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6月

48.トケイソウ

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あの騒動の後香苗はそのまま教室には戻らなかった。そして、そのまま今日も休んでいる。それがどうだと言うことはないとも言えるんだけど、昨日の私達の行動の後に何か起きたのかクラスの子が教えてくれた。
私と早紀ちゃんが香苗をつれて駆け出した後、やっぱり面白がって後を追いかけようとした子達もいたらしい。そうしたら、突然冷ややかな声がそれを遮ったそうだ。

「そうやって人の事を追い回して、追い詰めるのが楽しい訳?暇人なの?」

辛辣だ。
しかも、その辛辣な台詞をあの香坂君が、座ったまま教室全体に響くような冷たい声でいい放ったと言うからそれは凄く怖かったと思う。もうあの美貌でそんな事言われたら、香坂君を信仰してる子達は震え上がるしかないと思う。私も聞いたら凍りつくと思う。お陰で眺めに来ていた他のクラスの子達の半分は、スゴスゴと自分のクラスに戻ったらしい。しかも、その後に香坂君に続いて真見塚君まで凍りついた視線で睨み付けたらしいものだから、他のクラスの子は完全に姿を消した。最初からしてくれればと思った子も居たみたいだけど、正直香苗と交流があるわけでない香坂君や真見塚君が頼まれもしないのにそんなことしてくれたら出来すぎだと思う。
その後土志田先生に私達3人が逃げ出した事の次第を伝えたのは、そこは委員長の真見塚君だったらしい。そう言われれば、お説教は確かにされたけど、私達はその前にちゃんと相談するべき人に相談しないで、勝手に逃げだしたことだけしか確かに怒られなかった。


今日は金曜日だし明日明後日と学校から離れたら、もう少し噂が落ち着いてくれたらいいと私は思う。昨日の事をボンヤリ考えながら、窓辺で何時もと変わらず本を読んでいる早紀ちゃんの姿を眺める。
穏やかに見えて実は凄く情熱的で一途な早紀ちゃん。
一生懸命真見塚君を思い続けて聖なる愛なんて言ったら大袈裟だけど一途な早紀ちゃんの綺麗さは、彼女の内面から湧き出てくるもののような気がする。壮大な美なんて言ったらオーバーかもしれないけど、長い時間をかけてただ一心に1人の人を想って一生懸命な彼女は凄く綺麗だと思う。あんなに綺麗な心だから昨日みたいな空気の中で泣き出してしまった香苗の姿を、そのまま無視することができなかったんだと思う。私はあのままだったら、きっと蚊帳の外みたいな顔をして眺めていただけたった。

凄いなぁ、早紀ちゃんは。
どうしたら、早紀ちゃんみたいになれるんだろう。
私も出来たら、そうありたいと思うんだけど。

「いいなぁ。」

突然呟いた声に目の前の若瀬君の背中が、ビックリするのが分かる。あ、隙間から見えるけど若瀬君授業に関係しないことしてるから、見られたと思ってビックリしたのかな。そう思わせたままなのも可哀想なので、トントンと背中を指で叩く。

「な、な、なに?宮井。」
「中身までは見えてないよ?もしかして見られると困るのだった?」

違うと若瀬君は慌てて首をふり、あまりまじまじと見たことのない同級生の顔を私は興味津々で眺める。頭はいいけど少し取っつきにくい若瀬君は、お家のクリニックの跡継ぎになるためお医者さんになるのが目標だ。なので、何時も学年で必ず3番までに入っている。うちの学校は中間テストでは期末と違って廊下に掲示されないけど、たぶん今回もそうだったんだと思う。

「なんか数学っぽい?記号しか見えてない。」
「記号じゃないよ、プログラム。」
「プログラム?」
「宮井、ゲームとかしないの?」
「してるよ?今フォークロアゲートやってる。」

若瀬君も知っていたらしく眉が少し上がり、彼にしては珍しく私の方に体の向きを変えた。

「海の国の隠しキャラ見つけたか?」

あれ?この会話前もしたことあるとどこかで思いながら、私は若瀬君の顔を机に伏しながら見上げる。

「リリア?ロウ?」
「今ロウだけど、リリアでも見つけれない。」

そうだ、前回は早紀ちゃんと話したんだった。でもあれから大分たって今の私はどちらの主人公も海の国のはクリアしてるのでその質問は容易いことなのだ。私が知っていると言いたげにニヤリと笑うと、若瀬君は目を丸くして顔を乗り出す。暫し二人で海の国の地形と目印になる珊瑚の樹の位置を確認するのに静かに盛り上がっていると、不思議なものを見るように早紀ちゃんが歩み寄って来ていた。

「麻希ちゃん?」
「あ、早紀ちゃん、あのね、若瀬君もフォークロアゲートやってるんだよ。」

そうなんだと花のように笑いかける早紀ちゃんに、若瀬君が頬を染めるのを見て私はあれ?となった。何か女の子とはちょっと違うけど、もしかしたら若瀬君は早紀ちゃんの事気になっているのかなと思ったり。そんなこと考えながら休憩時間が終わりかけ、早紀ちゃんが席から離れていくと若瀬君が溜め息混じりで呟く。

「宮井、志賀さんと仲いいんだな。」
「あァ、うん。早紀ちゃんは凄くいい子だよ?」

私の何気ない一言に一瞬若瀬君の表情が変わったのを見て止めて、私は偏見ではなく若瀬君って可愛い顔するんだなあ何て思う。
その後授業が始まって暫くして、私は若瀬君にプログラムって何って聞き忘れたのを今更思い出していた。
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