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教え子を信じて見送ってみた

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根野に愛撫されても抱かれても寝たフリを続け、とうとう中出しまでされた。ちょうど失神しかけているし、根野の陰茎が抜けたら寝よう。

「んっ、くぅうんっ! んっ、ぁ……はぁ……」

「ふーっ……気持ちよかったよ、ノゾム。ノゾムはどうだった?」

後孔はぽっかり開いたままになっているようで、外気を冷たく感じてヒクヒクと震えてしまう。

「ノゾム……やっぱり寝てるか。明日の反応が楽しみだよ」

根野のことだから精液は入れっぱなしにするんだろうなと思っていると、意外なことに彼は柔らかい布を俺の尻に押し当てた。

「んっ……」

質のいい手拭いか何かだろうか、ティッシュでいいのに……

「ん、ぅ…………ぅあっ!? ぁ、うっ、ぅっ、んぅっ、んっ、んんっ!」

ある程度精液を拭われると、次に玩具を挿入された。玉が連なった数珠状のものがくぷっくぷっと……アナルパールか何かか?

「また垂れてきた……」

抜く際に使うリングだけを残して全て挿入された後、溢れたらしい根野の精液がまた拭われた。

「ふ、ぅ……ふぅうっ! ぅ、あぁ……んんっ……」

アナルパールはバイブやディルドと違い、棒状ではない。俺の腸に合わせて曲がってくれるのだ、その個性的なフィット感が快楽に安心感を混ぜる。

「ん、んん……! んっ、ふぅう……」

数珠のような形状のため、玉が一つ入る度に後孔がきゅっと閉じてしまい、二つ目が入る時にまた開かされ、また閉じて、三つ目にまた開かされ──という具合に後孔の開閉が繰り返される。
それは腸壁の各所でも同じだ、玉が通ったと見て締めるとすぐに次の玉がやってきて拡げられる。内側から何度もぼこぼこと腸を動かされては、腹の中に何かが住んでいるような気持ち悪い快感を覚えてしまう。前述のフィット感も生物らしさを演出している。

「ふ、きゅっ、ぅう……んぅ、うぅん……」

また穴の縁や会陰を手拭いで擦られた、きっと根野の精液が垂れていたのだろう。

「こんなもんかな。さ、ノゾム、可愛いお顔見せて」

仰向けにされて慌てて表情筋の力を抜く。目を開けないように意識する。

「……やっぱり寝てるね。ふふ……可愛い」

寝間着を着せられ、タオルケットをかけられる。側頭部の辺りを撫でる優しい手つきに嬉しくなってしまい、思わず擦り寄ると根野の手が止まった。

「…………ノゾム?」

しまった、今の動きは不自然だった、起きているとバレたかもしれない。

「ノゾム……寝てても撫でるとスリスリしてくるんだね、可愛いなぁ、機嫌いい時の猫みたい。あ、猫のコスプレ買っとこうかな……」

本当に気付いていないのか? 鈍すぎじゃないか?

「……っと、その前に……ノゾム、プレゼントだよ」

ふわ、と鼻から下に何か布を被せられた。息苦しいそれの正体はすぐに分かった。ついさっき根野の精液を拭き取った手拭いだ。

「んっ、んんぅぅっ……!」

匂いに反応して身体が勝手にアナルパールを締め付ける。その快感に思わず腰をくねらせ、さらに腸内で活発に動かさせる。電気では動かないアナルパールが俺の中で元気に腸壁を責めている。

「くっ、ぅうんっ、んんんっ……!」

「くねくねしてる……あはっ、なぁにノゾムぅ、僕の精液の匂いも好きなの? かーわいぃ」

俺は手拭いを押し付ける根野の手を振り払い、寝返りを打って横向きに転がった。根野は俺に手を払われた際に手拭いを放してしまっていたようで、まだ俺の顔に手拭いが乗っている。

「……んっ、んん、ん、ん……んっ、ふ……んん」

俺はその手拭いを掴んで──投げようと思った、思っていた、でも、ぎゅっと鼻に寄せてしまった。

「ふ、ぅっ……んんぅ……」

離せない、嗅ぐのをやめられない、勃ってしまうし後孔をヒクつかせてしまう。

「ノゾム……! ふふっ、一緒に寝ようね」

隣に布団を敷いているくせに、根野は俺と同じ布団に寝転がった。背後から抱き締められて、この季節では鬱陶しいはずの体温を与えられる。

「ん、んん……んっ、くぅうんっ……!」

精液の匂いが染み付いた手拭いをしゃぶるように嗅いで、陰茎を求める肉欲に従って腰が動く。根野の腰に腰を擦り付けてしまう。

「ちょっ……お尻で扱かないで、ノゾム……もう、じっとして寝なよ」

お前が原因だと心の中で叫ぶ俺を根野は強く抱き締める。俺の動きを止めるための抱擁に胸と下腹でときめいた俺は、ビクンと身体を跳ねさせて絶頂し、失神し、根野に起こされるまでぐっすりと眠った。




根野に起こされてすぐ、挨拶よりも欠伸よりも前に俺は喘いだ。

「んゔっ……!?」

「おはようノゾム。昨日、君が寝た後に精液とオモチャ入れさせてもらったよ」

「はぁ……? 何してんだよ、センセのばかぁ……」

寝たフリだったことには本当に気付いていないようなので、昨晩の出来事は知らないフリをした。

「ノゾム、とっても可愛かったよ。寝てるのに僕の指とか締め付けてくるし、話しかけるときゅうきゅう締め付けたんだ。すごいねノゾム、無意識で俺に反応出来てた」

「ぅ……」

実は無意識じゃなかったと教えたら根野は落ち込むのかな。しゅんとした顔を見てみたくもあるが、ガッカリはさせたくない。キレる可能性もあるし。

「顔真っ赤……洗っておいで、朝ごはんもう作ってあるから」

「う、うん……」

歳上らしい余裕の微笑みに今までとは別種のときめきを抱いた。根野の魅力といえば放っておけないところだったのに……大人の魅力をチラッと見せられただけでドキドキするなんて、少し悔しい。

「冷たっ……」

赤面していたからかいつもより水が冷たく感じた。タオルで水滴を拭いながら、根野に余裕が産まれたのは田舎での療養のおかげかなと思うと同時に、俺がいない間幻覚を見ていたんだよなと思い直した。

「この療養意味あんのかな……」

衝動的に事件を起こさないという意味ではいいかもしれないが、真の解決にはならなさそうだ。そんな月並みな意見を胸にダイニング……いや、居間へ向かった。

「センセぇ、おはよぉ」

ちゃぶ台の前に座り、根野が用意してくれた朝食を眺める。米に味噌汁、焼魚、和風の定食だ。

「野菜……」

不愉快なことにサラダもある。

「ノゾムが食べられるようにツナとクルトンを混ぜてみたんだ、苦味の少ない野菜を使ったつもりだし、そんな顔せずに食べて欲しいな」

「……ありがとう」

野菜は嫌いだし、食べたくない。でも、俺が食べられそうなものを考えてくれた根野の優しさは嬉しい。

「いただきます」

ニコニコと俺を眺める根野の前で、俺は彼の作った朝食を食べた。根野の勧めで野菜はマヨネーズではなく塩ダレで食べてみたが、これがなかなかキャベツの甘みが引き立っていい感じだ。

「ツナちょっとしょっぱくなりすぎな気もするけど、キャベツにはいいかも」

「でしょー」

「魚もすっごい美味しい、内臓苦手だったんだけど……これ苦くない、すごいね」

「鮎だからね。それ俺が釣ったんだよ」

「マジで!? センセすげぇ!」

一人きりの自宅での朝食とは比べ物にならない、最高の朝だ。このままずっと田舎でゆったりとした時間を根野と二人きりで過ごしたいと思ってしまうほどに

「全部美味しかった! ごちそうさま!」

「うん、完食してくれて嬉しいよ。ご飯粒も何もないね」

やはり作ったものを完食されると嬉しいのだろうか、俺もいつか誰かに手料理を振る舞いたいな。

「全部食べてくれるとお皿洗うの楽だからね」

「あ、そういう……」

「もちろんノゾムが美味しく食べてくれたことも嬉しいよ、それが一番だ。俺が手間暇込めて作ったものをノゾムが美味しく食べる……これはもはやセックスだよね」

最後の一言がなければいい話だったのにな。

「……センセ、お皿洗い俺がしたいけど……ごめん、そろそろ電車の時間だから」

「へっ? ぁ……そう、か。ここ、電車一日一本だもんね、逃しちゃまずい」

根野が俺を気遣って長く寝かせてくれたおかげで時間がギリギリだ、なんて、こんな嫌味ったらしい言い方したいんじゃないのに。

「…………鞄取ってくる」

「渡すものがあるから取ってきたらこっちへ戻っておいで」

言われなくとも根野の元に戻るつもりではあった。鞄を持って戻ると、洗濯を終えていたらしい俺の服を畳んで入れてくれた。

「それと、引越しの日に持ってっちゃったヤツも入れておくね。あの時はもう一生会えないかもって思ってたから……あの後裸で困ったでしょ、ごめんね」

「ホントだよ」

「どうやって帰ったの? 全裸で街練り歩いたの?」

「お兄さんに部屋まで迎えに来てもらった」

「……あのミニ形州か」

二メートルの男よりは小さいと言うだけで百八十近くある男を「ミニ」呼ばわりはどうなのだろう。

「あ、ノゾム。こんな可愛い瓶に入れてくれてたんだね、俺の爪」

「あ……う、うん」

「新しいの入れておくね」

根野は先週切った方とは反対の手の小指の爪を切り、鞄の中に入れてあったストラップの小瓶の中へ入れた。

「コルク栓って味があっていいよね。俺も真空パックやめてこういうオシャレなのにしようかなぁ……あ、ノゾムのもちょうだい。左だっけ、右だっけ」

伸びている方の小指の爪を根野に切らせ、俺の欠片を手のひらに乗せて嬉しそうな根野を眺める。

「センセ、俺そろそろ出なきゃ」

「あぁ……駅まで送るよ」

「うん。あの、センセ……オモチャ」

「来週返して」

「……うん」

挿れたまま帰るしかないようだ。まぁ、帰ると言った時に駄々をこねなかっただけでも進歩かな、でも少しくらい文句を言ってもいいのにな──と、駅までの道を落ち込んで歩く根野を見上げる。

「センセ、また来週来るから、ね?」

「……うん。信じてる、信じてるから……裏切らないで、ノゾム」

「裏切ったりしないよ。じゃあ……ばいばい、センセ」

帰る時が来るまでは俺だけでも笑顔になろうと思っていたけれど、ダメだった。俺と根野は車窓越しに互いの泣きそうな顔を網膜に焼き付けた。
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