心の中で呟く自分の存在を感じる。短い時でも、心の中の孤独が癒される時間ができるのならそれでもいいのかもしれない、そんな事を考えながら私はおもむろに駅のホームに続く階段を上り始めていた。
初めて乗る私鉄の中で何度となく携帯が震え、その度に私はメールを確認する。
内容は他愛ない場所の確認や状況の確認。ただその頻度は今までとは違う気がして私は目を細めた。
急行電車で20分。
目的の駅でホームに降りる人影は思ったより多い。
恐らく池袋から近いせいもあってベットタウンなのだろうと彼女は考えながら、人波がわずかに引くのをその場で立ちつくしたまま待った。何だか、人ごみに紛れて歩くには気がひける様な気がしたのだ。
『この電車じゃなかったの?』
その途端来たメールの内容に微かに彼女は驚く。
『今、ホームにまだいるの。』
その返事にもすぐ返事が返ってくる。
『改札で待ってるから』
それは酷く不思議な気がした。
最初の姿とはまるで違うその彼の行動は、彼自身の変化なのだろうか。
それとも、ただゲームの続きなのだろうか。そんな不安をどこかに感じながら私は改札に向かう。其処には塾の講師の姿なのだろう、今まで見た事のないスーツ姿の彼が穏やかな視線で立ちつくしている。私の戸惑いも知らない様に彼は私に笑いかけ、思わず改札越しに私もはにかむ様に微笑んだ。
「大丈夫だった?迷わなかった?」
「うん・・・・・」
良かったと言って笑う彼の横をついて歩きながら、促されるままに駅の構内を歩く。
其処は私にとっては未知の領域でもあった。運転免許のある私と違って、未だ彼は免許を持っていない。だとしたら、この生活圏で生活しているという事になる。其処に足を踏み入れる事は更に彼自身のリアルに自分が入り込んでいくことなのだと感じる。
「・・・・どこ・・・行くの?」
「俺んちだけど・・・・いや?」
汚れてるけどね、と彼が笑うのを横に見ながら私は微かな動揺を感じながらも、首を横に振りながら横に並んで歩く。自分が住む場所とは違うまだ夏の名残りの強い夜気が酷く息苦しいモノの様な気がしながら、私は大人しく横をついて歩き、その街並みを物珍しそうに眺める。自分の生活圏とは違う世界は何だか物珍しかったのは事実だ。コンビニによりながらアパートらしい建物に促され、素直についていく自分が周りにはどう映るのだろうと微かに考えながら、私は暗い都会の夜空を見上げていた。
新生児に何かしでかしたわけではないが、せっかく温めた粉ミルクの哺乳瓶を落とすわ、看護記録は文章にならないわ、集中力が散漫にもほどあると私は溜息をつきながら残った看護記録をまとめる。
こんなにもたった一つのメールが自分を動揺させるとは思っても見なかった。普段の私にあるまじきミスばかりだが、周囲は特に何を言うでもないのがわずかな救いではある。
まぁ、陰で何を言っているかは別としてだが。
残った仕事を何とか仕上げて帰途に着いた私は、一先ず車の中でメールを打った。
『この後は家にいるから何時でもいいよ。』
暫く待つが、そのメールに返事は来ない。
恐らく彼は、今は塾で先生になっている時間なのだろう。品行方正な小学生から中学生を対象にした国語と社会を教える塾の先生。時には数学も理科も教えるというから、結局は英語以外は何でもできるということなのだろう。そんなスーツ姿で眼鏡をかけて子供を教える塾の先生が、まさか夜はSMサイトで日々交流をかわすご主人様だとだれがおもうだろう。まさかのそのサイトでひっかけた私ともう一人彼女、まあ自分が彼女じゃないとしても世間的にみれば女二人に男一人・二股とはだれが思うだろう。裏の顔とはよくいったもので、教師というお堅い職業とは思えない奔放ぶりは何とも皮肉なものではないか。そう思いながら、私は北の特有の早い秋の気配の漂う夕闇を眺めながらハンドルを握った。
その読みが正解だったのだろう、彼からの電話は真夜中に近い時間、いや既に真夜中といっていい時間に携帯を光らせる。私は落ち着かない気持ちで、携帯を取り上げた。受けるわけでもなく、その震える携帯を握り締めたまま私はその着信ライトを見つめる。
話って何なのかしら・・・・。
もしかしたら、もう来なくて良いとか?
もしかしたら、彼女にばれたからもう会えないとか?
様々な悪い考えしか浮かばないのは、やっぱり自分が後から来た女だからだろうか。
実際どっちが先だったなんて知らないし、私を彼女とするにはネットからなのか電話からなのか実際会った日からなのか、大体にして彼女にすらなってない。たぶんなってない。
堂々巡りする思考の最中、ふっと一度着信が途絶え携帯は無言におちる。私はかけ直す事もせずに、そのままかかってこなければ寝たことにしてしまおうかと思いながら手の中の携帯電話をただぼんやりと見下ろしていた。
しかし、5分とせずに再びかかってきた彼からの着信に不安を押し隠したまま耳を当てる。
「もしもし?」
《あぁ、良かった、もう寝ちゃったかと思った。》
思わぬほど明るいシュンイチの声に私は戸惑う。何だか昼のメールとはそぐわないようなその明るさが逆に不安だった。
「話って・・・?何?」
不安に押し潰されそうな私の声に、もう少し明るく話そうよ、と彼が言う。しかし、それどころではない私はシュンイチの言葉を無視して先を促す。不安の最中に明るい声で会話が出来るほど自分は器用でもなんでもないと心のどこかが呟くのを聞きながら、彼が先を続けるのを待った。
《俺、彼女と別れたから。》
「は・・・?」
《だから、何も気にしないで会いに来ていいよ?アキ》
その言葉がどれだけ無神経な言葉なのか彼は分かっていない。実際、私自身もそれを喜ぶべきなのかそうではないのかが全く分からないでいるのだから。心の中で私自身が叫ぶ声が聞こえる。
あなたは二股を自分から証明しているのよ。
あなたは私がそれを平気だと思っているの?
でも、これは喜ぶべきことなの?
好きな人が私に会いにこいと言っているのは喜ぶべきことなの?
でも、あなたは私をどう思っているか口にしてないのよ?私は何?私はあなたの何なの?
「喜ばないの?」と問いかけた彼に私は何も答えることが出来ないまま、ただ「そう」とだけ呟いた。
―――好きだからこそ憎いことがある。
その言葉が脳裏に閃く。
まるでこの感情は薔薇の花のようだ。
美しい大輪の真紅の花弁の下には、鋭い棘を持つ茎が隠れている。それはけしてどちらかだけでは存在しない。どちらもあるからこそ薔薇は美しいともいえる。
確かに私は彼の言葉や行動に癒され恋愛感情を持っていた。だが、同時に彼の女性を扱う姿勢に憎しみを感じてもいる自分がいることに気がついてしまっていた。
※※※
相反する感情が残ったままなのに再び遠い距離をバスと電車を乗り継いで出て行く自分の矛盾。私は夜勤の疲労感にウトウトと電車の中でまどろみながらそれを直に心に感じながらも無理やり心の奥にその感情を飲み込んだ。
上野の駅で新幹線を降りて、山手線乗り換えて池袋に着く。そうすると一先ず化粧室で化粧の崩れ直す。化粧を気にしながら少し不安げな自分の顔を私はまじまじと見つめた。その表情がどうして浮かんでいるのかは良く分かっていた。
彼は分かれたと言ったけど、私を好きだと言った訳ではない。
けして相手の言葉は鵜呑みには出来ないし、その上彼女以外に私のようにサイトから始まって会っている女性がいないという確証すらもない。つまり、未だ自分の状況は何一つ変わらないということだった。
私は溜め息をつきながら、少し乾いた唇にグロスを乗せて、崩れた目元の化粧に軽くコットンを押し当てる。こんな風に化粧室で化粧を直すなんて考えもしない行為だったが、今では当たり前のような気もするのが不思議だった。
女は変わるとよく言うけれど、自分がその立場になるとは考えもしないものだ。
―――だけど、私からは、けして言わないようにしなくちゃ・・・。
ふと彼女はそう思った。
私が彼に全てをさらけ出すには私が分が悪すぎる。
やはりこれはゲームなのだ。そう思うしか今はない。彼から自分が必要と確証がもてなければ、結局自分はただの都合のいい資金源のダッチワイフ。ただし、最悪の結果で納得するには自分は彼に尽くしすぎている。
ふと携帯のメールの着信に気がついて、私は少し物憂げな気持ちでそれを開いた。
『何時もの分かれる私鉄は分かる?』
『分かるよ?』
上野から山手線で池袋まで行き、いつもの私鉄の改札口で待ち合わせ。それが何時ものパターンだと考えていたのだから、分からないはずがなかった。
『じゃぁ、それに乗ってきて?どれに乗っても止まる駅だから。』
一瞬、その言葉の意味が判らず動作が凍る。
乗っていく?
駅???
私は暫くその言葉を頭の中で反芻すると、やっとその意味がぼんやりと形を成し始めた。
今までは池袋までがリアルだった。
その先のお互いは全く知らないで過ごしてきたのだ。
アキコは池袋までのアキとネットでのリエしか見せたことがないのと同じように、ヤネオシュンイチも池袋までの彼とネットの上でのフィしか存在しなかった。しかし、彼は今その均衡を崩そうとしている。今までの線を崩して、私を自分のラインに引き込もうとしているのだ。それは、微かな驚きを伴って、凍りつくように立ちすくんだ私の心を震わせている。
彼はゲームの次の札をきったのだ。
そんな予感に私は微かなおののきを感じながら、気忙しげに化粧を直すと小さな鞄を取り上げて構内を歩き出す。私の心の中はまるで2つに分裂しているかのような気がした。
希望と不安。
それは言い換えればやはり愛と憎しみになるのかもしれない。ただ、それでも希望にすがりたいと私は心の中で呟く自分の存在を感じる。短い時でも、心の中の孤独が癒される時間ができるのならそれでもいいのかもしれない、そんな事を考えながら私はおもむろに駅のホームに続く階段を上り始めていた。
初めて乗る私鉄の中で何度となく携帯が震え、その度に私はメールを確認する。
内容は他愛ない場所の確認や状況の確認。ただその頻度は今までとは違う気がして私は目を細めた。
急行電車で20分。
目的の駅でホームに降りる人影は思ったより多い。
恐らく池袋から近いせいもあってベットタウンなのだろうと彼女は考えながら、人波がわずかに引くのをその場で立ちつくしたまま待った。何だか、人ごみに紛れて歩くには気がひける様な気がしたのだ。
『この電車じゃなかったの?』
その途端来たメールの内容に微かに彼女は驚く。
『今、ホームにまだいるの。』
その返事にもすぐ返事が返ってくる。
『改札で待ってるから』
それは酷く不思議な気がした。
最初の姿とはまるで違うその彼の行動は、彼自身の変化なのだろうか。
それとも、ただゲームの続きなのだろうか。そんな不安をどこかに感じながら私は改札に向かう。其処には塾の講師の姿なのだろう、今まで見た事のないスーツ姿の彼が穏やかな視線で立ちつくしている。私の戸惑いも知らない様に彼は私に笑いかけ、思わず改札越しに私もはにかむ様に微笑んだ。
「大丈夫だった?迷わなかった?」
「うん・・・・・」
良かったと言って笑う彼の横をついて歩きながら、促されるままに駅の構内を歩く。
其処は私にとっては未知の領域でもあった。運転免許のある私と違って、未だ彼は免許を持っていない。だとしたら、この生活圏で生活しているという事になる。其処に足を踏み入れる事は更に彼自身のリアルに自分が入り込んでいくことなのだと感じる。
「・・・・どこ・・・行くの?」
「俺んちだけど・・・・いや?」
汚れてるけどね、と彼が笑うのを横に見ながら私は微かな動揺を感じながらも、首を横に振りながら横に並んで歩く。自分が住む場所とは違うまだ夏の名残りの強い夜気が酷く息苦しいモノの様な気がしながら、私は大人しく横をついて歩き、その街並みを物珍しそうに眺める。自分の生活圏とは違う世界は何だか物珍しかったのは事実だ。コンビニによりながらアパートらしい建物に促され、素直についていく自分が周りにはどう映るのだろうと微かに考えながら、私は暗い都会の夜空を見上げていた。
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