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7月

64.グラジオラス

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晴天の日曜日の公園は、今度作り直すとか言う噂ではあるけど親子連れで賑わっていた。
体育座りで溜息ばかりついていた私の頭を突然ポコンと叩いた感覚に私は視線を返した。少し心配そうな顔をした雪ちゃんの顔がそこにあって、私は最近の事も忘れて自分が少しほっとしたのを感じる。私の前では雪ちゃんは何時も変わらないまま、雪ちゃんのままで私の傍にいてくれるのが本当に嬉しい。雪ちゃんは用意周到って言うか、何気ない仕草で手にしていたペットボトルのお茶を差し出した。すでに真夏の陽射としか言いようのない暑さの中で、元気に駆け回っている衛を眺める。

「ねぇ、雪ちゃん。雪ちゃんは友達の様子がおかしかったらどうする?」

不意にかけた言葉に、雪ちゃんは何時ものヘラッと笑いノホホンとした表情のまま私を見つめる。そう言えば雪ちゃんの友達って本当に余り記憶にない。最近知ったというか思い出しもしたけど、鳥飼さんや先生以外にお友達って呼べる人は学生の時はいたんだろうか?今はどれくらいお友達がいるんだろう?考えてみるといっぱい知ってるはずの雪ちゃんの事、実は私は何も知らないのかもしれない。
私の横で雪ちゃんは芝生に足を投げ出して、少し考えるように空を仰ぐ。

「そうだねぇ、僕なら情報を集めちゃうな。」
「情報?」

予想外の雪ちゃんの言葉に私は視線を上げた。てっきり雪ちゃんなら直接的な行動に出るとばかり思い込んでいたんだ。でも、そんな私の様子に気がつかないのか雪ちゃんは、変わらない表情のままノンビリ衛を眺めつつ口を開く。

「出来る範囲で必要な情報を集めて…本当の事を調べて…調べきって納得してから、それで最終的に行動するだろうねぇ。」

凄く不思議。今まで考えてた雪ちゃんは、バーっと突っ込んでいって玉砕みたいにずっと思い込んで考えてたのは何でなのかな?本当は雪ちゃんってそう言う感じで凄く慎重に物事を考えて行動するんだ。

「意外。雪ちゃんだったら直接ばーって話しに行っちゃうかと思った。」
「そうかい?僕は昔からこうだよ?」
「恋愛でも?」
「まぁ、そうかな?臆病なんだよね、僕。」

何でだろう、私は勝手に雪ちゃんは情熱的な恋の後でその勢いで結婚したんだと思っていた。でも、こんな風に変えて行動するって聞いたら、本当はもっと違うのかもしれない、ふとその言葉で私はそんな風に感じた。

「慎重なだけじゃないの?」
「いいや、臆病者だから慎重になるんだよ。前からずっとそう。」
「知らなかった。」

私の知らない雪ちゃんは少し大人の男の人で、少し寂しげに見えて私は口を噤む。その様子に気がついて普段の雪ちゃんが、思い出したようにヘラッと笑顔の向こうから戻ってくる。

「臆病者だからそのまま突っ込めないんだよ、それだけ。」

何でだろう、本当はそうじゃないって心の何処かが私に囁いてる。体育座りの膝の上に頬をのせて雪ちゃんを眺めている私の心が違うってはっきり言っている。

うん、そうだ、知ってる。雪ちゃんは臆病なんじゃない、雪ちゃんは……なんていったらいいのか、そう……凄く周りを見てるんだ。綺麗なものも汚いものもキチンと見てから判断してる。

それを私は忘れたふりをしてたけど、ちゃんと知ってたんだった。そう思ったら何となく涙が溢れて、雪ちゃんを驚かせてしまう。

「何かあったの?僕に何かできない?」

オロオロする雪ちゃんは何とか私を泣き止ませたくって、必死に頭を巡らせているみたい。そうか、こんな姿をよく見てるから雪ちゃんは直接バーっと突っ込んでいっちゃうみたいに感じてたのかな?それとも他にも何かそう感じる理由がむかしはあったのかな?

「まーちゃん、困ったなぁ、何で泣いてるの?」

昔の呼び方をする雪ちゃんの言葉に、私はなんだか少し可笑しくなって泣き笑いに変わる。昔っから何時もそうだよ、雪ちゃんは何でも私の事を一番にしちゃう、自分の事後回しにしちゃうから、それじゃダメだよって思ったんだ。ああ、もう今は涙でよく見えないけど何でそう思ったのかな?一番にしてくれたら嬉しいのに、ダメだなんて。

「あーっ!何でまーちゃんの事なかしてんの!雪のばかーっ!」
「えええ?!違うよっ!違わないけど!」

私の前で正義の見方まーが、悪の怪人雪をやっつけるのを私は本当にボロボロと泣き笑いしたまま眺めていた。
私にできる事って何かあるのかな?いつの間にか泣きつかれて雪ちゃんの膝を衛と半分こにして眠ってしまっていたみたい。肩にかけられた雪ちゃんのカーディガンが少し雪ちゃんの匂いがして安心する。

「友達……か。」

ポツリと夢うつつに雪ちゃんの声が耳元に心地よく聞こえる。雪ちゃんの友達、きっと鳥飼さんと土志田先生のことかな?

「まーちゃん、大丈夫だよ?まーちゃんの絶対はよく効くからね。絶対なんとかなるよ。」

耳元に呟くような雪ちゃんの優しい声に、私は夢の中で安心したように微笑んだ。
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