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10月

163.ナナカマド

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誰もが慎重にじっくり考えているような気配をもったままの水曜日。私と一緒にいれば安心って言うようなものがあったら、少しは気が楽なのかもしれないけど誰もが何処と無く不安な気持ちだ。浦野君は黙りこんでクラスの誰とも話をしないし、まるでクラス中がお通夜みたいに静まり返っている。木村君の話をしてはいけないみたいに、皆が用心して話をしていて奇妙な無言が生まれてしまう。
昨日の夜にLINEで木村君が最後に警察に電話をしていたらしいって話が回ってきて、警察に止められたのに三浦のお化け屋敷に入ったんじゃないかって真しやかに噂が流れてくる。こんな状況でお化け屋敷なんか、文化祭でやってしまっていいんだろうか。非常識って言われればそうなのかもって皆が、心の何処かで考えてる。智美君は昨日はあんなに元気だったけど、今日はお休みで早紀ちゃんに聞いたら微熱だって言う。智美君の微熱って正直嘘っぽいけど、連絡がとれているんなら安心だ。あと10日しかない文化祭までの期間に、私は土志田センセのいる生徒指導室に顔を出した。

「センセ。」

ノックして声をかけるとセンセは少し目を丸くしながら、入ってこいと促す。センセの顔色も心なしか何時もほど元気が良さそうでもないのは、夜回りとかして寝不足なのかもしれない。どんなにセンセが隙もなく怠りない心構えでいても、事情が掴めない行方不明には対処しようがないんじゃないかな。

「どうした?宮井。」
「木村君のこと、あるから、文化祭のお化け屋敷中止した方がいいかな?皆に相談した方がいいのかなって。」

私の言葉にセンセが少し苦い微笑みを浮かべて、まぁ座れと促される。センセは何時もみたいに麦茶を注いで、私の前にコップを置きながら自分も一口口に含んだ。

「センセはどう思う?」
「難しいとこだな。代案を準備するには時間がないだろ?」

参加しないってつもりなら可能だけどなとセンセは呟く。木村君の行方がハッキリしないままお化け屋敷をしてもいいとは考えてはいないみたいだけど、だからと言ってこのままやってもいいとは考えていない。そんな感じのセンセの様子に私も麦茶を一口飲んで、そのお茶に映りこんだセンセの顔を眺める。

「木村君、全然行方不明なの?」

躊躇いがちに問いかけると、センセは腕を組んで珍しく考え込んだ。そして遠くをみるようなセンセの視線は、何処か空を見つめていた智美君に似ている気がする。何かを知っていてあえて口にしないでいるような感覚も、智美君や雪ちゃんに似ているのはどうしてだろう。大人だから子供に聞かせられないって事なのかなと私は戸惑いながらセンセを見る。智美君は大人じゃないけど、何か一杯違うことを考えててそれを言わない感じだ。雪ちゃんやセンセは大人だからって、知ってる事を話さないだけなのかもしれない。

「センセ、言えない事なら言わなくてもいいよ。」

思わず口にした言葉に、センセは驚いたように私に視線を向けた。そうして目を丸くしていたセンセは思い出したように、私に視線を向けたまま口を開いた。

「まあ相談はあと何日か待ってろ。」

その方が賢明なのかもしれないと思わせるセンセの口ぶりに私は素直に頷く。その後教室に戻って孝君と早紀ちゃんと香苗には、自分がセンセに相談に行った事を正直に話した。そうしたら孝君と早紀ちゃんも同じような相談をして、センセから同じような答えを返されたみたいだ。それを私達から聞いた香苗が何故か安心したみたいに、じゃこのまま準備していいってことだよと言う。

「なんで、そうなる?須藤。」
「だって土志田がそう言ったんでしょ?後何日か待てって。」

凄く当然みたいに香苗が自信をもって言うのに、私達は意味か通じず首を傾げる。後何日か待つとしてもお化け屋敷の話は別問題のような気がするのに、香苗は土志田が言うならきっと大丈夫なんだよと能天気に言う。そんなの分かんないって孝君が食い下がっても、香苗は全然気にした風でもなく口を開く。

「土志田なら何とかするよ、きっと。」

自信満々で言う香苗に、私達は意味もわからず顔を見合わせてしまう。



※※※



そうして、香苗の根拠のない自信満々の発言はその夜に本当の事になった。夜中過ぎに一斉にLINEが来て寝ぼけ眼を擦りながら見ると、木村君が見つかったっていう連絡。詳しい事は分からないけど、木村君はやっぱり三浦のお化け屋敷にいたらしい。警察の人達も何度か探した筈なんだけど、見つけたのは土志田先生と先生の友達らしいって聞いた。多分鳥飼さんのような気がしないでもないけど、三浦のお化け屋敷の地下室にいた木村君は足の骨が折れてて少し衰弱してるけど命に別状はないらしい。安堵に思わず涙か出て香苗に思わず電話したら、香苗がほら言ったでしょ?って当然みたいに笑う。センセどうやって見つけたのか絶対明日教えて貰わなきゃって香苗が言うから、私も聞きたいって思わず声をあげてしまった。
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