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9月
120.オレンジ
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一念発起して少し大人に見えるような服を着て、雪ちゃんの家に向かう決意をした。純粋に自分の思いを自覚したわけだから、ここは雪ちゃんが私の事をどう思ってるのかを一度聞いてみる必要がある。自分では今までの延長みたいにふれあってきたけど、実は雪ちゃんの迷惑で彼が寛大な気持ちで接してくれてました、何てことになったら目も当てられない。衛は家に昨日からお泊まりしてたけど、雪はお仕事で遅くなってたぶんお昼まで寝てるよって愛らしさ満点の笑顔で太鼓判押してくれた。
「まーちゃん、雪の寝込みをおそうの?」
おい、どこでそんな言葉おしえられたのっ!ってグリグリすると衛がキャーって大笑いしてる。どうやら同級生が教えてくれるらしいけど、だんだん衛が成長してるのが大きくなって離れていく気がしてちょっと寂しい。ついこの間まで友達が出来ないってベソかいてたくせに。
「襲わないけど、雪ちゃんと大事な話があるの。衛は家で待っててね?」
「はーい!」
お土産ね-って笑ってる衛をママに任せて、私は気合いお入れ直し雪ちゃんのマンションに向かった。気前のよさ満点で鍵も衛から借りたから、雪ちゃんが寝てる間に朝御飯を準備するつもりだ。胃袋を掴むじゃないけど、食べてるときの方が話もしやすい、ような気がする。
ママに焼いて上げてと自家製の味噌漬けのお魚を持たせられたし、途中で少し食材も買い込んだから用意は万端だ。鍵を使って雪ちゃんのマンションのオートロックも問題なし。そっと玄関を開けて、部屋にはいるけど案の定人が動く気配はない。前に来た時から1ヶ月くらい経ってるけど、相変わらずの男所帯に思わず溜め息が出る。マンションはファミリータイプで3LDKと、割合広い。家賃とか聞いたことないけど、結構かかってるような気もする。簡単に片付けをして朝食を作り始めたけど、ドアの向こうの雪ちゃんは起きる気配もない。
そう言えば雪ちゃんは寝惚すけだもん。
そう考えた私は何となく可笑しくなってしまう。掃除しても洗濯機を回しても起きる気配もない雪ちゃんは、どれくらいで起きてくるだろう。お米が炊き上がる匂いとお魚が焼ける匂いが漂い始め、お味噌汁が出来上がった辺りで唐突に向こうの部屋に人が動く音がする。
「麻希ちゃん?」
「雪ちゃん、タイミングいいね、朝御飯丁度出来たとこだよ。」
私の声に雪ちゃんが呆然としているけど、私はさっさとご飯をよそい始めた。テーブルに準備した料理を目を丸くして見ている雪ちゃんは、寝起きのせいでまだ半分ボォッとしている顔で状況が飲み込めていない。
「はい、雪ちゃん、座って。」
「は、はい。」
向かいに座った雪ちゃんにお味噌汁のお椀を差し出すと、キョトンとした雪ちゃんは大人しく受け取った。自分の分もよそって向かいに座る私に、雪ちゃんは何を思っているのかボォッと眺めている。
「食べて、雪ちゃん。」
「あ、いただきます。」
「はい、いただきます。」
二人でこうして朝御飯を食べるのって実は始めてだ。家には何時もママがいるから、二人っきりで食べることはなかった。お魚もうまく焼けたし、卵焼きは文句なしだし、お味噌汁も中々いい感じ。
「雪ちゃん。」
「は、はい。」
「雪ちゃんと話がしたくて来たの。」
ゴクンと雪ちゃんの喉が奇妙な音をたてたのが分かる。聞きたいことをまとめてきた筈だけど、聞く私より聞かれる方の雪ちゃんの方が緊張しているみたいに感じるのは何でだろう。
「ご飯終わったら、聞きたいことがあるの。」
「はい。」
何か、変に雪ちゃんが緊張してるのが、私には凄く不思議。あんまり緊張されるとご飯が上手く味わえないんじゃないかな、なんて少し心配になる。
食事が終わって少し落ち着いたところで、リビングのソファーに何やら緊張して座っている雪ちゃんの隣に座る。私の方が緊張する筈なのに雪ちゃんがあんまり緊張してるからか、私はかえって凄く普段より落ち着いてるみたいだ。
「ねえ、雪ちゃん。雪ちゃんは私の事をどう思ってる?」
「ええ?!」
ええって何でそんな驚き?私が聞いてくるなんて想定外みたいな顔されると、正直ちょっと傷つく。こういうのってどうしたらいいのか分かんないから、真正面からぶち当たるしか私には方法がない。
「今更ってよくわかってるけど、私ね、雪ちゃんの事が好き。」
ポカンとした雪ちゃんの顔。何でポカンとするの?私がそう言うの全然予想にないって、雪ちゃんが考えてるのが分かって本当に傷つく。
「好き?」
呟くように雪ちゃんが掠れた声で言うから、そうと頷いて見せる。ジワジワと理解してきたみたいに、雪ちゃんの顔が赤くなっていく。
「麻希ちゃんが?」
「雪ちゃんの事が好き、なの。」
呆然としてる雪ちゃんが我に帰ったみたいに、私の顔を見つめる。この間至近距離で見たのと同じ、長い睫毛が何度も瞬きを繰り返しながら私の言葉を必死に理解したみたいに見つめた。雪ちゃんが唐突に顔を手で覆って、私から顔を背けようとする。まるで逃げようとするみたいな動きで、咄嗟に私は雪ちゃんの腕に飛び付いた。
「ま、まーちゃん?!」
「雪ちゃんの気持ち、聞かせてくれないの?」
私の言葉に雪ちゃんが凍りついたみたいに、真っ直ぐに私を見つめている。
「俺は……。」
あれ、雪ちゃん俺って言うことあるのなんて、変なことに気がついた私をよそに、雪ちゃんが凄く緊張した顔で俯いた。真っ赤な顔をした雪ちゃんなんて早々見ることない。何て言ってくれるのかを、ただジッと待ってるのって間がもたないんだって始めて知った。
「大事だって思ってる、一番。」
真っ赤な顔でそう言った雪ちゃんにもっと問い詰めようとしたのに、電話がかかってきて話は中断されてしまった。大事って分かりにくいと思うのは私だけ?好きか嫌いかには答えになってないと詰め寄ろうとしたのに、雪ちゃんはお仕事の呼び出しだったって慌てて出ていってしまった。結局私の告白も宙ぶらりん。思わず、雪ちゃん家でクッションをボスボスしてしまったのは仕方がないと思う。
「まーちゃん、雪の寝込みをおそうの?」
おい、どこでそんな言葉おしえられたのっ!ってグリグリすると衛がキャーって大笑いしてる。どうやら同級生が教えてくれるらしいけど、だんだん衛が成長してるのが大きくなって離れていく気がしてちょっと寂しい。ついこの間まで友達が出来ないってベソかいてたくせに。
「襲わないけど、雪ちゃんと大事な話があるの。衛は家で待っててね?」
「はーい!」
お土産ね-って笑ってる衛をママに任せて、私は気合いお入れ直し雪ちゃんのマンションに向かった。気前のよさ満点で鍵も衛から借りたから、雪ちゃんが寝てる間に朝御飯を準備するつもりだ。胃袋を掴むじゃないけど、食べてるときの方が話もしやすい、ような気がする。
ママに焼いて上げてと自家製の味噌漬けのお魚を持たせられたし、途中で少し食材も買い込んだから用意は万端だ。鍵を使って雪ちゃんのマンションのオートロックも問題なし。そっと玄関を開けて、部屋にはいるけど案の定人が動く気配はない。前に来た時から1ヶ月くらい経ってるけど、相変わらずの男所帯に思わず溜め息が出る。マンションはファミリータイプで3LDKと、割合広い。家賃とか聞いたことないけど、結構かかってるような気もする。簡単に片付けをして朝食を作り始めたけど、ドアの向こうの雪ちゃんは起きる気配もない。
そう言えば雪ちゃんは寝惚すけだもん。
そう考えた私は何となく可笑しくなってしまう。掃除しても洗濯機を回しても起きる気配もない雪ちゃんは、どれくらいで起きてくるだろう。お米が炊き上がる匂いとお魚が焼ける匂いが漂い始め、お味噌汁が出来上がった辺りで唐突に向こうの部屋に人が動く音がする。
「麻希ちゃん?」
「雪ちゃん、タイミングいいね、朝御飯丁度出来たとこだよ。」
私の声に雪ちゃんが呆然としているけど、私はさっさとご飯をよそい始めた。テーブルに準備した料理を目を丸くして見ている雪ちゃんは、寝起きのせいでまだ半分ボォッとしている顔で状況が飲み込めていない。
「はい、雪ちゃん、座って。」
「は、はい。」
向かいに座った雪ちゃんにお味噌汁のお椀を差し出すと、キョトンとした雪ちゃんは大人しく受け取った。自分の分もよそって向かいに座る私に、雪ちゃんは何を思っているのかボォッと眺めている。
「食べて、雪ちゃん。」
「あ、いただきます。」
「はい、いただきます。」
二人でこうして朝御飯を食べるのって実は始めてだ。家には何時もママがいるから、二人っきりで食べることはなかった。お魚もうまく焼けたし、卵焼きは文句なしだし、お味噌汁も中々いい感じ。
「雪ちゃん。」
「は、はい。」
「雪ちゃんと話がしたくて来たの。」
ゴクンと雪ちゃんの喉が奇妙な音をたてたのが分かる。聞きたいことをまとめてきた筈だけど、聞く私より聞かれる方の雪ちゃんの方が緊張しているみたいに感じるのは何でだろう。
「ご飯終わったら、聞きたいことがあるの。」
「はい。」
何か、変に雪ちゃんが緊張してるのが、私には凄く不思議。あんまり緊張されるとご飯が上手く味わえないんじゃないかな、なんて少し心配になる。
食事が終わって少し落ち着いたところで、リビングのソファーに何やら緊張して座っている雪ちゃんの隣に座る。私の方が緊張する筈なのに雪ちゃんがあんまり緊張してるからか、私はかえって凄く普段より落ち着いてるみたいだ。
「ねえ、雪ちゃん。雪ちゃんは私の事をどう思ってる?」
「ええ?!」
ええって何でそんな驚き?私が聞いてくるなんて想定外みたいな顔されると、正直ちょっと傷つく。こういうのってどうしたらいいのか分かんないから、真正面からぶち当たるしか私には方法がない。
「今更ってよくわかってるけど、私ね、雪ちゃんの事が好き。」
ポカンとした雪ちゃんの顔。何でポカンとするの?私がそう言うの全然予想にないって、雪ちゃんが考えてるのが分かって本当に傷つく。
「好き?」
呟くように雪ちゃんが掠れた声で言うから、そうと頷いて見せる。ジワジワと理解してきたみたいに、雪ちゃんの顔が赤くなっていく。
「麻希ちゃんが?」
「雪ちゃんの事が好き、なの。」
呆然としてる雪ちゃんが我に帰ったみたいに、私の顔を見つめる。この間至近距離で見たのと同じ、長い睫毛が何度も瞬きを繰り返しながら私の言葉を必死に理解したみたいに見つめた。雪ちゃんが唐突に顔を手で覆って、私から顔を背けようとする。まるで逃げようとするみたいな動きで、咄嗟に私は雪ちゃんの腕に飛び付いた。
「ま、まーちゃん?!」
「雪ちゃんの気持ち、聞かせてくれないの?」
私の言葉に雪ちゃんが凍りついたみたいに、真っ直ぐに私を見つめている。
「俺は……。」
あれ、雪ちゃん俺って言うことあるのなんて、変なことに気がついた私をよそに、雪ちゃんが凄く緊張した顔で俯いた。真っ赤な顔をした雪ちゃんなんて早々見ることない。何て言ってくれるのかを、ただジッと待ってるのって間がもたないんだって始めて知った。
「大事だって思ってる、一番。」
真っ赤な顔でそう言った雪ちゃんにもっと問い詰めようとしたのに、電話がかかってきて話は中断されてしまった。大事って分かりにくいと思うのは私だけ?好きか嫌いかには答えになってないと詰め寄ろうとしたのに、雪ちゃんはお仕事の呼び出しだったって慌てて出ていってしまった。結局私の告白も宙ぶらりん。思わず、雪ちゃん家でクッションをボスボスしてしまったのは仕方がないと思う。
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