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金曜の夜、閉店時間まであと10分。
個室型オイルマッサージ店《ルーム・ミント》の空気は、今日も静かに温まっていた。
ラスト枠の予約が入っていないのを確認して、俺――店長の間宮(まみや)は、照明を少し暗くする。
……すると、ガラス戸の向こうに見慣れたシルエットが現れた。スーツ姿の男が扉を開け、明るい声で駆け込んでくる。
「今週もギリギリ間に合いましたーっ!」
「お、来たな」
180センチを超える長身に、スーツ越しでもわかる逆三角形の体。肩から腕のラインはシャープで、歩くだけで存在感がある。柔らかいクセ毛の黒髪に、涼しげな目元。まるで雑誌から出てきたモデルみたいな男――それが、うちの常連・柊(ひいらぎ)である。
まだ二十四歳。俺より十歳も年下だ。
「おい、そんなに慌てなくても店はまだ締めないから大丈夫だよ」
「でも間宮さんに会えると思うと、ついっ!」
「まったく」
一見クールでデキるサラリーマン風なのに、俺の前ではいつも人懐っこい大型犬みたいになる。
そんなところが、ちょっと可愛い。
「ほら、部屋。いつものな」
「はーい!」
口元に自然と笑みが浮かぶのを感じながら、彼を個室へ案内する。ドアを閉めると、アロマの香りがふわりと鼻をかすめた。
「じゃ、着替えはロッカーへ。紙パンツとバスローブは棚の上な」
「はーい!」
いつものやり取り。
柊はさっそくスーツを脱ぎはじめる。シャツを脱ぐたびに露わになる広い背中に、引き締まった腹筋、腰のライン。見てはいけないと思いつつも、どうしても目が追ってしまう。
「ん?どうしました、間宮さん?」
不意に視線が合ってしまい、慌てて目を逸らす。
「あ、いや……なんでもないよ」
本当はある。でも、言えない。
俺は、柊が好きだ。たぶん、ずっと前から。
◇◆◇
この店を始めたのは一年前。
脱サラして専門学校に通い、ようやく“働く大人を癒せる場所”を自分の手で持つ事が気出来た。
働くって、想像以上にしんどい。
俺自身がボロボロだったからこそ、「せめてここでは誰かの重荷を少しでも下ろさせてやりたい」と思った。
開店当初、客はまばらで不安ばかりだった。
そんな時にフラリと現れたのが、新入社員時代の柊だ。あの頃の柊は今のように明るくなくて、目は虚ろで、まるで息をするのも面倒くさいとでも言いたげな顔をしていた。
それでも、週に一度、金曜の夜にだけふらりと現れては、黙って施術を受けて帰っていく。言葉数は少なかったけど、施術の後にひとこと「……助かります」と呟くようになったのが最初の変化だった。
それが、いつの間にか雑談が増え、笑うようになり、冗談を言うようになって、気づけば俺はその変化を心から嬉しく思うようになっていた。
好きになった理由なんて、いちいち言葉にする必要はない。
ただ、柊が“元気になっていく姿”そのものに、俺は惹かれていたし……救われていたんだと思う。
「はい、間宮さん。準備完了でーす」
「っ、あ。あぁ」
その声に振り返ると、柊は施術用のベッドに腰かけていた。
バスローブをゆったり羽織り、肩から首筋が自然と露出している。背中を軽く預けて深く息を吐く彼の様子から、この一週間の疲れがにじみ出ているのがわかる。
「じゃ、じゃあ……その、肩からやるから。力、抜いて」
「はい」
俺は背後に立って、温めたオイルをトロリと両手に馴染ませる。そして、柊の厚い肩に、そっと指を沈めた。
「……っはぁ」
滑らせた指の動きに合わせて、柊の喉からふっと生っぽい息が漏れる。オイルの光を帯びた肩に目を奪われたまま、俺は息を呑んだ。
「……肩、張ってるな」
「今週も頑張ったんですよー。間宮さん、褒めて?」
「……ん。お前はよく頑張ってるよ」
柊が無邪気に甘えてくるたびに、俺の中の何かも、少しずつほどけていく。
「はぁー……っ♡……っはぁ♡間宮さんの手、すごく……気持ちいいです」
「っ」
不意に聞こえた色っぽい声に、思わず手が止まりかけた。
ヤバイ、施術中なのにもう全然集中出来なくなってきている。
「い、言ったろ。肩、限界来てたぞ。詰まりすぎて、血、流れてないレベルだって」
「ん……ッ♡間宮さんの手、きもち♡……もっと、強く、お願いできます♡?」
「……あ、あぁ」
軽く肩をもみほぐすと、柊が振り返りながら甘えた声で言う。そのまま、彼の手をそっと俺の手に重ねてきた。
「ちょっ、柊……今、施術中だから……や、ッン♡」
温かいオイルを纏った指に、柊のゴツゴツとした冷たい指が絡み付く。
「……間宮さん、俺。今週も頑張ったんですよ?」
「そ、れは……分かって……っぁ♡」
「間宮さん、ねぇ、もっと褒めて♡」
柊が俺の手を掴んで体の前へと引き寄せた。すると、バスローブの上からでもハッキリわかるほど、前が盛り上がっているのが見えた。
「っぁ♡」
思わず上擦った声が上がる。
爽やかで人懐っこい笑みの下に、ビキビキに勃起したちんぽがあると思うと自然と下腹部がきゅん♡としてしまう。
「そんな目で見られると、すっごい興奮する……♡」
「っぁ、いや……」
個室型オイルマッサージ店《ルーム・ミント》の空気は、今日も静かに温まっていた。
ラスト枠の予約が入っていないのを確認して、俺――店長の間宮(まみや)は、照明を少し暗くする。
……すると、ガラス戸の向こうに見慣れたシルエットが現れた。スーツ姿の男が扉を開け、明るい声で駆け込んでくる。
「今週もギリギリ間に合いましたーっ!」
「お、来たな」
180センチを超える長身に、スーツ越しでもわかる逆三角形の体。肩から腕のラインはシャープで、歩くだけで存在感がある。柔らかいクセ毛の黒髪に、涼しげな目元。まるで雑誌から出てきたモデルみたいな男――それが、うちの常連・柊(ひいらぎ)である。
まだ二十四歳。俺より十歳も年下だ。
「おい、そんなに慌てなくても店はまだ締めないから大丈夫だよ」
「でも間宮さんに会えると思うと、ついっ!」
「まったく」
一見クールでデキるサラリーマン風なのに、俺の前ではいつも人懐っこい大型犬みたいになる。
そんなところが、ちょっと可愛い。
「ほら、部屋。いつものな」
「はーい!」
口元に自然と笑みが浮かぶのを感じながら、彼を個室へ案内する。ドアを閉めると、アロマの香りがふわりと鼻をかすめた。
「じゃ、着替えはロッカーへ。紙パンツとバスローブは棚の上な」
「はーい!」
いつものやり取り。
柊はさっそくスーツを脱ぎはじめる。シャツを脱ぐたびに露わになる広い背中に、引き締まった腹筋、腰のライン。見てはいけないと思いつつも、どうしても目が追ってしまう。
「ん?どうしました、間宮さん?」
不意に視線が合ってしまい、慌てて目を逸らす。
「あ、いや……なんでもないよ」
本当はある。でも、言えない。
俺は、柊が好きだ。たぶん、ずっと前から。
◇◆◇
この店を始めたのは一年前。
脱サラして専門学校に通い、ようやく“働く大人を癒せる場所”を自分の手で持つ事が気出来た。
働くって、想像以上にしんどい。
俺自身がボロボロだったからこそ、「せめてここでは誰かの重荷を少しでも下ろさせてやりたい」と思った。
開店当初、客はまばらで不安ばかりだった。
そんな時にフラリと現れたのが、新入社員時代の柊だ。あの頃の柊は今のように明るくなくて、目は虚ろで、まるで息をするのも面倒くさいとでも言いたげな顔をしていた。
それでも、週に一度、金曜の夜にだけふらりと現れては、黙って施術を受けて帰っていく。言葉数は少なかったけど、施術の後にひとこと「……助かります」と呟くようになったのが最初の変化だった。
それが、いつの間にか雑談が増え、笑うようになり、冗談を言うようになって、気づけば俺はその変化を心から嬉しく思うようになっていた。
好きになった理由なんて、いちいち言葉にする必要はない。
ただ、柊が“元気になっていく姿”そのものに、俺は惹かれていたし……救われていたんだと思う。
「はい、間宮さん。準備完了でーす」
「っ、あ。あぁ」
その声に振り返ると、柊は施術用のベッドに腰かけていた。
バスローブをゆったり羽織り、肩から首筋が自然と露出している。背中を軽く預けて深く息を吐く彼の様子から、この一週間の疲れがにじみ出ているのがわかる。
「じゃ、じゃあ……その、肩からやるから。力、抜いて」
「はい」
俺は背後に立って、温めたオイルをトロリと両手に馴染ませる。そして、柊の厚い肩に、そっと指を沈めた。
「……っはぁ」
滑らせた指の動きに合わせて、柊の喉からふっと生っぽい息が漏れる。オイルの光を帯びた肩に目を奪われたまま、俺は息を呑んだ。
「……肩、張ってるな」
「今週も頑張ったんですよー。間宮さん、褒めて?」
「……ん。お前はよく頑張ってるよ」
柊が無邪気に甘えてくるたびに、俺の中の何かも、少しずつほどけていく。
「はぁー……っ♡……っはぁ♡間宮さんの手、すごく……気持ちいいです」
「っ」
不意に聞こえた色っぽい声に、思わず手が止まりかけた。
ヤバイ、施術中なのにもう全然集中出来なくなってきている。
「い、言ったろ。肩、限界来てたぞ。詰まりすぎて、血、流れてないレベルだって」
「ん……ッ♡間宮さんの手、きもち♡……もっと、強く、お願いできます♡?」
「……あ、あぁ」
軽く肩をもみほぐすと、柊が振り返りながら甘えた声で言う。そのまま、彼の手をそっと俺の手に重ねてきた。
「ちょっ、柊……今、施術中だから……や、ッン♡」
温かいオイルを纏った指に、柊のゴツゴツとした冷たい指が絡み付く。
「……間宮さん、俺。今週も頑張ったんですよ?」
「そ、れは……分かって……っぁ♡」
「間宮さん、ねぇ、もっと褒めて♡」
柊が俺の手を掴んで体の前へと引き寄せた。すると、バスローブの上からでもハッキリわかるほど、前が盛り上がっているのが見えた。
「っぁ♡」
思わず上擦った声が上がる。
爽やかで人懐っこい笑みの下に、ビキビキに勃起したちんぽがあると思うと自然と下腹部がきゅん♡としてしまう。
「そんな目で見られると、すっごい興奮する……♡」
「っぁ、いや……」
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