鵺の哭く刻

文字の大きさ
79 / 181
進行

79.★

しおりを挟む
記憶の中で自分がどれだけ非道で非常識なことをしたのかは分かってはいる。分かってはいるけれど、それに罪悪感があるかと問われると、答えは『NO』なのだった。それが本来異常なのは分かってはいるけれど、怯えた子供が泣きながら言うことを聞き、やがてフェラチオをしたり素股をさせながらガクガクと震えているのには興奮してしまう。ただそれが成功したのはほんの数回だけで、女児の膣に大人のシュンイチの狂気の逸物を捩じ込んだことはない。というか逸物を捩じ込めそうな状況まで持ち込めたのは実は一度だけで、それは女児ではなくあの男児だけだったのだ。
あの時というか基本として男に興味があるわけではないが、その男児は綺麗な女の子みたいな顔立ちだったから萎えずにやれそうだと思った。それに尻の穴に指を突っ込むまではしたのだが、いざ尻の穴に逸物を捩じ込もうとしたら痛みと恐怖で嘔吐されてやる気が失せたから未遂。あれであの時あの男児が何ともなければ、最後まで犯して奴隷として躾てやった筈なのだ。子供の時から躾ておけば従順さは申し分ない性奴隷に仕込めた筈だと、今でも正直言うと思ってもいるのだった。

こんなおぞましい性癖…………弱いもの苛めと言われても反論のしようがない性癖

そんなことは分かっている。でも分かっていてもこれは変えられないし、治らない。何しろここまでもうすっかりと歪んで育ってしまったし歪んで育てられてしまったのだから、ここから治そうとしても治りようがないのだ。

育てられた…………?

そう考えると何を指して自分がそう言っているのかと、思わず自分で自分の中の記憶を遡ってしまう。アキコほどの記憶力ではないのだが、考えていると何かが心の中に引っ掛かるように存在しているのが感じられる。

何か…………こうなるように…………何かが…………

気がつくと何かにそう仕向けられたと自分がそう考えてしまっていて、それが記憶の中にちゃんと埋もれていると自分は知っている気がするのだ。それが何なのか夜の闇の中で目を開き考え込んでしまう自分に、何故か心の片隅では考えるなと叫ぶ自分の存在もあった。

公園で何人か子供を襲っている。

その子供達はアキコのように大人しそうで人形のような綺麗な顔立ちの子供ばかりだが、そんな子供ばかりがいたわけではない。それでも選んでいたのは黒目勝ちの艶やかな髪で、大人しくて他の子供に駆け寄るような感じではない子供。他の子供からはぐれてしまいがちな無力な大人しい子供。勿論そんな子供が選びやすかったのもあるが、それだけなのだろうかとも考えてしまう。どの子供も最初は戸惑い怯え後退るが、上手くいかない時にはそこでウサギのようにあっという間に逃げられる。そうでなければ物陰に追い詰めてシュンイチのお楽しみが始まるのだが、その瞳は何処かで見たことのある怯えの光が浮かんでいた気がするのだ。

何でだ…………

なんでそんな弱いもの苛めのようなやり方を好むようになったのかと、駄目だと分かっているのに更に深く深く考えてしまう。生まれつきの性格なのだとしても、このやり方を本能的に自分が導きだしたのだとは到底思えない。何かそれを身に付けるような事があった筈だと、更に記憶を丹念に遡ればうっすらと記憶の端に裸で服を捲り直立不動で立つ自分がいる。他人ではなく自分自身が苛んだ子供達と同じく何かに従わされて、薄暗い室内で誰かに従わされているのが頭の中に鮮明に浮かんだのだ。



※※※



見慣れた畳の狭い部屋。壁には何度も見ていた絵がかけられていて、今は恐らく洗濯物が散らばっている事の多い筈の部屋に落ち込む暮明。そこには何故か生乾きの洗濯物のような臭いが満ちていて、そこでまだ幼い少年は震えながら直立不動で足元に視線を落としていた。上着は胸まで捲り上げて、下は足首まで下げる奇妙な状態で立ち尽くす。その前に仁王立ちしていた影が、不機嫌そうな声を張り上げた。

「ダメなの!悪い子!!だからこうなるのよ?!いいわね?!」

そう言って逸物とはまだ呼べない幼い未熟な性器を、突然に泣きわめきたくなるような痛みに曝された。大人の固い爪でダランとしていた先端をガッチリと挟まれたのだ。

「ひいぃ!!いたいっ!!!」
「当たり前でしょ!」

ギチギチと爪が亀頭とも呼べない未熟な性器の先端に食い込み、子供は痛みに引きずられ腰を突き出した。ところがその体勢が気にくわないのか、大人の手は先端を離したかと思うとバチンッバチンッと思い切り平手打ちを始める。

「いたいいぃ!!いたいよぉ!!!ごめんなさいいぃ!!!」

それでも容赦なく平手打ちされた性器は痛みでピンと立ち上がり、尚更その姿は大人の不況をかってしまうのだ。大人は苛立ちに歯を剥き出し奥歯を噛みながら、立ち上がった性器にバチンッとバネの強い洗濯バサミをぶら下げた。

「ひぎいぃいい!!!いだい!!いだいいいいぃい!!」
「うるさい!我慢しなさい!!悪い子なんだから!謝れ!!」

洗濯バサミの痛み、平手打ちの痛み。あまりの痛みに失禁すれば尚更叩かれ、勃起すれば尚更挟みこまれ、ごめんなさいと必死に謝るしかない。

「ごめんなさい!もうしません!ごめんなさい!ママ!」

何でそれを謝るのか分からないし、なんでこんなお仕置きをされるのかも分からない。でも大人に言わせると痛みを我慢するのは悪い子なのだから当然で、いい子にしないとこの痛みは何時までも続く。普段から何故かこうだった。例えば道すがら女の人の事をチラッと見ただけで引き摺られて帰って早々に性器を叩かれたし、幼稚園で女の子と手を繋いで楽しそうでしたと先生から連絡帳に書き込まれれば洗濯バサミで未熟な性器の先端を挟まれた。

「いたいいぃ!!いたいよぉ!!!ごめんなさいいぃ!!!」

どんなに泣き叫んで懇願しても大人が許すまでは我慢しないとならないし、我慢しないといい子には成長しないのだと大人は言う。自分には弟がいた筈だが、こんな時には必ず弟は傍にはいない。それに父親も絶対にこんなことをされている時にはいないから、誰もこれを宥めてはくれないのだ。ヒイヒイと泣き続け謝る声が掠れる迄時が経って、やっと大人は満足したのか奥歯を噛み締めた顔のまま嗤う。

「悪いことしたって分かったわね?シュン。」

分かりましたと素直に答えると、今度は奇妙なことが起こる。良い子ねと大人に微笑まれて、洗濯ハサミで挟まれたままの未熟な性器の先端を指で擦りあげられ始めるのだった。それは痛みの筈なのに何故か次第に心地よくすら感じる奇妙な感覚で、何度も何度も繰り返し身体に教え込まれていく。そうしてそれは幼いシュンイチの本能に深く刻み込まれて



※※※



あれは恐らくはシュンイチが五歳かそこらのことで、自分が大人になってから性的に悪戯した子供も大概はそれくらいの年代だった気がする。泣きながら言うことを聞く子供を奥歯を噛み締め歯を剥き出した嗤いで見下ろして、あの時されたようにこちらが満足するまで痛め付ける大人の姿は思い出すと鮮明。それなのにほんの数秒経つとあっという間に霞がかかっていき、忘れてしまいそうになる。

あれは………………本物なのか?

それでよ記憶としては朧気なのに、映像と痛みは鮮明に覚えていたのだ。まるで本当は鮮明に覚えているのに何かを被せて隠しとおしているかのように、その光景は被せてある幕を捲れば鮮明すぎる。そこには悪い子だと詰り続けて、性器だけでなく乳首にまで洗濯バサミをつけられ泣きじゃくる子供を笑いながら見下ろす女がいた。

ごめんなさいいぃ!!!ママァあぁ!!!

シュンイチが泣き喚くのに大人の女は笑いながら、悪い子だからおチンチンなんか腐って落ちてしまうよと恐ろしい言葉で脅かしもする。それに子供のシュンイチは震え上がり言うがままになっていて、それは奇妙な程に見覚えがあった。

アキコにも…………

そうなのだ、自分は同じ痛みをアキコに与えて、それをアキコは快感に塗り替えられる稀有な存在だった。だからアキコがシュンイチにはどうしても必要なのだ。あの過去に苛んだ子供達にだってあの時アキコさえ傍にいてくれたら、あんなことはしなくて済んだと今なら分かる。アキコは従順で無垢でシュンイチの希望通りの女だから、アキコがここにいれば子供なんて頭の悪いのを相手にして危険を犯さなくても済んだのだ。

そうして何も知らなかったのに、俺に言われるがまま尻の穴まで差し出した哀れで美しい生け贄。

初夜のベットの中で抱き寄せると、モゾモゾと更に深く潜り込んで眠るアキコにホッと安堵する。腕の中の彼女はシュンイチだけのもので、あの過去の記憶の大人の女であるシュンイチの母親には何も関係がないからだ。完全なシュンイチだけの奴隷だから、そう思いながら何かが矛盾しているような気がしてシュンイチは闇の中を見つめていた。



※※※



二人の新しい暮らしの滑り出しは、概ねが順調に流れていたように見えた。お互いの仕事がそれぞれの意味で忙しいことは確かだったが、それでもお互いを気遣う事ができる関係を保って新婚の夫婦生活は続く。このままずっと過ごせるのであれば、そう思える程度には穏やかで安心して過ごすことができる。
相変わらず蛇は時折にだが体内で暴れはするものの、影はあの日以来プツリとアキコの周囲には姿を表さないまま。時には何となく気配を感じることはあるが、それはまるで霞のようで遠くてハッキリとは感じとれない。

ヤッパリあそこに置いてきたのかもしれない……

白昼夢はあれから二度と見ていないから、余計にそう感じてしまう。土蔵の奥に置き去りにしてきた影が近くにいないことで影に犯されることもなく、ただシュンイチとの性交は体内の蛇のお陰でちゃんと快感も感じられる。これで済むならともう良いかと思ってしまうのは、人間としては当然のことだ。

「ヤネオさん、毎晩旦那さん迎えにいってるの?」

その言葉にアキコは思わず昼食を取る箸を休めた。実際忙しいとはいえアキコの仕事は決められた勤務の時間帯もあるので超過勤務があったとしても、塾で昼夜無く働く彼よりは精神的にも時間的にも余裕があるとは思う。結婚を期に働く場所が隣の駅前の塾に移動になったシュンイチの勤務としても夕方から真夜中までで終わればまだいいが、終電に間に合わないことも屡々だ。だから終電に間に合わず一駅とはいえ夜間料金のタクシーに乗って帰宅されるよりは、アキコがシュンイチを迎えに行くほうが経済的にも楽。最初の理由はそんな単純なものだった。

「えぇ、毎日じゃないですけど、その方が楽なんで。」
「甘やかしすぎじゃない~?」

アキコの言葉をどう取ったのか、職場の上司に当たる女性が茶化すように言う。新婚という事もあって、こうして冷やかされるのは何時もの事だった。アキコ個人としての思いは、けして甘やかしている訳ではない。そうは思うが、実際は何処かで甘やかしてしまっているのかも知れないとも思う。
何しろ隣駅一駅は、東北の一区間二十キロも間のある一駅ではないのだ。関東圏の一駅なので、最寄りの駅までの距離を含めても自転車を使えば二十分もあれば遅くても帰ってこれる程度の距離。勿論自転車も元々アキコが持っていたのをここまで持ってきているが、何だかんだといってアキコが車で送り迎えしていてシュンイチも次第にそれに慣れ始めている。二人の関係は穏やかで以前とは比べものにならないものだったが、それでもアキコがこうして送り迎えをするのは、アキコ自身まだ心の何処かでシュンイチを信じきれていないがための行動かもしれないと思うとアキコは微かに苦笑した。

「でも毎晩タクシーで帰られるとお金なくなるんで。」
「歩いて帰ってくればいいのよぉ。」

もう何十年も夫婦生活の先輩でもある同僚達が口々に言うのを耳にしながら、更にアキコは微かな苦笑を浮かべる。どちらの気持ちが正しいかは一概には言えないが、今のアキコにしてみれば少なくとも以前に比べればずっと幸せなのだ。今の彼女は職場にも上司にも恵まれているし、仕事が忙しく休みも取れない状況にある夫に他の女の影をみて不信感を抱いて心を痛めることもない。ただ、夫を信じて毎日を過ごせる事だけでアキコにとっては、もう十分に幸せな事なのだという事をこの人生の先輩達は知らない。だから、アキコは話に相槌を打ちながらも今夜の迎えは何時ごろかしらと心の隅で小さく思っていたのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち

ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。 クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。 それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。 そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決! その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。

処理中です...