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3月
314.ミツマタ
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3月20日 月曜日
麻希子が行方不明になっていたのは、実際には58時間ほど。
丸二日と10時間。
その間延々とで続けていた蛇口からの水が、全て二人のいる地下室に注ぎ込まれなかったのはかなりの幸運だったらしい。床板を伝い床下に滲み出た半分以上の水道水が、が三浦がやろうとしていた目論み通り地下室に全部入っていたら1日もすれば地下室は水槽に変わっていた。幸運だったのは水道の水の約7割以上が微かに開いていた板を伝い、土台を伝って地面に流れ出たのだ。もし完全に天井に当たる扉を開けたままだったら全て地下室に流れ込んだし、閉めていれば完全に水は入らない。建設の設計に詳しいわけでない三浦和希の珍しい盲点だったと言うところだ。
そうは言っても付け回していた遠坂喜一を狙っていただけで、巻き込まれてしまった麻希子はただただ不運としか言い様のない事態。遠坂の方は折れた骨がずれていて改めて手術を受けたが、今のところ命に別状は無さそうだという。そして三浦和希の行方は未だに不明。まあ捕まっていたら雪はただでは済ます気はなかったから、ある意味では三浦が捕まっていないのは三浦にとって幸運なのかもしれない。
しかも麻希子の件はニュースにすらならなかった。
三浦の件に関しては病院からの脱走のせいなのか、なにか理由があるのかマスコミにはまだ内密にするしかないのだと警察から言われている。発表すれば疲労困憊の上肺炎まで起こしている麻希子が更に巻き込まれると思えば、雪は内密でも構わないとは思う。ただ、正直に言えば、理由もなくこのまま内密にするのは、そう長い間は無理だろうと考えてもいる。
既に逃亡して何人か怪我をさせている風でもあるから、隠せば隠すほどサイコパスの逃亡を秘匿した警察の責任問題が問われる可能性は高い。しかも、殆どの世の中の人間はあの事件の後の三浦がどうなったかを知らないでいる訳で、今何処で何をしているか分からないのでは追求は必至だ。
こんな話を雪は何一つ麻希子にするつもりはないが、叔母も叔父も見つかったとは言え夜になるとまだ飛び起きたりする麻希子の様子に憔悴の色も強い。遠坂が殆どの状況を説明できたのが幸いして、麻希子に警察官がしつこく絡むことは無さそうなのはよしとして。それでも麻希子自身の心の問題は、雪にだってまだ分からない。
今回の件には外崎宏太の協力が大きかったのは事実で、実は外崎自身も三浦の情報を集めていた矢先だったのだと言う。遠坂喜一はその情報で三浦を探し歩いていて、それが三浦にとって鬱陶しかったのではないかと外崎は話していた。たかがそんな理由で麻希子までこんな目に遭わせたのを、宇野智雪と言う人間がそうそう許せるわけもない。
三浦和希
自分より四つ年下。
元三浦不動産の息子で、あの廃屋になった屋敷の元住人。事件当時は別な場所に一人で暮らしていた。それと信哉の知人・槙山忠志の幼馴染み。ただ、あの事件の概要はきっと外崎の方が詳しい筈だ。何しろ外崎はその事件の当事者だ。そう、雪は言葉に出すこともなくじっと考え込んでいた。
※※※
点滴の効果で熱は少しずつ下がり始めているけど、夜によく眠れないせいか、1日中トロトロと眠ってばかりいる気がする。実は病院のベットの上の時間の感覚はちょっと曖昧で、ここに入院してから何日なのかも実はよく分からないでいる。それに誰も何も聞かないし何があったのか調べたりもされてないけど、遠坂さんが殆ど一緒だったからかもしれないって気がついたのは少し熱が下がって頭が回るようになってからだ。
ママが骨折の手術したって聞いて会いに行ったら、遠坂さんは何にもしてませんよ、お嬢さんが色々助けてくれましたよって笑ってたらしい。私は何にもしてないし遠坂さんが居なかったらって思うし、警察の人って凄いなぁって思いながらその話を聞いたんだ。
「麻希子、林檎食べる?」
「んん、いい。」
そんな風に少し落ち着いてママに答えていた矢先、衛が会いに来たんだ。扉を開けた雪ちゃんがどうしてもって聞かなくてって呟いたのに顔を向けると、衛が病室の扉のとこで雪ちゃんの足に隠れて私を見ていた。私が気がついたのに衛は、目をウルウルさせてその場で大粒の涙を溢し始めてたんだ。
そうだよね、14日の夜に会えるかなって考えてたんだけど、日曜日から会ってなかったから1週間以上会ってない。意外な思いなんだけど、最近こまめに衛と会ってたからこんなに会わなかったんだって気がついたら凄く驚いてしまう。あれ?衛ちょっとおっきくなったんじゃない?なんかそんな風に見えちゃうのは、気のせいだろうか。
「衛。」
ベットの上で点滴のないほうの手で手招きすると、衛はボロボロ泣きながら駆け寄ってきて私にヒシッと抱きついた。雪ちゃんが慌てたみたいに駆け寄ってきて衛を諌めようとしたけど、私は大丈夫だからいいよって笑いながら衛の頭を撫でる。凄く心配かけちゃったんだよねって言うと、衛は声をあげて泣き出してしまう。いつの間にかママまで貰い泣きしてしまっているけど、私こんな風に泣く衛って初めて見た気がしていた。
麻希子が行方不明になっていたのは、実際には58時間ほど。
丸二日と10時間。
その間延々とで続けていた蛇口からの水が、全て二人のいる地下室に注ぎ込まれなかったのはかなりの幸運だったらしい。床板を伝い床下に滲み出た半分以上の水道水が、が三浦がやろうとしていた目論み通り地下室に全部入っていたら1日もすれば地下室は水槽に変わっていた。幸運だったのは水道の水の約7割以上が微かに開いていた板を伝い、土台を伝って地面に流れ出たのだ。もし完全に天井に当たる扉を開けたままだったら全て地下室に流れ込んだし、閉めていれば完全に水は入らない。建設の設計に詳しいわけでない三浦和希の珍しい盲点だったと言うところだ。
そうは言っても付け回していた遠坂喜一を狙っていただけで、巻き込まれてしまった麻希子はただただ不運としか言い様のない事態。遠坂の方は折れた骨がずれていて改めて手術を受けたが、今のところ命に別状は無さそうだという。そして三浦和希の行方は未だに不明。まあ捕まっていたら雪はただでは済ます気はなかったから、ある意味では三浦が捕まっていないのは三浦にとって幸運なのかもしれない。
しかも麻希子の件はニュースにすらならなかった。
三浦の件に関しては病院からの脱走のせいなのか、なにか理由があるのかマスコミにはまだ内密にするしかないのだと警察から言われている。発表すれば疲労困憊の上肺炎まで起こしている麻希子が更に巻き込まれると思えば、雪は内密でも構わないとは思う。ただ、正直に言えば、理由もなくこのまま内密にするのは、そう長い間は無理だろうと考えてもいる。
既に逃亡して何人か怪我をさせている風でもあるから、隠せば隠すほどサイコパスの逃亡を秘匿した警察の責任問題が問われる可能性は高い。しかも、殆どの世の中の人間はあの事件の後の三浦がどうなったかを知らないでいる訳で、今何処で何をしているか分からないのでは追求は必至だ。
こんな話を雪は何一つ麻希子にするつもりはないが、叔母も叔父も見つかったとは言え夜になるとまだ飛び起きたりする麻希子の様子に憔悴の色も強い。遠坂が殆どの状況を説明できたのが幸いして、麻希子に警察官がしつこく絡むことは無さそうなのはよしとして。それでも麻希子自身の心の問題は、雪にだってまだ分からない。
今回の件には外崎宏太の協力が大きかったのは事実で、実は外崎自身も三浦の情報を集めていた矢先だったのだと言う。遠坂喜一はその情報で三浦を探し歩いていて、それが三浦にとって鬱陶しかったのではないかと外崎は話していた。たかがそんな理由で麻希子までこんな目に遭わせたのを、宇野智雪と言う人間がそうそう許せるわけもない。
三浦和希
自分より四つ年下。
元三浦不動産の息子で、あの廃屋になった屋敷の元住人。事件当時は別な場所に一人で暮らしていた。それと信哉の知人・槙山忠志の幼馴染み。ただ、あの事件の概要はきっと外崎の方が詳しい筈だ。何しろ外崎はその事件の当事者だ。そう、雪は言葉に出すこともなくじっと考え込んでいた。
※※※
点滴の効果で熱は少しずつ下がり始めているけど、夜によく眠れないせいか、1日中トロトロと眠ってばかりいる気がする。実は病院のベットの上の時間の感覚はちょっと曖昧で、ここに入院してから何日なのかも実はよく分からないでいる。それに誰も何も聞かないし何があったのか調べたりもされてないけど、遠坂さんが殆ど一緒だったからかもしれないって気がついたのは少し熱が下がって頭が回るようになってからだ。
ママが骨折の手術したって聞いて会いに行ったら、遠坂さんは何にもしてませんよ、お嬢さんが色々助けてくれましたよって笑ってたらしい。私は何にもしてないし遠坂さんが居なかったらって思うし、警察の人って凄いなぁって思いながらその話を聞いたんだ。
「麻希子、林檎食べる?」
「んん、いい。」
そんな風に少し落ち着いてママに答えていた矢先、衛が会いに来たんだ。扉を開けた雪ちゃんがどうしてもって聞かなくてって呟いたのに顔を向けると、衛が病室の扉のとこで雪ちゃんの足に隠れて私を見ていた。私が気がついたのに衛は、目をウルウルさせてその場で大粒の涙を溢し始めてたんだ。
そうだよね、14日の夜に会えるかなって考えてたんだけど、日曜日から会ってなかったから1週間以上会ってない。意外な思いなんだけど、最近こまめに衛と会ってたからこんなに会わなかったんだって気がついたら凄く驚いてしまう。あれ?衛ちょっとおっきくなったんじゃない?なんかそんな風に見えちゃうのは、気のせいだろうか。
「衛。」
ベットの上で点滴のないほうの手で手招きすると、衛はボロボロ泣きながら駆け寄ってきて私にヒシッと抱きついた。雪ちゃんが慌てたみたいに駆け寄ってきて衛を諌めようとしたけど、私は大丈夫だからいいよって笑いながら衛の頭を撫でる。凄く心配かけちゃったんだよねって言うと、衛は声をあげて泣き出してしまう。いつの間にかママまで貰い泣きしてしまっているけど、私こんな風に泣く衛って初めて見た気がしていた。
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