ストーカー気質な青年の恋は実るのか

ムーン

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献身

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彼に「好き」と言われたことはない。僕が少し常識外れな言動をした時に、彼を悦ばせた時に、僕本人ではなく僕の行為を「好き」と言うことはあるけれど、それも嬉しいけれど、やはり僕そのものを好きになって欲しい。
恋人になれたと僕は思いたいけれど、恋人になってくださいとも言ってないし言われていない。
不安だ。

「…………おはようございまーす」

ある日の早朝、僕は彼に彼の意思で抱かれた次の日からの日課をこなす。
合鍵で彼の部屋に入り、トースターに食パンを入れる。熟睡している彼の布団に潜り込み、ズボンと下着を下ろし、まだ柔らかい彼のものを口に含む。

「ん……んっ、ぅっ……んぐっ……ふっ……」

口全体を使って扱き、喉の奥で亀頭を愛撫する。苦しくて口を離したくなるけれど、涙が零れるけれど、これは彼が好きなやり方なのだから仕方ない。
射精させる前に彼が起きて僕を抱きたがる時もあれば、射精してもしっかり起きない時もある。一番困るのは──

「…………んむっ!?」

──足や手で頭を押さえられることだ。
寝惚けてやっているらしいこの行動は僕を非常に苦しめる。自分では加減できる喉への突きも当然制御出来なくなる。
頭を掴まれて腰を振られたりなんてしたらもう最悪だ、朝から喉を痛める。

「ふぁあ…………ん? ぁ、涼斗さん……おはようございます」

今日は途中で起きてくれて、普通の口淫に戻れたから助かった。

「……パン、焼けてますよ」

朝一番の精液を味わって飲んで、彼とのキスのために念入りに歯磨きとうがいをしたら、交代で顔を洗いに来た彼の頬にキスをする。
彼が顔を洗っている間に焼けた食パンにバターを塗って、ハムとレタスを添えて机に置く。

「ありがとうございます……」

「船を漕がないでください、早く食べないと冷めますよ」

「んー……そう、ですねー……」

重い瞼の下の青い宝石に見惚れつつ、時折に注意を呟いて彼の朝食を終わらせる。食べ終わる頃には彼の目もはっきりと開いて、僕の視線に気が付いて微笑みを返すようになる。
ニュース番組を眺める彼の横顔を眺めながら皿を洗い、幸せを噛み締める。隣に座ると彼は僕の腰に腕を回し、僕の頭に頭を預ける。

「…………凪さん、好きです」

腰に回された手と手を繋ぎ、そう呟くと手を握り返される。「俺もです」だとか「好きです」だとかの返事はない。
けれど……それで、いい。僕は満足だ。彼の傍に居られる、彼を見ていられる、彼に触れて、触れられて…………それで僕は満足だ。満足のはずなんだ。現状以上を求める欲には限りがない、満足しなければ破滅に向かってしまう。

「………………暇ですねぇ」

番組表を見てため息をつき、彼は半分独り言を呟く。僕は退屈なんて感じていない、彼の温もりと手の感触、呼吸と鼓動を楽しんでいる僕に退屈なんてある訳ない。

「どこか行きますか?」

喫茶店に行くにはまだ早い。けれど彼は退屈だからとコンビニや少し離れたデパートに出かけることも多い。今日もそうだと思って、出かける心の準備を整える。

「そうですね……あぁ、そうだ。ねぇ涼斗さん、あの玩具箱持ってきてくださいよ」

「え……」

「あの時見たきりなんですよね、まだまだ使い方分からないのたくさんありましたし……今日は涼斗さんをいじめたい気分です。ね、いいでしょ? あの日俺をいじめたんですから。俺の仕返しは十倍以上ですよ」

「…………分かりました、ちょっと待っててください」

僕を僕として初めて彼が抱いてくれた日、彼に玩具箱を見られた。まだ覚えていたのかと肩を落としながら期待に胸を膨らませ、玩具箱を運んだ。

「相変わらず多いですねー……」

彼が箱を覗き、玩具を手に取ってじっと観察している。それには裸を見られるよりも強い羞恥を覚える。

「……ぁ、これなんですか?」

「ギャグボール……です。口に入れて……固定して、話せなくする」

玩具箱を挟んで向かい合い、道具の説明をさせられる。これはもはやそういうプレイなのでは……と思うが彼にそんなつもりはないだろう、おそらく天然だ。

「へぇ……これは?」

「電気マッサージ器……肩こりほぐすやつ…………です」

そう言いながら目を逸らすと、彼はそれを僕の肩に置いた。

「こうですか?」

「は、はい……スイッチ入れたら動くので、その振動でほぐして……」

「スイッチ……?」

肩から離し、スイッチを探す。彼はすぐにスイッチを見つけ、強弱操作もすぐに覚えた。まぁ……分からなかったら分からない方が心配だけれど、分からないでいて欲しかった。

「涼斗さん肩こりあるんですか? 若いのに」

彼は玩具箱を押しのけ、距離を詰める。間近で向かい合って見つめられるのにはまだ慣れない。目を逸らしながら頷くと両肩に手が置かれた。

「……ふにふにですね」

軽く肩を揉み、そう言って笑う。
再び電気マッサージ器を手に取り、僕の股間に押し付ける。

「こっちで使ってるんじゃないですか?」

「つ、使ってなっ、あっ、ゃ……やめ……ぁんっ! 凪さんっ、これやだっ……」

「いつも使ってるんでしょう?」

「使って、使ってないっ! 使ってませんっ、本当にっ……ゃあぁっ!」

振動するそれを押し当てられて身体が跳ねる。僕の足が震え始めると彼は振動を強め、マッサージ器そのものをぐりぐりと動かした。

「本当のことを言ってください、涼斗さん。俺、嘘吐きはあんまり好きじゃありません」

絶頂の寸前で彼はマッサージ器を僕から離した。

「…………ここ。この、先端……のとこに、下着の上からとか当てて……でもっ、越してきてからは使ってないんです! 声……聞こえるかも、って……」

振動が止められたマッサージ器を掴み、自ら股間に擦り付け、目を逸らしたまま答えた。彼は僕の手を払ってマッサージ器を玩具箱に戻してしまった。

「ぁ……凪さん? なんで……もう少しで、イけたのにぃ……」

彼はまた箱を漁る。

「……これは、ブラシ……?  ぁ、これも動きますね、電動歯ブラシみたい」

「まぁ……ほぼ同じですよ、歯ブラシよりはずっと柔らかい毛ですけど」

「これはどこにどう使うんですか?」

「…………胸に、その、直接当てて」

背中に腕を回されて逃げられないようにされ、ブラシを持った手がシャツの中に入る。

「ゃっ……ぁ、あっ……」

緩やかに回転するブラシが乳首を擦り、乳輪を掠る。

「……これ使ってこんなに敏感にしたんですか?」

「最初は……指でっ、しました…………敏感になってきてからっ、玩具、使って……」

「へぇ……どうしてやろうと思ったんですか?」

おそらくだけれど、彼は僕を辱めようと思ってはいない。純粋な疑問なのだろう。

「……っ! ぅ……ちゅ、中学の頃、なんかっ……敏感になる時期、ぁ、あるでしょ? あの時っ、色々、調べてたら…………乳首開発すればそこだけで射精まで出来るようになるって、出てきてっ……好奇心で……」

「へぇ? そんな歳の頃からこんなことばっかりしてたんですね、涼斗さんは。で、なりましたか? ここだけで出せるんですか? あ、答えなくていいですよ、確かめるので」

ブラシの回転が速くなり、更に反る背を彼に押さえ込まれて、刺激から逃げられない。

「ぁ、あっ、ゃ……ぁあっ! イっ……ちゃ、た……ぅう……凪さぁん……」

そのうちに僕は絶頂を迎え、下着の中を熱い液体で汚した。彼はそれを確認すると楽しそうな笑みを浮かべ、ブラシを玩具箱に戻した。

「次はどれに……そうだ、後ろにもの入れるようになったきっかけとかあるんですか?」

「……胸の開発進んできたら、なんかもっとないかなって気になりだしたんです。それで調べたら……後ろに入れて、前立腺刺激できたら、女の子みたいにイけるって……女の子がどんなふうなのかは知らなかったんですけど、本当に気持ちいいって……連続で……って、あったから」

「最初はやっぱり指で?」

「……はい、お風呂場で…………最初は上手くいかなかったんですけど、初めて上手くできた時、本当に気持ちよくって……しばらく動けなくて……足、びくびくして、中もひくひくして……動けない間に出した精液固まっちゃって、掃除とか臭いとか大変でした……」

ぐちゃぐちゃになった下着の中に不快感を覚えつつ、彼に自慰の体験を語る。辱められているという感覚でいっぱいになって、大好きな彼に自分をどんどん知ってもらえると悦び始めて、射精したばかりの性器はまた膨らみ始めた。
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