聖少女暴君

うお座の運命に忠実な男

文字の大きさ
35 / 41
第四章 対抗試合! 茶道部に勝て

4-11 わたしは主人公だったらしい

しおりを挟む
 二回戦の興奮もあらわに大将戦がはじまる。
 九条沙織VSわたしこと鳴海千尋。でもなんでわたしが大将なんだろう。

 姫川さんはなんのためにわたしを大将にしたのか、疑問でしょうがない。

 村雨さんや折笠さんでも歯が立たなかった鳳女子茶道部にわたしなんかが勝てるわけがない。
 恨みがましい眼で姫川さんに視線を送ると彼女は天を指さした。

「大丈夫。あなたならできるわ」
 その瞳は強い光を宿し、艶のあるくちびるから白い歯がこぼれる。

 姫川さんの自信の源はなに?

「お手柔らかにお願いしますわ」
 九条さんがわたしに握手を求める。彼女の指ぬきグローブが印象的だ。


 わたしが手を差しだすと、わたしの手を握った九条さんは目を見開いた。

「ほう、これは……。姫川さんがお目をつけるわけですわ」
 眼を細めて笑う彼女は舌なめずり。

 どういうことだろう⁉

 試合開始。
 九条さんの持ちキャラクターはウィザードのフランク・マクマナスだ。原作小説では主人公パーティのリーダーを務めた。凄腕の魔法使い。

 ウィザードというだけあって非力なキャラクターだが、魔法を使った攻撃力はピカイチの中級者向けキャラクター。キャラクターランキングでは下位に位置する。九条さんは弱キャラクターをやりこむタイプなのだ。

 対するわたしはキース・ストライダーを選んだ。キースは元傭兵の荒くれもの。原作小説でも素行が悪く主人公に倒された。主人公アストリアとは暗黒傭兵部隊不死鬼ふしきの同期という因縁があった。キースはコマンド投げを得意とするキャラだ。

 投げキャラは体が大きいことが多いがキースは細身でわたしは気に入っていた。
 わたしはいろんなキャラクターを試した結果、キースが持ちキャラクターになっていた。

 九条さんは魔法を発動しながらゲージを溜める。攻防一体の行動である。
 わたしは魔法による光弾をガードしながら一歩ずつフランクに近づいていく。

 攻撃がヒットする瞬間、キースの体が光った。

「Pディフェンス!」
 折笠さんがわたしのテクニックに驚いていた。

「Pディフェンスとは?」
 村雨さんが上目遣いに折笠さんに尋ねる。

「パーフェクトディフェンス。略してPディフェンス。攻撃がヒットする直前にガードすると必殺技で体力を削られないで済む。さらに、ゲージまで溜まるテクニカルディフェンスよ。
 このガードを成功させるには一フレーム単位の入力が必要になる。一フレームとは〇・〇一七秒。これは一般的な格闘ゲームでは一秒間に六〇回画面を描画して書き換えているから。鳴海さんは連続でPディフェンスを成功させている。
 Pディフェンスの受けつけは入力から三フレーム。つまり、鳴海さんはおよそ二〇分の一秒を認識していることになるわ。鳴海さん、いつの間にこんな高等テクニックを……」

 投げキャラクターは飛び道具を持たないという暗黙の了解がある。飛び道具とはすなわち遠距離必殺技。多くの格闘ゲームでは投げキャラクターは飛び道具を持たない。その代わり、近距離で放つ必殺技は攻撃力が段違いに設定されている。

 キースに接近されることを嫌ったフランクは大ジャンプでキースを飛び越す。九条さんは距離を取って仕切り直そうとしている。

 わたしはそれを待っていた。
 フランクがジャンプからの着地姿勢をとった瞬間、まったくの無防備。

 画面が暗転、背中からフランクに近づいたキースの超必殺技『なにも知らないやつらに思い知らせてやる! おれの見た地獄を‼』が極まる。長いけれど公式が設定した技名だ。

 殺意を込めた首絞めからパイルドライバー。これを喰らったフランクは虫の息だ。
 九条さんが小さく舌打ちした。

 

次回へつづく
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち

ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。 クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。 それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。 そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決! その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。

処理中です...