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前にも言ったはずだけど
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遅刻覚悟でシンヤをベンチに誘導し、落ち着かせてゆっくりと話すことにした。彼はしゃくり上げながら話す──僕が好きだと、卒業して家を出たら僕好みに見た目を変えると、だから卒業したらまた付き合って欲しいと──まるで僕がフったみたいに話した。
「……気は済んだ? シンヤくん」
通勤ラッシュがすっかり落ち着いて、学生服の乗客を全く見なくなる頃、ようやくシンヤに僕の声が届くようになった。
「前にもさ、言ったはずなんだけど……僕は君の見た目が変わっても君を嫌いになったりしないよ、黒髪になったって好きなのは変わらないよ」
ぐすぐすと鼻を鳴らしながら頷くシンヤには正直萌える。泣き顔フェチは空気を読まない。
「……僕は確かに君の金髪が好きだったよ。でも、それは……好きなラノベの主人公と同じ髪色だからとか、そんな理由じゃない。僕の好みに合わせてくれた、君の気持ちが嬉しかった。僕なんかに一目惚れして、不良とは正反対の優等生のくせに……不良ぶってる君が可愛かった、愛おしくなった、幸せにしたくなったんだ……ううん、君と幸せにならなきゃいけないって、そう思った」
僕はベンチには座らず、シンヤの前に屈んで彼の膝の上に腕を乗せて話している。そうでもしないとシンヤが突然線路に飛び込んでしまいそうな気がした、今の彼はそんな怖さのある顔をしている。
「…………この格好が本当の君なんだろ? ううん、僕の好みに合わせてくれた健気な格好も本当の君だよね……なんて言おうかな、んー……昔の君だ! 僕と出会う前、いや、僕が助けた君!」
中学の頃、交番が近いことを知っていたから何となくで助けたシンヤ。あの時の彼の姿はハッキリとは覚えていないけれど、今の彼を見ているとこんなだった気がしてきた。僕の脳は単純だ。
「また会えて嬉しいよ、優等生のシンヤくん」
「……いい、の?」
「何が?」
「俺……最短でも、期末テスト終わるまで……黒いままだよ」
「言ったろ? 僕は髪の色なんかで君を見てない。ショックだよ……僕そんなヤツだと思われてたの?」
少しでも笑わせられたらと冗談混じりに言ってみる。シンヤは首を横に振りながら僕の頭を抱き締めた。
「思ってない……思ってなかった……ヒロくんそんな人じゃないって分かってた、大丈夫だって思おうとしたっ! でも、でもっ、でもぉ……俺、怖くて……!」
「うん……うん、怖かったかぁ……大丈夫だよ、ごめんね、安心させられないダメな彼氏で」
「ヒロくん悪くないもん……」
「…………テスト勉強の邪魔したよ、僕」
それに関しては流石のシンヤもあまりよく思っていないようで、反論はなかった。それでいい、全肯定ヒロインは流行っているが現実でそれをされても気味が悪い。
「……学校行こっか、遅刻確定で……また怒鳴られるだろうけど」
「ごめんね、俺のせいで……」
「謝らないで。シンヤくん、僕にはもう謝らなくていいよ、突然引っ叩いたとかそういうのじゃない限り……君がごめんって言う時はだいたい君悪くないんだからね?」
「そうなの……? 気を付けるよ。ごめんね、気を遣わせて」
謝るなと言ったばかりなのに。そう笑って注意するとシンヤはまた謝る、謝罪癖を治すのは簡単なことではなさそうだ。
「……気は済んだ? シンヤくん」
通勤ラッシュがすっかり落ち着いて、学生服の乗客を全く見なくなる頃、ようやくシンヤに僕の声が届くようになった。
「前にもさ、言ったはずなんだけど……僕は君の見た目が変わっても君を嫌いになったりしないよ、黒髪になったって好きなのは変わらないよ」
ぐすぐすと鼻を鳴らしながら頷くシンヤには正直萌える。泣き顔フェチは空気を読まない。
「……僕は確かに君の金髪が好きだったよ。でも、それは……好きなラノベの主人公と同じ髪色だからとか、そんな理由じゃない。僕の好みに合わせてくれた、君の気持ちが嬉しかった。僕なんかに一目惚れして、不良とは正反対の優等生のくせに……不良ぶってる君が可愛かった、愛おしくなった、幸せにしたくなったんだ……ううん、君と幸せにならなきゃいけないって、そう思った」
僕はベンチには座らず、シンヤの前に屈んで彼の膝の上に腕を乗せて話している。そうでもしないとシンヤが突然線路に飛び込んでしまいそうな気がした、今の彼はそんな怖さのある顔をしている。
「…………この格好が本当の君なんだろ? ううん、僕の好みに合わせてくれた健気な格好も本当の君だよね……なんて言おうかな、んー……昔の君だ! 僕と出会う前、いや、僕が助けた君!」
中学の頃、交番が近いことを知っていたから何となくで助けたシンヤ。あの時の彼の姿はハッキリとは覚えていないけれど、今の彼を見ているとこんなだった気がしてきた。僕の脳は単純だ。
「また会えて嬉しいよ、優等生のシンヤくん」
「……いい、の?」
「何が?」
「俺……最短でも、期末テスト終わるまで……黒いままだよ」
「言ったろ? 僕は髪の色なんかで君を見てない。ショックだよ……僕そんなヤツだと思われてたの?」
少しでも笑わせられたらと冗談混じりに言ってみる。シンヤは首を横に振りながら僕の頭を抱き締めた。
「思ってない……思ってなかった……ヒロくんそんな人じゃないって分かってた、大丈夫だって思おうとしたっ! でも、でもっ、でもぉ……俺、怖くて……!」
「うん……うん、怖かったかぁ……大丈夫だよ、ごめんね、安心させられないダメな彼氏で」
「ヒロくん悪くないもん……」
「…………テスト勉強の邪魔したよ、僕」
それに関しては流石のシンヤもあまりよく思っていないようで、反論はなかった。それでいい、全肯定ヒロインは流行っているが現実でそれをされても気味が悪い。
「……学校行こっか、遅刻確定で……また怒鳴られるだろうけど」
「ごめんね、俺のせいで……」
「謝らないで。シンヤくん、僕にはもう謝らなくていいよ、突然引っ叩いたとかそういうのじゃない限り……君がごめんって言う時はだいたい君悪くないんだからね?」
「そうなの……? 気を付けるよ。ごめんね、気を遣わせて」
謝るなと言ったばかりなのに。そう笑って注意するとシンヤはまた謝る、謝罪癖を治すのは簡単なことではなさそうだ。
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