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まるで再出発

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学校に到着すると予定通り叱られた。二人揃っての遅刻は二度目だ、宿泊学習でのキスの件といい俺達は問題生徒と思われているかもしれない。

「でも俺はだいたい悪くないらしいですから謝る必要はないと思うんです」

「シンヤくん、遅刻はだいたいから外れてることなんだよ」

「……ごめんなさい」

電車内でシンヤの謝罪癖を治そうとした弊害が出てきたな、どうしてそう極端なんだ。

「はぁー……やっぱりめちゃくちゃ怒られたね」

「……ごめんね? 俺のせいで」

たっぷり叱られて職員室を出た後、両手を上げて伸びをする。そのまま頭の後ろで手を組んで「気にしていませんよ」とシンヤにアピールする。

「また謝る。君のせいじゃないよ」

「え? でも、遅刻は謝ることってさっきヒロくんが言ったんだよ」

「……先生が怒ってたら一応謝るものなんだよ。理由があるとすれば……遅刻のワケなんて先生は興味ないから、先生の主観的には君が一方的に悪いんだ」

ひねくれた持論を展開しただけなのに、シンヤが真面目に聞いているのがおかしくて笑ってしまう。

「ヒロくんの主観は?」

「可愛いカッコいい大好きなシンヤくんは、悪意を持って何かするような子じゃないって分かってるから、謝られると心が痛いな」

「そうなの? ごめん……あっ、ご、ごめ……あっ…………次から、気を付ける」

「うん。口癖治すのは大変だろうけど、もう少し自信がある話し方すれば本当に自信家になれると思うから、頑張って」

頷くシンヤの頭を撫でて教室に戻った。黒髪になったシンヤを二度見する生徒は多かったが、誰も話しかけてくる様子はない。

「……ねぇシンヤくん、こっち向いて?」

「なぁに? ヒロくん♡」

不良風ファッションはやめたのに、まだ威圧感があるのだろうか? 真っ直ぐこちらを向くように言うと、シンヤは低身長の僕に合わせて背を曲げるし、嬉しそうに頬を緩ませるから、威圧感なんて欠片もない。

「…………ま、いいや」

シンヤに友人が出来ないのは僕個人としては嬉しい。

「どうかしたの?」

「ううん、黒髪も似合うなぁって」

「ヒロくん……♡」

今日はシンヤの家に行けそうだな。昼休みに確認してみるか──と数時間前から決めていたので、昼飯を食べた後に聞いてみた。

「シンヤくん、今日は家に行っていい?」

「もちろん♡」

笑顔可愛さにシンヤの頭を撫でと、髪の触り心地が違う気がした。特に髪の先端は指に引っかかる。痛んでいるようだ、染髪の影響だろうか? だとしたらシンヤの親が許可を出しても染めさせない方がいいかもな。

「ヒロくんに撫でられんのめっちゃ好き♡」

「……家に行ったら何して欲しい?」

「前みたいに……♡」

「前みたいに?」

「…………中出しして♡」

今度ヘアケア用品をプレゼントしようかな、なんて健康的で殊勝な思考が吹っ飛んだ。
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