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453.寒椿
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最近になって産まれてから初めての高層マンションというものに住み始めて、産まれて初めての社会生活というものを送り始めている。勿論自分が社会と隔絶されて過ごしてきてしまった十年以上の年月を今更どうにか出来るわけではないけれど、隔離されてきた全てから解放されて何とか自分らしく生きるなんて道を模索してみないとならない立場に変わっていた。
「礼慈ができることかー。」
そう目の前で考え込んだのは言うまでもなく香坂智美で、智美の方は高校二年から学校に通うことで大分社会性も以前よりは身に付けていて現在は大学進学を目指す最中。同時に以前自分が関わっていた組織の後継の維持と、それ以外にも新たな会社の起業なんてものも画策している様子だけれど、何分智美は元々の頭の良さも合間って問題なくそれはこなせそうな気がする。一緒に暮らしている敷島湊は元は普通の家庭で暮らしていたし高卒と学歴もあるわけで、大検を目指して家事と共に現在の生活ではなくてはならない存在。それに比較するとある程度の家事は可能でも、色盲もある友村礼慈としては現実的に学歴もないし出来ることはかなり範囲が狭い。接客業にしても何にしても履歴書を書くと結局は自分が異端なのをバラすようなもので、それに関して自分でも手の打ちようがないのだ。
「学歴ねぇ……まぁ、確かにそうなんだよなぁ。」
というのも友村礼慈は様々な事情から殆んど小学校にも通えていないのだ。勿論読み書きや様々な勉強はしてきたからそこら辺には支障がないが、これで社会で勤めるとなるとどこにも雇って貰えないというのも事実なのだった。起業したらそこの社員になればいいと智美はあっけらかんというが、それでは何も出来ない足手まといのような気もして礼慈としては居心地の悪い気分になる。そんな気分のまま過ごすよりは何か自分の出来ることと考えるのも分からなくはない。
※※※
「で、相談な訳ですか?」
「礼慈、糞真面目だもんなー。智美がいいってんなら、俺ならいいかなって思うけど。」
と、口々に呑気な答えを返してきたのは、友人でもある宇佐川義人と槇山忠志で、ここは隣の棟のマンショの土志田悌順と義人の自宅だ。実際には礼慈は余り今まで人との交流が少ないので友人と呼べる人間は多くないし、その中でも年が近いの方の友人がこの二人だったりする。何しろ義人は看護師として働いているし忠志は最近になってバンド活動に力が入りつつあって、礼慈としては立派に社会生活を営みつつある年上の友人なのだ。勿論残りの友人二人である鳥飼信哉と悌順だって文筆業に教師と職業としては、立派な社会人なのは言うまでもない。
「でも学歴ですか。公立校なら義務教育学力があればなんとか卒業扱いにして貰えないですかね?」
「義務教育って留年あんの?義人。」
因みに認定こども園を含む幼稚園、義務教育期間の9年間を学修する小学校、中学校など、前期中等教育以下の学校では、実務上は下の学年を履修していなくても、所属できる最高学年(いわゆる年齢相当学年)に編入学できる。こういった、高年齢児童生徒の飛び級ができることが、学齢期(15歳以下)の学校に共通する特徴なのが日本の学校制度だ。つまり学力証明可能なら、年齢相応の学年に編入学できるのだ。しかし、高等学校、高等専門学校、大学など後期中等教育以降の学校では、年齢が高くても以前に同等学校などで履修したことがない限り1年生から履修する必要がある。日本の学校教育法では、諸学校の在学年齢や卒業年齢には上限は設けていないが、高等学校以上の課程において、留年可能回数の上限や在学可能期限の上限を設けている学校もある。日本では前期中等教育までは、就学猶予・原級留置・過年度進学などが数少ないため、外見上上限があるように見えるだけである。しかしながら、大多数の学齢児童が6歳から就学し、留年することなく15歳で中学校を卒業するということが常識の様になっており、学齢を過ぎた人の在学は通常の小中学校や関係機関などの現場ではほとんど想定されていない。
「病気何かの正当な理由があればなんとか出来る筈ですよ?」
「なるほど…………。」
申し分のない愛らしさを発揮していた子供の頃の問題に、こうして取り組む羽目になって礼慈としても自分に何が出来るか戸惑いもしている。何しろ自分が改めて社会で生活して何か出来るのかなんて、実際のところ一度も考えもしてこなかったのだ。
「好きなこととか、やりたいことをやればいいって、礼慈がやりたいことでさ。」
「…………好きなことと言われましても…………。」
そうなのだ、保守的で閉鎖的な生活をするのが今迄の当然だった礼慈には、周囲の人のように趣味だと言える趣味が何一つ存在しない。最近になってやっと時間が空いた時には何をするべきなのかと困惑する自分に気がついたくらいで、何もない時にすることのない自分について染々考えるようになったくらいで、結局何もない時間の過ごし方が分からないのだ。やっとのことで読書なんて試したものの、試そうにも書籍を選ぶのが出来なくて、智美の持っている『鳥飼澪』の作品を少しずつ読み始めたところなのだった。
「えええ!まじか!そんなの損だろ!?映画みたり買い物したりとか、もっと自由に遊ぼうって!」
「遊ぶと言われましても…………遊びの方法が思い浮かばないんですけれど……。」
その言葉に忠志は頭を抱えてマジかー!!と叫んでいるのは、礼慈の相棒みたいな智美の方は街で食い歩きするとか皆と遊び歩くとか、友達と青春を謳歌しているのを忠志も義人もしっているからだ。方や礼慈は余りこれまで経験がないからと色々なことに欲求を示すことがなかったから、忠志達もすっかり何ヵ月もこの生活でいたのを見逃してしまっていた。これでは以前の礼慈の閉鎖的な生活を強いてきた老僧となにもかわらないし、そんな生活は友人としても容認できない。
「ちょっとダメだろ!!そんな二十歳!」
「駄目って言われても…………。それに二十一なんですけど。」
「糞ジジイ達みたいに枯れてんじゃ駄目ですよ!これからもっと誘いますからね!」
「いや、あの…………。」
予想外に両側から口々に宣言されて、何故かこれからはもっと遊びに誘うとまで言われて。それをどう考えたらいいのか礼慈には理解が出来ないでいるのだけれど、生きていく実感を感じるようになれるような気がしていた。
「礼慈ができることかー。」
そう目の前で考え込んだのは言うまでもなく香坂智美で、智美の方は高校二年から学校に通うことで大分社会性も以前よりは身に付けていて現在は大学進学を目指す最中。同時に以前自分が関わっていた組織の後継の維持と、それ以外にも新たな会社の起業なんてものも画策している様子だけれど、何分智美は元々の頭の良さも合間って問題なくそれはこなせそうな気がする。一緒に暮らしている敷島湊は元は普通の家庭で暮らしていたし高卒と学歴もあるわけで、大検を目指して家事と共に現在の生活ではなくてはならない存在。それに比較するとある程度の家事は可能でも、色盲もある友村礼慈としては現実的に学歴もないし出来ることはかなり範囲が狭い。接客業にしても何にしても履歴書を書くと結局は自分が異端なのをバラすようなもので、それに関して自分でも手の打ちようがないのだ。
「学歴ねぇ……まぁ、確かにそうなんだよなぁ。」
というのも友村礼慈は様々な事情から殆んど小学校にも通えていないのだ。勿論読み書きや様々な勉強はしてきたからそこら辺には支障がないが、これで社会で勤めるとなるとどこにも雇って貰えないというのも事実なのだった。起業したらそこの社員になればいいと智美はあっけらかんというが、それでは何も出来ない足手まといのような気もして礼慈としては居心地の悪い気分になる。そんな気分のまま過ごすよりは何か自分の出来ることと考えるのも分からなくはない。
※※※
「で、相談な訳ですか?」
「礼慈、糞真面目だもんなー。智美がいいってんなら、俺ならいいかなって思うけど。」
と、口々に呑気な答えを返してきたのは、友人でもある宇佐川義人と槇山忠志で、ここは隣の棟のマンショの土志田悌順と義人の自宅だ。実際には礼慈は余り今まで人との交流が少ないので友人と呼べる人間は多くないし、その中でも年が近いの方の友人がこの二人だったりする。何しろ義人は看護師として働いているし忠志は最近になってバンド活動に力が入りつつあって、礼慈としては立派に社会生活を営みつつある年上の友人なのだ。勿論残りの友人二人である鳥飼信哉と悌順だって文筆業に教師と職業としては、立派な社会人なのは言うまでもない。
「でも学歴ですか。公立校なら義務教育学力があればなんとか卒業扱いにして貰えないですかね?」
「義務教育って留年あんの?義人。」
因みに認定こども園を含む幼稚園、義務教育期間の9年間を学修する小学校、中学校など、前期中等教育以下の学校では、実務上は下の学年を履修していなくても、所属できる最高学年(いわゆる年齢相当学年)に編入学できる。こういった、高年齢児童生徒の飛び級ができることが、学齢期(15歳以下)の学校に共通する特徴なのが日本の学校制度だ。つまり学力証明可能なら、年齢相応の学年に編入学できるのだ。しかし、高等学校、高等専門学校、大学など後期中等教育以降の学校では、年齢が高くても以前に同等学校などで履修したことがない限り1年生から履修する必要がある。日本の学校教育法では、諸学校の在学年齢や卒業年齢には上限は設けていないが、高等学校以上の課程において、留年可能回数の上限や在学可能期限の上限を設けている学校もある。日本では前期中等教育までは、就学猶予・原級留置・過年度進学などが数少ないため、外見上上限があるように見えるだけである。しかしながら、大多数の学齢児童が6歳から就学し、留年することなく15歳で中学校を卒業するということが常識の様になっており、学齢を過ぎた人の在学は通常の小中学校や関係機関などの現場ではほとんど想定されていない。
「病気何かの正当な理由があればなんとか出来る筈ですよ?」
「なるほど…………。」
申し分のない愛らしさを発揮していた子供の頃の問題に、こうして取り組む羽目になって礼慈としても自分に何が出来るか戸惑いもしている。何しろ自分が改めて社会で生活して何か出来るのかなんて、実際のところ一度も考えもしてこなかったのだ。
「好きなこととか、やりたいことをやればいいって、礼慈がやりたいことでさ。」
「…………好きなことと言われましても…………。」
そうなのだ、保守的で閉鎖的な生活をするのが今迄の当然だった礼慈には、周囲の人のように趣味だと言える趣味が何一つ存在しない。最近になってやっと時間が空いた時には何をするべきなのかと困惑する自分に気がついたくらいで、何もない時にすることのない自分について染々考えるようになったくらいで、結局何もない時間の過ごし方が分からないのだ。やっとのことで読書なんて試したものの、試そうにも書籍を選ぶのが出来なくて、智美の持っている『鳥飼澪』の作品を少しずつ読み始めたところなのだった。
「えええ!まじか!そんなの損だろ!?映画みたり買い物したりとか、もっと自由に遊ぼうって!」
「遊ぶと言われましても…………遊びの方法が思い浮かばないんですけれど……。」
その言葉に忠志は頭を抱えてマジかー!!と叫んでいるのは、礼慈の相棒みたいな智美の方は街で食い歩きするとか皆と遊び歩くとか、友達と青春を謳歌しているのを忠志も義人もしっているからだ。方や礼慈は余りこれまで経験がないからと色々なことに欲求を示すことがなかったから、忠志達もすっかり何ヵ月もこの生活でいたのを見逃してしまっていた。これでは以前の礼慈の閉鎖的な生活を強いてきた老僧となにもかわらないし、そんな生活は友人としても容認できない。
「ちょっとダメだろ!!そんな二十歳!」
「駄目って言われても…………。それに二十一なんですけど。」
「糞ジジイ達みたいに枯れてんじゃ駄目ですよ!これからもっと誘いますからね!」
「いや、あの…………。」
予想外に両側から口々に宣言されて、何故かこれからはもっと遊びに誘うとまで言われて。それをどう考えたらいいのか礼慈には理解が出来ないでいるのだけれど、生きていく実感を感じるようになれるような気がしていた。
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