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二度目の6月
399.ベニバナ
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6月11日 日曜日
家に戻って雪ちゃんはパパとママと夜遅くまで話し合っていた。多分三浦って人がまた来たらって話なんだろうけど、正直なところまだ私には実感が湧かない。お化粧したり装いを変えたりすると全く別人みたいになる三浦っていう人、しかも私が見たのは女の人の格好と男の人の格好とで。顔を真っ正面からみてやっと気がつく位なんだもん、それを探す警察の人達も難しいんじゃないかな。そんなことをボンヤリ考えて窓の外を眺めてた私は、ギョッとして目を見開いた。
ど、どうしよう……
叫ぶ?でも、下手に声をあげるのは危ない?そうなの、家の前にいるのはどうみても三浦和希って人で、暢気な顔で私を見上げると何でかニッコリ微笑みかけたのだ。しかもシーって口の前に指を当ててから、おいでってしてるのに、私は呆気にとられる。お友だちじゃあるまいし、何で出てこいって言われてはいはいって出ていけるの。でも、今この部屋には衛が遊び疲れて寝てて、下には雪ちゃん達もいるからどうしよう。もう一度賑やかに微笑みかけられながらこいこいって手招かれて、私は青ざめながらスマホを手に立ち上がった。これって凄く駄目だよね?でも皆に危険が迫ってるのに、怯えて縮こまっていていいのかも分かんない。だから、恐る恐る音をたてないように、ドアを開けて距離を図りながら外に顔を出した。
「凄いな、怖くないの?」
可笑しそうに笑う三浦和希って人の言葉に、だって出てこなかったら家に押し入りますよねと言ったら平然とうんと言う。それにどう考えたってこの人は完全に私のこと覚えてて、しかも家まで知っているんだよね。ってことは引っ越しでもしないと、この人から逃げられない?
「この間の事謝っておこうと思って。」
「はい?!」
「あんたの彼氏悪いことしてないのに、頼まれたからって刺しちゃったろ?ごめんな。」
平然と言われてるけど、なんなの?何言ってるの?確かにこの人、誰かに頼まれたような話してたけど、ごめんなですむような話じゃないよね。話じゃないけど、この人全然悪気があるんだかないんだかも理解できない。叱責するにも下手な事を言って刺激もしたくないし。そんなわけでポカーンとしている私に、三浦という人はまるで友達みたいに楽しげに笑う。
「でも、もう約束は果たしたし、後は俺の好きにするからさ。」
「あ、あの?もう襲わない?」
「んー邪魔だったら考えるけど、あんた気に入ってるし。親父は死んだしさ?約束守っても価値がないだろ?」
邪魔しなかったら襲わない??全く意味が分かんないけど、邪魔しないのならもう私達の事襲わないの?雪ちゃんも、衛も?そう問いかけたら、悪いけどそっちの奴の顔は覚えてないんだよなと、三浦さんはいう。
「何で私だけ覚えてるんですか?」
「知り合いに似てるからかなぁ?」
何それ?なんかスッゴい嫌な偶然で、誰かに似てるから覚えてるってこと?でも雪ちゃん達の顔を覚えてないって本当の事?
「嘘つく必要ないだろ?自分でも覚えてらんないのには、困ってるんだよな。何人かしか覚えてられないしさ。あと覚えてんのは、亜希子に忠志に……あとあんた、名前しらないけど。」
呆気にとられるんだけど指折りで数えた人数すくなっ!って言ったら、おかしそうに三浦さんは笑っている。ええ?ちょっと待って邪魔しなきゃって邪魔ってなんの?!
「邪魔ってどんなことが邪魔なんですか?」
「かおるを探すのの邪魔。」
「かおる……さん?」
そう、と目の前で呑気にいうけど、この人は一体なんなんだろう。確かこの人は何人も人を殺してて、とんでもない殺人犯なんだよね?なんでこんなに気さくにここで私と話してるの?これって夢なの?しかもニコニコ笑いながら話すこの人がついこの間、雪ちゃんを刺して私達を刺そうとした人とは思えない。
「あの、かおるさんを探したら、死んじゃうんですか?」
思わず口に出た言葉に、三浦さんはそうだと平然と答える。なんで?好きな人なんだよね?なんで好きな人を探して、死ぬなんて考えてるんだろうか。それって間違いだと思う、幸せになる方法を見つけるべきじゃないのかなって私は思うんだけど。
「死んだりしない……方法はないんですか?」
私の言葉に目の前の三浦さんは驚いたように目を見開くと、ふっと柔らかい微笑みを浮かべて私のことを見る。
「あんた、やっぱり利津に似てる。そういうとこが、気に入ってんだよな。」
「りつさん?」
「幼馴染み、俺の初恋の人。」
何も迷いもなくそんな話をする三浦さんは、どうにもこの間までの人とは別人みたいだ。まるで気さくなお兄さんで、そうだ、槙山さんみたいに優しくて包容力があるような気分になる。それにしても初恋は叶わないっていうから、その人とは何もなかったのかな。そんなことを思うけど、一先ずごめんって謝ろうと思ってと平然としている三浦さんをどう考えたらいいのか分からない。
「麻希子?!誰と話してるの?」
背後からのドア越しの声に一瞬振り返って、また目の前に視線を戻したらつい一瞬前までいた筈の三浦さんの姿はかきけしていた。……一瞬で姿を消すってどういうこと?角を曲がった?それにしたってそんな素早く消えられたら、私も訳が分からない。ポカーンとしたまま夜の闇に立ち尽くした私は、歩み寄ってきた雪ちゃんに戸惑い顔で覗きこまれていた。
家に戻って雪ちゃんはパパとママと夜遅くまで話し合っていた。多分三浦って人がまた来たらって話なんだろうけど、正直なところまだ私には実感が湧かない。お化粧したり装いを変えたりすると全く別人みたいになる三浦っていう人、しかも私が見たのは女の人の格好と男の人の格好とで。顔を真っ正面からみてやっと気がつく位なんだもん、それを探す警察の人達も難しいんじゃないかな。そんなことをボンヤリ考えて窓の外を眺めてた私は、ギョッとして目を見開いた。
ど、どうしよう……
叫ぶ?でも、下手に声をあげるのは危ない?そうなの、家の前にいるのはどうみても三浦和希って人で、暢気な顔で私を見上げると何でかニッコリ微笑みかけたのだ。しかもシーって口の前に指を当ててから、おいでってしてるのに、私は呆気にとられる。お友だちじゃあるまいし、何で出てこいって言われてはいはいって出ていけるの。でも、今この部屋には衛が遊び疲れて寝てて、下には雪ちゃん達もいるからどうしよう。もう一度賑やかに微笑みかけられながらこいこいって手招かれて、私は青ざめながらスマホを手に立ち上がった。これって凄く駄目だよね?でも皆に危険が迫ってるのに、怯えて縮こまっていていいのかも分かんない。だから、恐る恐る音をたてないように、ドアを開けて距離を図りながら外に顔を出した。
「凄いな、怖くないの?」
可笑しそうに笑う三浦和希って人の言葉に、だって出てこなかったら家に押し入りますよねと言ったら平然とうんと言う。それにどう考えたってこの人は完全に私のこと覚えてて、しかも家まで知っているんだよね。ってことは引っ越しでもしないと、この人から逃げられない?
「この間の事謝っておこうと思って。」
「はい?!」
「あんたの彼氏悪いことしてないのに、頼まれたからって刺しちゃったろ?ごめんな。」
平然と言われてるけど、なんなの?何言ってるの?確かにこの人、誰かに頼まれたような話してたけど、ごめんなですむような話じゃないよね。話じゃないけど、この人全然悪気があるんだかないんだかも理解できない。叱責するにも下手な事を言って刺激もしたくないし。そんなわけでポカーンとしている私に、三浦という人はまるで友達みたいに楽しげに笑う。
「でも、もう約束は果たしたし、後は俺の好きにするからさ。」
「あ、あの?もう襲わない?」
「んー邪魔だったら考えるけど、あんた気に入ってるし。親父は死んだしさ?約束守っても価値がないだろ?」
邪魔しなかったら襲わない??全く意味が分かんないけど、邪魔しないのならもう私達の事襲わないの?雪ちゃんも、衛も?そう問いかけたら、悪いけどそっちの奴の顔は覚えてないんだよなと、三浦さんはいう。
「何で私だけ覚えてるんですか?」
「知り合いに似てるからかなぁ?」
何それ?なんかスッゴい嫌な偶然で、誰かに似てるから覚えてるってこと?でも雪ちゃん達の顔を覚えてないって本当の事?
「嘘つく必要ないだろ?自分でも覚えてらんないのには、困ってるんだよな。何人かしか覚えてられないしさ。あと覚えてんのは、亜希子に忠志に……あとあんた、名前しらないけど。」
呆気にとられるんだけど指折りで数えた人数すくなっ!って言ったら、おかしそうに三浦さんは笑っている。ええ?ちょっと待って邪魔しなきゃって邪魔ってなんの?!
「邪魔ってどんなことが邪魔なんですか?」
「かおるを探すのの邪魔。」
「かおる……さん?」
そう、と目の前で呑気にいうけど、この人は一体なんなんだろう。確かこの人は何人も人を殺してて、とんでもない殺人犯なんだよね?なんでこんなに気さくにここで私と話してるの?これって夢なの?しかもニコニコ笑いながら話すこの人がついこの間、雪ちゃんを刺して私達を刺そうとした人とは思えない。
「あの、かおるさんを探したら、死んじゃうんですか?」
思わず口に出た言葉に、三浦さんはそうだと平然と答える。なんで?好きな人なんだよね?なんで好きな人を探して、死ぬなんて考えてるんだろうか。それって間違いだと思う、幸せになる方法を見つけるべきじゃないのかなって私は思うんだけど。
「死んだりしない……方法はないんですか?」
私の言葉に目の前の三浦さんは驚いたように目を見開くと、ふっと柔らかい微笑みを浮かべて私のことを見る。
「あんた、やっぱり利津に似てる。そういうとこが、気に入ってんだよな。」
「りつさん?」
「幼馴染み、俺の初恋の人。」
何も迷いもなくそんな話をする三浦さんは、どうにもこの間までの人とは別人みたいだ。まるで気さくなお兄さんで、そうだ、槙山さんみたいに優しくて包容力があるような気分になる。それにしても初恋は叶わないっていうから、その人とは何もなかったのかな。そんなことを思うけど、一先ずごめんって謝ろうと思ってと平然としている三浦さんをどう考えたらいいのか分からない。
「麻希子?!誰と話してるの?」
背後からのドア越しの声に一瞬振り返って、また目の前に視線を戻したらつい一瞬前までいた筈の三浦さんの姿はかきけしていた。……一瞬で姿を消すってどういうこと?角を曲がった?それにしたってそんな素早く消えられたら、私も訳が分からない。ポカーンとしたまま夜の闇に立ち尽くした私は、歩み寄ってきた雪ちゃんに戸惑い顔で覗きこまれていた。
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