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第四章 対抗試合! 茶道部に勝て
4-13 百万年にひとりの天才、わたし!?
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「おやめなさい。七瀬さん」
九条さんは扇を開いた。桜の文様が描かれた扇で自らの貌を隠した。
「いまの連係は二〇二〇年に発売された雑誌『アーケードユートピア』五月号で紹介されています。それによれば手刀をPディフェンスできれば脱出可能です。
そもそもわれわれはハメ上等のガチ勢。対策を持たないほう悪いのです。見苦しいですわよ」
九条さんは毅然とした態度で敗北を認めた。
「九条さん、あなたらしいわね。握手しましょう」
姫川さんは潔く敗北を認めた九条さんに握手を求めた。
九条さんは快く握手に応える。そして彼女の黒曜石をくりぬいたかのような瞳がわたしをとらえる。
「鳴海さん、さきほどの連係をどこで? あなたはアーケードユートピアを読んでいたの?」
「そんな雑誌知らないです。なんとなく、こうやればいいかなって」
「鳴海さん、いつキャンセル使えるようになったの? レバー一回転コマンドも」
姫川さんが真剣な面持ちでわたしを見つめる。
「キャンセルの説明、姫川さんがしてくれたじゃないですか。レバー一回転も、手が早ければジャンプするまえに技がでるって教えてくれましたよね」
「それだけで技をだせるようになったの?」
「はい」
「鳴海さん、あなたは百万年にひとりの格闘センスを持っているわ」
「なんですとー!」
「鳴海さん、ゲーマーはね。一つひとつの技を指にたこができるまで練習してやっと習得するの。あなたは説明を聞いただけで実践できてしまった。恐ろしい子」
姫川さんはいままでで一番真剣な態度で説明した。
「ちょっといい。百万年にひとりとかいっているけど、百万年前には格闘ゲームもTVゲームも存在していないわ」
折笠さんが指摘すると鳳女子一年生組もうんうんと頷く。
「これほどの逸材が在野に眠っているとは……。世界は広いですわね。あたくしも井のなかの蛙に過ぎなかったようです」
九条さんが扇をたたんで目を細める。
「鳴海さんがいればGEBO優勝も夢ではないかも」
姫川さんの言葉に視線がわたしに集中する。
え? え? わたしってすごかったの?
「ヒメ。こうなることを見越して鳴海さんをスカウトしたの?」
折笠さんが問い詰める。
「ゲフっ。んっんっ、もちろん!」
姫川さんはわざとらしく咳き込んでから爽快に微笑む。
あやしい……
「ほっほっほっ。楽しいお仲間ですわね」
九条さんが扇で自らを扇ぐ。
「九条さんたちはGEBOでるの?」
「もちろんですわ。このチームで予選に出場します」
「わたしたち、予選突破できますかね」わたしは不安げに尋ねた。
「MODのプレイ人口はめっちゃ少ないから安心して。いまのみんなの実力なら充分に予選突破できる」姫川さんはわたしを振りかえる。
「お姫様だけ試合してないよ」
鳳女子茶道部員の二ノ宮恋ちゃんが姫川さんの袖を引っ張る。
「そうだった。やろう」姫川さんが恋ちゃんを見下ろした。
「ヒメ。そろそろ天体観測をスタンバらないとヤバい時間だわ。一戦だけにして」
折笠さんがチェーンで繋がれたアンティーク懐中時計を見る。
「綺麗な懐中時計ですね。わたしも欲しいな。いくらぐらいですか」
わたしが折笠さんに質問する。
「二五万くらいかしら」
時計が二五万円⁉ わたしは一〇〇円ショップの腕時計つけてるのに……ぶくぶく……
「格差―‼」
わたしはかかしが倒れるかのごとく気絶した。
次回へつづく
九条さんは扇を開いた。桜の文様が描かれた扇で自らの貌を隠した。
「いまの連係は二〇二〇年に発売された雑誌『アーケードユートピア』五月号で紹介されています。それによれば手刀をPディフェンスできれば脱出可能です。
そもそもわれわれはハメ上等のガチ勢。対策を持たないほう悪いのです。見苦しいですわよ」
九条さんは毅然とした態度で敗北を認めた。
「九条さん、あなたらしいわね。握手しましょう」
姫川さんは潔く敗北を認めた九条さんに握手を求めた。
九条さんは快く握手に応える。そして彼女の黒曜石をくりぬいたかのような瞳がわたしをとらえる。
「鳴海さん、さきほどの連係をどこで? あなたはアーケードユートピアを読んでいたの?」
「そんな雑誌知らないです。なんとなく、こうやればいいかなって」
「鳴海さん、いつキャンセル使えるようになったの? レバー一回転コマンドも」
姫川さんが真剣な面持ちでわたしを見つめる。
「キャンセルの説明、姫川さんがしてくれたじゃないですか。レバー一回転も、手が早ければジャンプするまえに技がでるって教えてくれましたよね」
「それだけで技をだせるようになったの?」
「はい」
「鳴海さん、あなたは百万年にひとりの格闘センスを持っているわ」
「なんですとー!」
「鳴海さん、ゲーマーはね。一つひとつの技を指にたこができるまで練習してやっと習得するの。あなたは説明を聞いただけで実践できてしまった。恐ろしい子」
姫川さんはいままでで一番真剣な態度で説明した。
「ちょっといい。百万年にひとりとかいっているけど、百万年前には格闘ゲームもTVゲームも存在していないわ」
折笠さんが指摘すると鳳女子一年生組もうんうんと頷く。
「これほどの逸材が在野に眠っているとは……。世界は広いですわね。あたくしも井のなかの蛙に過ぎなかったようです」
九条さんが扇をたたんで目を細める。
「鳴海さんがいればGEBO優勝も夢ではないかも」
姫川さんの言葉に視線がわたしに集中する。
え? え? わたしってすごかったの?
「ヒメ。こうなることを見越して鳴海さんをスカウトしたの?」
折笠さんが問い詰める。
「ゲフっ。んっんっ、もちろん!」
姫川さんはわざとらしく咳き込んでから爽快に微笑む。
あやしい……
「ほっほっほっ。楽しいお仲間ですわね」
九条さんが扇で自らを扇ぐ。
「九条さんたちはGEBOでるの?」
「もちろんですわ。このチームで予選に出場します」
「わたしたち、予選突破できますかね」わたしは不安げに尋ねた。
「MODのプレイ人口はめっちゃ少ないから安心して。いまのみんなの実力なら充分に予選突破できる」姫川さんはわたしを振りかえる。
「お姫様だけ試合してないよ」
鳳女子茶道部員の二ノ宮恋ちゃんが姫川さんの袖を引っ張る。
「そうだった。やろう」姫川さんが恋ちゃんを見下ろした。
「ヒメ。そろそろ天体観測をスタンバらないとヤバい時間だわ。一戦だけにして」
折笠さんがチェーンで繋がれたアンティーク懐中時計を見る。
「綺麗な懐中時計ですね。わたしも欲しいな。いくらぐらいですか」
わたしが折笠さんに質問する。
「二五万くらいかしら」
時計が二五万円⁉ わたしは一〇〇円ショップの腕時計つけてるのに……ぶくぶく……
「格差―‼」
わたしはかかしが倒れるかのごとく気絶した。
次回へつづく
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