聖少女暴君

うお座の運命に忠実な男

文字の大きさ
37 / 41
第四章 対抗試合! 茶道部に勝て

4-13 百万年にひとりの天才、わたし!?

しおりを挟む
「おやめなさい。七瀬さん」

 九条さんは扇を開いた。桜の文様が描かれた扇で自らの貌を隠した。

「いまの連係は二〇二〇年に発売された雑誌『アーケードユートピア』五月号で紹介されています。それによれば手刀をPディフェンスできれば脱出可能です。
 そもそもわれわれはハメ上等のガチ勢。対策を持たないほう悪いのです。見苦しいですわよ」

 九条さんは毅然とした態度で敗北を認めた。

「九条さん、あなたらしいわね。握手しましょう」
 姫川さんは潔く敗北を認めた九条さんに握手を求めた。

 九条さんは快く握手に応える。そして彼女の黒曜石をくりぬいたかのような瞳がわたしをとらえる。

「鳴海さん、さきほどの連係をどこで? あなたはアーケードユートピアを読んでいたの?」

「そんな雑誌知らないです。なんとなく、こうやればいいかなって」

「鳴海さん、いつキャンセル使えるようになったの? レバー一回転コマンドも」
 姫川さんが真剣な面持ちでわたしを見つめる。

「キャンセルの説明、姫川さんがしてくれたじゃないですか。レバー一回転も、手が早ければジャンプするまえに技がでるって教えてくれましたよね」

「それだけで技をだせるようになったの?」
「はい」

「鳴海さん、あなたは百万年にひとりの格闘センスを持っているわ」
「なんですとー!」

「鳴海さん、ゲーマーはね。一つひとつの技を指にたこができるまで練習してやっと習得するの。あなたは説明を聞いただけで実践できてしまった。恐ろしい子」
 姫川さんはいままでで一番真剣な態度で説明した。

「ちょっといい。百万年にひとりとかいっているけど、百万年前には格闘ゲームもTVゲームも存在していないわ」
 折笠さんが指摘すると鳳女子一年生組もうんうんと頷く。

「これほどの逸材が在野に眠っているとは……。世界は広いですわね。あたくしも井のなかの蛙に過ぎなかったようです」
 九条さんが扇をたたんで目を細める。

「鳴海さんがいればGEBO優勝も夢ではないかも」

 姫川さんの言葉に視線がわたしに集中する。
 え? え? わたしってすごかったの?

「ヒメ。こうなることを見越して鳴海さんをスカウトしたの?」
 折笠さんが問い詰める。

「ゲフっ。んっんっ、もちろん!」

 姫川さんはわざとらしく咳き込んでから爽快に微笑む。
 あやしい……

「ほっほっほっ。楽しいお仲間ですわね」
 九条さんが扇で自らを扇ぐ。

「九条さんたちはGEBOでるの?」
「もちろんですわ。このチームで予選に出場します」

「わたしたち、予選突破できますかね」わたしは不安げに尋ねた。

「MODのプレイ人口はめっちゃ少ないから安心して。いまのみんなの実力なら充分に予選突破できる」姫川さんはわたしを振りかえる。

「お姫様だけ試合してないよ」
 鳳女子茶道部員の二ノ宮れんちゃんが姫川さんの袖を引っ張る。

「そうだった。やろう」姫川さんが恋ちゃんを見下ろした。

「ヒメ。そろそろ天体観測をスタンバらないとヤバい時間だわ。一戦だけにして」
 折笠さんがチェーンで繋がれたアンティーク懐中時計を見る。

「綺麗な懐中時計ですね。わたしも欲しいな。いくらぐらいですか」
 わたしが折笠さんに質問する。

「二五万くらいかしら」

 時計が二五万円⁉ わたしは一〇〇円ショップの腕時計つけてるのに……ぶくぶく……

「格差―‼」

 わたしはかかしが倒れるかのごとく気絶した。

次回へつづく
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち

ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。 クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。 それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。 そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決! その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。

処理中です...