ストーカー気質な青年の恋は実るのか

ムーン

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合意

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ゆっくりと腰を下ろし、彼のものを根元まで迎え入れる。足が震えて、身体が反って、思考が蕩ける。
彼に背を支えられ、彼の首に腕を回し、ぎゅうっと抱き着いた。腰を揺らすのはまだ無理だ、身体のどこにも力が入らない。

「……可愛いですね、涼斗さん。昨日もしたのに……毎日あんなもの入れてるのに、初心な反応…………好きですよ、そういうの」

「まっ、毎日じゃ、なぃっ……」

背に回された腕が腰をぐっと押さえる。それだけで身体が跳ね、僕の反応を愉しむ彼の声にゾクゾクと震えた。

「全身開発済みで、初心な反応見せてくれる相性ぴったりの子とか……もう、歳下だからだとか、未成年だからだとかで、我慢出来るわけないですよね」

「凪さんっ、凪さぁんっ……凪さん、好きっ、好きですっ、凪さん……大好きぃ」

足を彼の腰に回し、全身で彼にしがみつく。腰をくねらせて彼の腹に性器を擦り付け、自分の腹の奥に彼の性器を擦り付ける。

「…………しかも、多少我儘言っても、無茶しても……冷めも萎えもしない、俺に完璧に惚れてる子……ぐっちゃぐちゃにしてあげるしかありませんよね?」

彼は僕の腰を両手でがっしりと掴み、腰を揺らし始めた。

「あっ、ぁあっ! 凪さぁんっ、凪さんっ、待って……イっちゃうっ! こんなっ、すぐ……ぅ、あっ、ゃああっ!」

彼は僕を容赦なく突き上げる。ごりごりと腸壁を擦り、背骨を叩き、内臓を揺さぶる。昨日と違って僕が支配できていない。今日こそ僕は彼に抱かれている。その実感が何よりも嬉しくて、幸せで、僕は背を反らせて足を伸ばし、絶頂を迎えた。

「……イっちゃいました?」

「凪さぁん……凪さん…………しゅき……」

彼は勃ったままの陰茎を引き抜き、力の抜けた僕を布団に寝かせた。まだ中がひくひくと震える下腹を優しく撫でられて、性から最も離れたような美しい微笑みを向けられて、僕は自然と口角を釣り上げた。

「凪さん……僕、あなたを見た時から……こうしたくて、こうなるの、夢見てて……」

温かさに包まれて、自分の意味を悟る。

「僕は、きっと、凪さんに会うために……凪さんに抱かれるために……今日まで生きてきたんです」

触れるか触れないかの優しく曖昧な愛撫を受けながら、そう呟く。今までの人生が空虚だったのは今日この日の為だったのだと。すると彼は微笑みを消した。

「…………凪さん?」

気に障ることを言ってしまったのかと先程までの温かさが消えて、背筋が氷柱に入れ替わったような寒気に襲われる。
僕は彼に嫌われることが何よりも怖い。

「……それは反則でしょ、涼斗さん」

彼は僕の足を持ち上げる。膝を曲げさせて、開脚させて、太腿を腹にぴったりと付けさせて──あぁ、大丈夫だ、僕は嫌われてなんかいない。

「あなたが落ち着くまで待とうと思ってたんですけど、無理ですよ」

熱く硬く勃起したものが再び僕を貫く。
彼は僕の太腿を押さえ、自分の欲望を満たすためだけに腰を振る。一方的に、乱暴に、僕を犯す。

「ぁあんっ!  ゃんっ、凪さっ、ひぁあんっ! これっ、さっきより、おくにぃっ……ひぁあっ!」

「……そんな顔して感じてたんですね」

「ぁんっ、あっ! やだ、見ないでっ……」

「顔隠さないで、もっと声出して、全部教えてくださいよ。涼斗さんは俺のことほとんど知ってるでしょうけど、俺は涼斗さんのことほとんど知らないんですよ?」

僕は頭の横に手をやり、勝手に顔を隠してしまわないようにシーツを掴んだ。

「……っ! イイ……ですね、それっ! その手っ、興奮します……!」

顔を晒したことで僕も彼の顔がはっきりと見られるようになった。征服感に酔った艶っぽい笑顔、僕だけを映し僕だけを求める青い右眼、僕に興奮して紅潮した頬に荒い呼吸。
彼が僕で悦んでくれている。そう分かると自然と腸壁が彼のものを締めつけた。

「凪さんっ、凪さん、凪さぁんっ! もっと、もっとぉっ!」

もっと、僕を求めて。

「ぁあっ!? ぁ、深いっ……ひっ、ぁあんっ!」

「……涼斗さん、そろそろ」

「ぁ、はぁっ、はいっ、中にっ……全部、くださいっ!」

「…………本当、反則ですよ……」

腰を持ち上げられ、肩甲骨から下が宙に浮く。前転をしている途中のように身体を丸められ、自分の性器の向こうに結合部分が見える。

「あっ、ぁ、あっ、だめっ、これだめ、イくっ、イっちゃ、あっ、ひぁああっ!」

「……っ、はぁっ……涼斗さん……」

身体の奥に熱い液体が注ぎ込まれ、幸福感に満たされる。彼のものが抜けるのに僅かな寂しさを覚え、体勢を戻され頬を撫でられるのにその寂しさを打ち消される。

「……凪さぁん…………好きっ、大好き……」

疲れたと隣に寝転がった彼の首に腕を回し、鎖骨のあたりに頬擦りをして愛を連呼する。頭の下に彼の腕が通り、頭の後ろで肘が曲がって僕の頭は彼の首元に捕えられる。

「ぁ……あ、凪さんっ、凪さんっ、凪さん凪さん凪さぁんっ!  好きですっ、好きっ、愛してますっ!」

腕枕をしてくれた、抱き締めてくれた、彼は僕を愛してくれている。

「…………落ち着いてください涼斗さん」

背をぽんぽんと撫でられ、足を足に挟まれ、耳元で囁かれる。

「ごめんなさい……凪さん」

「いえ、可愛くって結構なんですよ? でも……三十路前のおじさんは二回も出したらもう疲れちゃって……」

「凪さんは綺麗でかっこいいお兄さんですよ! おじさんなんかじゃありません!」

「ありがとうございます……でも、大声は……そろそろ。眠いので……ね?」

慌てて口を閉ざし、俯く。薄暗い視界でも彼の鎖骨が目の前にあると分かった。

「…………ぁ、ちょっと、涼斗さん……」

ちゅぷちゅぷと音を立てて彼の鎖骨に吸い付く。首筋を舐め上げ、歯を立てずに甘噛みし、彼の汗の味を堪能する。

「もう……仕方ありませんね」

腕枕をした手で撫でられて、僕は調子に乗って彼の首元を唾液まみれにしていく。

「……俺、ちょっと寝ますよ? 首とか、手とか、そういうところなら構いませんけど…………耳と足の間はやめてくださいね」

「んっ、ん……はぁい、凪さん。好きですぅ……」

「…………この歳になって成人前の子にこんなに惚れられるなんて思いませんでしたよ。人生続けてみるもんですね」

彼が静かに寝息を立て始めてからも首元を舐め回していたが、そのうちに自分の唾液の味しかしていないことに気が付いてやめた。
身をよじって仰向けに戻り、腕枕をしてくれている手に手を重ねる。

「……えへへ」

腹に置かれたもう片方の手を持ち上げ、頬を撫でさせる。

「ん……ん、んっ……」

頬に置いたまま親指をしゃぶる。革の匂いと蒸れた味がたまらない。手のひらの皺や指の間は汗の味が濃い。指先を吸うと爪がくいくいと動くのが面白い。

「……っくしゅん!」

彼の手を堪能しているとくしゃみが出た。冷房が効いた部屋で汗や体液に濡れ、裸で寝転がっているのだ、寒くなりもする。

「毛布、毛布……あった」

布団の下の方に丸められていた毛布を足を使って引っ張り上げ、眠る彼と共に包まる。
毛布によって冷風が遮られ、彼と僕の体温が混ざる。

「…………えへへへ、なーぎーさぁーん……しゅきー……」

眠っているのをいいことに喃語で甘える。
薄い胸板に頬擦りをして、耳を当てて彼の鼓動を聴く。僕と違って穏やかな鼓動は僕を眠気に襲わせた。
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