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5月
13.ドリアンドラ
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ぐずついた私の気持ちそのままのように見える低く重い雲が垂れ込める暗い空の金曜日の朝。雨が降りそうだけどいまのところは曇天なだけだが、私の方が今にも突っ伏して泣き出しそう。
何故なら、私の気持ちはとんでもなく複雑な気分。
あり得ないと思うけど、もしかしてここ数日が自分の気のせいだったのなんて思わずにはいられない。
何でかって?
そりゃ、目の前を見たらそう思うでしょ。
私の前には今までの数日がなかった事の様に、朝から満面のニッコリ笑顔で挨拶して、当たり前のように私の前の席に座る香苗の姿。余りの状況の変化に香苗の新しい華やぎ仲間も目を丸くしている。でも、話し方を聞けば分かる。自分が正義、私が可哀想になったから香苗が優しくしてあげると言ってる様なものなのだ。
くそ、香苗の奴、高校2年にして新しい方式を会得したのか。こう来るとは私にも分からなかった。
ね、ほらカナ優しいでしょといわんばかりのその行動が、もう理解の範疇を遥かに飛び越えて私にじわじわダメージを与えてくる。
「ねぇ、マキ~ぃ。」
くそー、香苗の猫なで声が癇に障る。
何ナノ?この変化。
きっと他の子が香苗の連続自慢話に飽きたってこともあるんだろうけど、もしかしたら昨日の本を拾ってあげた話が香苗の中では美談に変換されでもしてるのかもしれない。本気で落ちてた本を拾ってあげたって信じてるとしか、段々思えなくなってきた。それにしても昨日までの態度と今日のこの状況は、まともに考えてもおかし過ぎる。同じ事を感じているのだろう、あの子信じられないといたげな視線が四方から刺さるのにも香苗は全くお構いなしだ。ある意味凄い。ここまで来ると、空気を読めないのも天才なのかもしれない。
でも私はもう、あんたには付き合ってらんないよ。
香苗の態度の豹変にも、私は何だか今までにない気持ちで自分の本に眼を落とした。しつこい佳苗の猫なで声に返事も一言だって返事をしたくない。本当は今すぐ振り切って志賀さんのところに行きたい。視界の志賀さんも香苗の変わりっぷりに、驚いているのだろう普段は動じない読書の手が完全に止まっている。
ああ今日は志賀さんとの読書トークは我慢だ、香苗を連れて志賀さんの傍に行ったら彼女にまで迷惑をかけてしまうに違いない。必死に読書に勤しむのだ!
誰かを想うと言う事は時に炎にも似た揺ぎ無い意思を生じて…
『落陽の刻』は短編集だけど、大部分が同じ高校を舞台にしている。高校生の主人公と幼馴染みの交流や、主人公と母親の物語もある。主人公は母子家庭で母親の友人の青年の物語もって、高校生の主人公を別な視点で表現していたりもする。母子家庭であることで周囲から差別のような扱いをされる主人公を幼馴染みや親友が支えてくれて、新しい未知を信じようとする主人公の変化の流れが自分達の年頃の感じかたそのままで本当に私がその立場になったみたいにドキドキしながら最初は読み進めていた。読み直しながら最初は表現が少し硬いといった香坂君の事を考える。主人公の凛とした佇まいは香坂君に良く似ていると私は思う。自分と似ているから、香坂君も好きなんじゃないかななんて考えてみたりもする。
色々考えながら香坂君の背中を眺める。
今の私の混乱して張りつめている気分を緩めてくれるような綺麗な微笑みが心に浮かぶ。
長い睫毛に紅茶色の瞳。
まるでミルクみたいに綺麗な白い肌。
同級生とは一線を引いたような姿は、やっぱりこの小説に出てくる主人公の姿に似ている感じ。
杖をついていても凛と背筋の延びた綺麗な姿に、穏やかにそれでも高くもなく低くもない、きちんと通る涼やかな声。足が悪いとか病弱だとかクラスメイトから差別されても怯みもしないで真っ直ぐに前を見る強い瞳。
「ねぇ~マキ~~???」
あァ、どうして自分の想像くらい好きなように存分に耽っていられないのかなぁ?
そう言えばあの時確かに香坂君は「宮井さん」って私の事を呼んでくれた。確かに彼から呼ばれた。私の事、ちゃんと覚えていてくれたんだ。
煩わしい事はおいておいて自分の心が少しでも明るくなる事を考えたい。香苗の甘え声を意識から押し退けるようにして私は、その綺麗な後姿をボンヤリと眺める。
同じ作家さんが好きかぁ、本当に良かった。この作家さんの本を読んでて良かった。
何故なら、私の気持ちはとんでもなく複雑な気分。
あり得ないと思うけど、もしかしてここ数日が自分の気のせいだったのなんて思わずにはいられない。
何でかって?
そりゃ、目の前を見たらそう思うでしょ。
私の前には今までの数日がなかった事の様に、朝から満面のニッコリ笑顔で挨拶して、当たり前のように私の前の席に座る香苗の姿。余りの状況の変化に香苗の新しい華やぎ仲間も目を丸くしている。でも、話し方を聞けば分かる。自分が正義、私が可哀想になったから香苗が優しくしてあげると言ってる様なものなのだ。
くそ、香苗の奴、高校2年にして新しい方式を会得したのか。こう来るとは私にも分からなかった。
ね、ほらカナ優しいでしょといわんばかりのその行動が、もう理解の範疇を遥かに飛び越えて私にじわじわダメージを与えてくる。
「ねぇ、マキ~ぃ。」
くそー、香苗の猫なで声が癇に障る。
何ナノ?この変化。
きっと他の子が香苗の連続自慢話に飽きたってこともあるんだろうけど、もしかしたら昨日の本を拾ってあげた話が香苗の中では美談に変換されでもしてるのかもしれない。本気で落ちてた本を拾ってあげたって信じてるとしか、段々思えなくなってきた。それにしても昨日までの態度と今日のこの状況は、まともに考えてもおかし過ぎる。同じ事を感じているのだろう、あの子信じられないといたげな視線が四方から刺さるのにも香苗は全くお構いなしだ。ある意味凄い。ここまで来ると、空気を読めないのも天才なのかもしれない。
でも私はもう、あんたには付き合ってらんないよ。
香苗の態度の豹変にも、私は何だか今までにない気持ちで自分の本に眼を落とした。しつこい佳苗の猫なで声に返事も一言だって返事をしたくない。本当は今すぐ振り切って志賀さんのところに行きたい。視界の志賀さんも香苗の変わりっぷりに、驚いているのだろう普段は動じない読書の手が完全に止まっている。
ああ今日は志賀さんとの読書トークは我慢だ、香苗を連れて志賀さんの傍に行ったら彼女にまで迷惑をかけてしまうに違いない。必死に読書に勤しむのだ!
誰かを想うと言う事は時に炎にも似た揺ぎ無い意思を生じて…
『落陽の刻』は短編集だけど、大部分が同じ高校を舞台にしている。高校生の主人公と幼馴染みの交流や、主人公と母親の物語もある。主人公は母子家庭で母親の友人の青年の物語もって、高校生の主人公を別な視点で表現していたりもする。母子家庭であることで周囲から差別のような扱いをされる主人公を幼馴染みや親友が支えてくれて、新しい未知を信じようとする主人公の変化の流れが自分達の年頃の感じかたそのままで本当に私がその立場になったみたいにドキドキしながら最初は読み進めていた。読み直しながら最初は表現が少し硬いといった香坂君の事を考える。主人公の凛とした佇まいは香坂君に良く似ていると私は思う。自分と似ているから、香坂君も好きなんじゃないかななんて考えてみたりもする。
色々考えながら香坂君の背中を眺める。
今の私の混乱して張りつめている気分を緩めてくれるような綺麗な微笑みが心に浮かぶ。
長い睫毛に紅茶色の瞳。
まるでミルクみたいに綺麗な白い肌。
同級生とは一線を引いたような姿は、やっぱりこの小説に出てくる主人公の姿に似ている感じ。
杖をついていても凛と背筋の延びた綺麗な姿に、穏やかにそれでも高くもなく低くもない、きちんと通る涼やかな声。足が悪いとか病弱だとかクラスメイトから差別されても怯みもしないで真っ直ぐに前を見る強い瞳。
「ねぇ~マキ~~???」
あァ、どうして自分の想像くらい好きなように存分に耽っていられないのかなぁ?
そう言えばあの時確かに香坂君は「宮井さん」って私の事を呼んでくれた。確かに彼から呼ばれた。私の事、ちゃんと覚えていてくれたんだ。
煩わしい事はおいておいて自分の心が少しでも明るくなる事を考えたい。香苗の甘え声を意識から押し退けるようにして私は、その綺麗な後姿をボンヤリと眺める。
同じ作家さんが好きかぁ、本当に良かった。この作家さんの本を読んでて良かった。
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