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12月

228.ノースポール

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12月24日 金曜日
冬の足音が聞こえてきそうな冷えた空気の朝。リビングの窓からは快晴の空が見える。残念なからホワイトクリスマスとはいかなそうな、高潔過ぎる程清々しく清みきった空気と青空だ。サンタさんも日頃の行いがいいからなぁ、こんな天気の夜空なら移動しやすそう。雪ちゃんは午後から来るって言うし、衛は朝から来てて冬休みのプリントを黙々と書き込んでる。あまりにも凄い勢いで進んでるんだけど、その勢いで書いてたら今日中で終わっちゃいそうに見えるんだけど。あ、もしかしたら衛ってば、そのつもり?まあ、冬休み期間短いし仕方がないか。先に終わらせておいた方が後から慌ててやるよりは、誠実ってものかも。
私の方は今年の冬休みは色々なことがあったせいで、少し冬休み期間が短くなってるんだ。本当は衛と同じで20日からだったし、終わるのも10日過ぎくらいだったんだけど。勿論学校が悪いわけでは全然ないけど、正直なところ気持ちとしては少し短くなることには残念。とは言うけど、お陰で少し宿題も減ったりしてて、トントンって感じなのかな。
クリスマスケーキのためのスポンジケーキを焼きながら、キッチンの奥でママが黙々と料理を量産している。その姿を眺めていると、智美君は今どうしているのかなぁって考える。

ヤクザさんならクリスマスくらいやりそうだけど、もし宗教だとクリスマスはもしかしたらやらないかなぁ。

今から誘ったら家に来たりするかな?試しに電話してみようか。でも、今は礼慈さんのことがあるから、呼び出しても無理なんだろうか。オーブンの動いてる間にLINEしてみたけど、直ぐにはやっぱり反応はなくて。そりゃそうだよね、このままになるのかなっても考えもする。
昔みたいに友達を呼んで皆でクリスマス会って言うのもいいなって思うけど、流石に今日の今日じゃ無理なところもありそう。って考えてたら、当の智美君から電話がかかってきた。この間みたいに何回もかけられる位なら、その前にさっさとかけてしまおう的な雰囲気なのがちょっとおかしい。呆れ声半分の智美君だけど、この間よりは少し元気そう。

『懲りないって言うか……。』
「言うと思ったぁ。」
『思ってるならするなよ。結構質が悪いな、麻希。』

メンタル調整中って送っといたろ?って言う智美君に、皆も少し安心したみたいだよって教えておく。でも、顔見せないと皆納得しないと思うよとも。そう言ったら改めて智美君は、驚いた様子だ。友達の心配はそんな一言じゃ落ち着かないんだよって言ったら、納得したのかそっかって呟く。本当は皆2学期のうちに顔を見たがってたんだから、これ位は言わせてもらわないと。智美君は暫く考えてたみたいだけど、気を取り直したように口を開く。

『で、今日はなんの連絡?』
「えーと、クリスマスですね。」
『まだ、イブにもなってないけどね。』
「え?そうなの?」
『イブは日没から、翌日の日没までがクリスマス。』

相変わらずそういう部分の知識は普通じゃない。

「兎も角、家ではイブにご馳走なんだよ。」
『へぇ?……で、それと連絡の関係は?』
「もしかしたらこれを聞いたら気が変わって、家にケーキくらいなら食べに来るかなぁって。」

その言葉に一瞬黙った智美君がケーキって言葉に揺れたのは、もうわかってる。智美君が甘いもの大好きなのはもう皆にもバレてて連絡がついたら、宮井のケーキで釣ろうって皆が話してることは内緒にしておかないと。ふうと溜め息をつきながら、また今度と告げた智美君だけど、この答えは予想通りだった私は内緒話みたいに話しかけた。

「今度ケーキ焼くね、礼慈さんと二人で食べるれるように。味は何がいい?」
『……抹茶。』
「抹茶かぁムースとかの方がいいかなぁ。」
『チーズケーキがいい。』

ボソボソっと答える智美君。分かった、抹茶のチーズケーキねと答えると、焼くときは教えてという。なんで?っていったら諦めたような口調で車で迎え出すからと呟く。あはは、学校が始まってからってつもりじゃないんだって言ったら、少し拗ねた気配。

「でもさ、それって、智美君のお家行ってもいいってこと?」
『特別ね。あんまり教えられないから、秘密にしてくれるなら。』
「うん、いいよ。今回は特別ね。」

ホッとしたような気配の智美君に、少しだけど私は安心する。こんな風に話せるようになってきたんなら、少しだけど礼慈さんも智美君も落ち着いてきてるのかな。それに、今まで内緒にしてたお家に来てもいいかなって考えたんなら、それも少し今までと違うことかもしれない。まあ驚くだろうけどねと呟く智美君に、孝君や早紀ちゃんの大豪邸みてるから大抵のことじゃ驚かないよって言うと智美君は小さな声で笑う。

『孝や早紀の家かぁ、皆の家も知ってるの?』
「友達のは普通大概知ってるよ。遊びに行ったり来たりするから。」
『そっか。』

ああ、何だろう。この会話をしていて、凄く今私悲しく感じてる。ねぇ普通に過ごしてたら、友達の家で遊んだりお泊まりしたりして大騒ぎしたり、皆で楽しいことするのって普通だよ。なのに、それを高校2年生の智美君が全く知らないのって、智美君の周りは一体彼をどうしていたんだろう。まるで檻にでも閉じ込めてたみたいな気がするのは何でだろう。しかも、智美君はその生活の事を何一つ忘れられないまま生きているんだ。

『何で泣いてんの?麻希。』
「話せて……安心した、智美君の毒舌ないと、楽しくないね。」
『毒舌って…、皆して何で僕の口が悪いみたいに言うかな…。』

正直なだけじゃないかって呟いた智美君は、それでも少し嬉しそうな声に聞こえていた。

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