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9月
133.マスタード
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日曜日の平静なのんびりした朝一番、予想外だったのは雪ちゃんが、凄い勢いでノックと同時にドアを開けたことだった。悲鳴をあげる隙もない怒濤の来訪に、着替えの真っ最中だった私がその場で凍りつく。
「ご、ごめん!」
慌てて凄い勢いでドアを閉じた雪ちゃんに、よくある乙女らしくキャーとか叫ぶ隙もなかった私。まあ後、首と腕を通したパーカーをただ下ろすだけではあったんだけど。それにしても、雪ちゃんが普段見たことのない凄い勢いで、家に来た理由がちっとも想像できない。半分唖然としながらだけど、そんな事を考えながら着替えを終えてドアを開けて恐る恐る廊下を覗く。戸惑い半分と後悔半分っていう感じの顔をした雪ちゃんが、私の顔を申し訳なさそうに見つめてごめんなさいともう一度呟く。せめてノックの返事を聞いてからドア開けてねと私は、念を押してから雪ちゃんを部屋の中に招き入れる。
「で、雪ちゃん、こんな朝早くどうしたの?」
私が不思議そうに声をかけると、雪ちゃんがハッと我に返ったみたいに顔色を変えた。何故か険しい顔で私の前に正座している雪ちゃんに、つられて正座で向かい合ってしまう私。雪ちゃんはとっても真剣な顔で私の顔を見つめて、言いにくそうに口を開いた。
「麻希ちゃん、信哉と電話番号交換したって本当ですか?」
え?電話番号って、昨日の唐突な鳥飼さんの行動のこと?って私がキョトンとしている。雪ちゃんはとっても真剣な顔で同じことを、もう一回繰り返した。
「うん。したよ、前に雪ちゃんと電話できていいなあって言ったら、何でか分かんないけど教えてくれたの。」
今度は雪ちゃんがえっ?と言うから、だって知らないんだもんと私が言うと唖然とした雪ちゃんが私の顔を穴が開くほど見つめる。
「し、知らないんだっけ?」
「うん、知らないの。」
あれ?雪ちゃんがほおけてる。でも、確かについ最近まで知らないってことに私も気がついてなかったんだもん。雪ちゃんだって知らないこと自体、気がついてなくても仕方がない。
「あ、でも、叔母さんに聞いたら、分かるよね?」
「でも、雪ちゃんから聞かないとかけていいか分かんないと思ったから我慢したの。」
無関心な訳じゃなくて、雪ちゃんから聞かないとかけたくなってかけていいのか分かんないしメールも出来ないと思った。そう理由を話したら、雪ちゃんが何でかその場で脱力している。
「あいつ…今度逢ったら絶対蹴ってやる。」
何か今凄く不穏なこと言わなかった?ブラック雪ちゃんがチラッと顔を出した気がするけど、ここは気にしないでおいていいのかな。雪ちゃんが脱力しながら呟いてるのは後にして、ここぞとばかりに私はイソイソとスマホを取り出した。
「お電話番号聞いてもいいですか?」
「は、はい。」
ちょっと緊張しつつ丁寧にお伺いをたててみると、雪ちゃんもイソイソとスマホを取り出してくれて思わず満面の微笑みが浮かんでしまう。雪ちゃんは私の顔を真っ直ぐ見たなって思った瞬間、何でか再びボーッとしてしまったみたい。動きの止まった雪ちゃんに私は早く早くと急かすみたいに、スマホを向ける。同じ会社だから赤外線で大丈夫な筈なんだけど、雪ちゃんがまだフリーズしたままなんだよね。
「雪ちゃん、早く。」
雪ちゃんの顔を見上げて言った途端、雪ちゃんの顔が近いって思った時には雪ちゃんの熱い唇が触れてきて驚いてしまった。キスしてって言った訳じゃないよーって心の中で呟いてみるけど、少しだけ雪ちゃんの体温が気持ちいいかもしれない。ハッとしたように雪ちゃんが再び我に返って何かゴニョゴニョしてるけど、雪ちゃんて案外キスするの好きなのかなぁなんて。驚きすぎて今はこんなこと考えてるけど、後から思い出したらふにゃーってなる気がする。雪ちゃんがアワアワしながら電話番号を教えてくれて、LINEもしてるって聞いて少し意外だなぁなんて感じてしまう。
「雪ちゃんもLINEとかするんですか。」
「えっと、友達位ですけど…。」
二人とも何か驚きすぎちゃってるのか、少し会話が緊張して敬語になってるのは仕方ないよね。会話は何だかぎこちない感じだけど、やっとの事で念願の雪ちゃんの電話番号とLINEで繋がれたのは嬉しい。私が嬉しくてスマホを見下ろしてニマニマしたら、雪ちゃんが何故か目の前で再び脱力している。
「麻希子ー。雪ちゃーん、何やってるのー?」
下の階からママの暢気な声が私と雪ちゃんを呼んでいて、階段を駆け上がってくる衛の元気な足音が響いてくる。ニコニコの私と何だか疲労困憊の雪ちゃんを、衛がドアを開けて不思議そうに眺めた。
「まーちゃん、雪の大事なご用おわったー?!」
「衛…。」
「雪ね、昨日から熊さんみたいにウロウロしてて、全然駄目なんだよー、まーちゃん叱ってくれた?!」
衛の言葉に雪ちゃんが完全にノックアウトされたみたいになってるけど、何でなんだろう。
「ご、ごめん!」
慌てて凄い勢いでドアを閉じた雪ちゃんに、よくある乙女らしくキャーとか叫ぶ隙もなかった私。まあ後、首と腕を通したパーカーをただ下ろすだけではあったんだけど。それにしても、雪ちゃんが普段見たことのない凄い勢いで、家に来た理由がちっとも想像できない。半分唖然としながらだけど、そんな事を考えながら着替えを終えてドアを開けて恐る恐る廊下を覗く。戸惑い半分と後悔半分っていう感じの顔をした雪ちゃんが、私の顔を申し訳なさそうに見つめてごめんなさいともう一度呟く。せめてノックの返事を聞いてからドア開けてねと私は、念を押してから雪ちゃんを部屋の中に招き入れる。
「で、雪ちゃん、こんな朝早くどうしたの?」
私が不思議そうに声をかけると、雪ちゃんがハッと我に返ったみたいに顔色を変えた。何故か険しい顔で私の前に正座している雪ちゃんに、つられて正座で向かい合ってしまう私。雪ちゃんはとっても真剣な顔で私の顔を見つめて、言いにくそうに口を開いた。
「麻希ちゃん、信哉と電話番号交換したって本当ですか?」
え?電話番号って、昨日の唐突な鳥飼さんの行動のこと?って私がキョトンとしている。雪ちゃんはとっても真剣な顔で同じことを、もう一回繰り返した。
「うん。したよ、前に雪ちゃんと電話できていいなあって言ったら、何でか分かんないけど教えてくれたの。」
今度は雪ちゃんがえっ?と言うから、だって知らないんだもんと私が言うと唖然とした雪ちゃんが私の顔を穴が開くほど見つめる。
「し、知らないんだっけ?」
「うん、知らないの。」
あれ?雪ちゃんがほおけてる。でも、確かについ最近まで知らないってことに私も気がついてなかったんだもん。雪ちゃんだって知らないこと自体、気がついてなくても仕方がない。
「あ、でも、叔母さんに聞いたら、分かるよね?」
「でも、雪ちゃんから聞かないとかけていいか分かんないと思ったから我慢したの。」
無関心な訳じゃなくて、雪ちゃんから聞かないとかけたくなってかけていいのか分かんないしメールも出来ないと思った。そう理由を話したら、雪ちゃんが何でかその場で脱力している。
「あいつ…今度逢ったら絶対蹴ってやる。」
何か今凄く不穏なこと言わなかった?ブラック雪ちゃんがチラッと顔を出した気がするけど、ここは気にしないでおいていいのかな。雪ちゃんが脱力しながら呟いてるのは後にして、ここぞとばかりに私はイソイソとスマホを取り出した。
「お電話番号聞いてもいいですか?」
「は、はい。」
ちょっと緊張しつつ丁寧にお伺いをたててみると、雪ちゃんもイソイソとスマホを取り出してくれて思わず満面の微笑みが浮かんでしまう。雪ちゃんは私の顔を真っ直ぐ見たなって思った瞬間、何でか再びボーッとしてしまったみたい。動きの止まった雪ちゃんに私は早く早くと急かすみたいに、スマホを向ける。同じ会社だから赤外線で大丈夫な筈なんだけど、雪ちゃんがまだフリーズしたままなんだよね。
「雪ちゃん、早く。」
雪ちゃんの顔を見上げて言った途端、雪ちゃんの顔が近いって思った時には雪ちゃんの熱い唇が触れてきて驚いてしまった。キスしてって言った訳じゃないよーって心の中で呟いてみるけど、少しだけ雪ちゃんの体温が気持ちいいかもしれない。ハッとしたように雪ちゃんが再び我に返って何かゴニョゴニョしてるけど、雪ちゃんて案外キスするの好きなのかなぁなんて。驚きすぎて今はこんなこと考えてるけど、後から思い出したらふにゃーってなる気がする。雪ちゃんがアワアワしながら電話番号を教えてくれて、LINEもしてるって聞いて少し意外だなぁなんて感じてしまう。
「雪ちゃんもLINEとかするんですか。」
「えっと、友達位ですけど…。」
二人とも何か驚きすぎちゃってるのか、少し会話が緊張して敬語になってるのは仕方ないよね。会話は何だかぎこちない感じだけど、やっとの事で念願の雪ちゃんの電話番号とLINEで繋がれたのは嬉しい。私が嬉しくてスマホを見下ろしてニマニマしたら、雪ちゃんが何故か目の前で再び脱力している。
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下の階からママの暢気な声が私と雪ちゃんを呼んでいて、階段を駆け上がってくる衛の元気な足音が響いてくる。ニコニコの私と何だか疲労困憊の雪ちゃんを、衛がドアを開けて不思議そうに眺めた。
「まーちゃん、雪の大事なご用おわったー?!」
「衛…。」
「雪ね、昨日から熊さんみたいにウロウロしてて、全然駄目なんだよー、まーちゃん叱ってくれた?!」
衛の言葉に雪ちゃんが完全にノックアウトされたみたいになってるけど、何でなんだろう。
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