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若気の至りって万能の言い訳じゃないから
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実の収穫が終わったら箱詰め作業。収穫の際に分けられなかった不出来な実はここで弾かなければならない。出荷用のロゴ入りの箱に詰める……依頼書には収穫だけって書いてたぞあのオヤジめ。
「はぁ……ちょっと休憩しねぇ? 日没までだろ? 余裕あるじゃん」
俺を含めてバイトは四人、そのうちの誰かがそう言って、箱詰め作業をする小屋の隅で休憩を取る。主人が置いていってくれたオレンジジュースの瓶は氷水に浸けられていて程よく冷たい。二本しかないことを除けば主人は気遣いのできる人だ。
「じゃあ半分こな」
「……あっおい半分以上飲んだだろ今!」
少年達はどうやら三人組の友達らしく、収穫中も三人で何やら話していた。特に仲の良い二人が一本取り、あぶれた少年がもう一本を持って俺の隣に座った。
「えっと……お兄さん……? 半分ずつ……なんですけど」
「ぁ、あぁ……何か、ごめん……」
俺が居なければ友達三人の楽しいバイトだっただろうに。
「先、どうぞ」
「ありがとう……」
暑くてもローブは脱げない。喉が乾いて仕方なかった。とりあえず一口…………不味い。
「……っ」
慌てて飲んだから噎せたフリをして、口を押えて少年に渡す。
「…………俺、もういいわ。残り全部飲みな」
「え? 大丈夫ですか?」
「……そんな喉乾いてないし」
用意されていたのが水だったら飲めたのだろうか。濃いオレンジの味が淫魔の俺には合わなかった。本当に体液以外は摂取できないらしい。
「……あっ、あの、お兄さん」
喉が乾いていたのだろう、少年は一気に半分飲み干し、俺に話しかけてきた。返事が面倒だから気を遣わなくていいのに。
「お兄さん……その、恋人とか好きな人とか居ます?」
「へ……? いや、居ないけど」
何? 恋バナ? 初対面に? まぁ見た感じ中学生くらいの少年だ、大目に見てやろう。年上と見て恋愛相談でもする気か? やめろ、俺は前世では純潔を貫いた男だぞ。
「じゃ、じゃあ……俺、どうですか?」
「…………は?」
どういう意味だ……と続けるつもりだったが、両肩を掴んで壁に押し付けられ、察する。女神に付けられた特性が発揮されてしまった、迂闊にも関節キスをさせてしまったから淫魔の唾液の媚薬効果もあるだろう。
「お、落ち着け……お前な、ちょっと待て! 落ち着け!」
少年の息は荒く、顔は赤い。肩を掴む力も増してきた、顔が近付いてきた。
「……ん? シータ? 何してんだ?」
二人の少年が異常に気付いて近寄ってくる。よし、止めてくれ。
「エイタ、この人見てよ……すっごい可愛い……」
「はぁ? 男じゃん……ん? あれ……」
俺を押さえている少年……シータと呼ばれていたか。シータはエイタというらしい少年に俺を見せるため体を傾けた。
「……な、なぁっ、ヴィータ、この人どう思う?」
エイタは怪訝な顔を焦ったような表情に変え、隣に立っていたヴィータというらしい少年を引っ張った。
「どうって…………ぇ? あれ、何……すっげぇ変な気分」
止めてくれると思って期待したのに悪化した。やばい、一人ならともかく三人がかりで来られたら負ける。このくらいの歳の子供は力はともかく体力がやばい、勝てない。
「……い、いやいやいや、落ち着けよお前ら……俺は……えっと、ゆ、勇者パーティの一人なんだぞ? 俺は大したことないけど、俺に何かしたら勇者が黙ってないぞ?」
社会人の精神を持つ者としては最悪の脅し文句だが、今の俺は生後一週間程度なので問題ない。
「お兄さん……お願い、一回、一回だけキスして……」
ダメだ脅しが効かない。
「シータ……だっけ? 落ち着けよ、性癖と将来歪むぞ」
「一回、一回だけ……お願いお兄さん、お願い」
説得は不可能と判断する。
俺は肩を掴んでいるシータの手を払い、小屋の出口に向かって走る──エイタに足を掴まれて転び、ヴィータに背中に乗られて逃走失敗。
「お兄さんっ……お兄さん、逃げないで、一回だけだからぁ……」
シータが走ってくる。まずい、ローブを捲られたら頭の羽がバレる。
「わ、分かった! 分かった、逃げない、約束する! だから降りろ! えっと……びーた!? 降りろ!」
意外にもヴィータはすんなりと降りてくれた。起き上がると両腕をエイタとヴィータにそれぞれ掴まれる。三人ともズボン越しに分かるほど股間が膨らんでいた。
「キス……だな? 一回だけだぞ?」
「うん! してくれるの?」
「…………離せ。逃げないから」
エイタとヴィータは初めてだろう異常な欲情に言葉が思い付かなくなっているのか、何も言わずに俺の腕を離してローブを掴んだ。俺はそっと両手をシータの顎に添え、上を向かせる。キラキラとした瞳に気後れしつつ唇を一瞬触れさせた。
「……はい終わり! 休憩も終わり! 箱詰めやるぞ!」
「えっ、えっ? ま、待ってよお兄さん……」
「一回っつったろ! 一回しただろ! 短いとかの文句は受け付けねぇぞ、お前何秒とか言わなかっただろ!」
「そんなっ……」
シータは泣きそうな顔になる。やめて欲しい、俺は悪くない。初対面の年上の同性にキスを迫る方が悪い。
「おっ、お兄さん! 俺のお願いも聞いて……!」
「お、俺も俺も! シータだけずるい!」
二人に再び腕に抱き着かれる。シータも泣きながら俺にすがりつく。俺は彼らが性に関しての知識が深くないことを願って、頷いた。
「はぁ……ちょっと休憩しねぇ? 日没までだろ? 余裕あるじゃん」
俺を含めてバイトは四人、そのうちの誰かがそう言って、箱詰め作業をする小屋の隅で休憩を取る。主人が置いていってくれたオレンジジュースの瓶は氷水に浸けられていて程よく冷たい。二本しかないことを除けば主人は気遣いのできる人だ。
「じゃあ半分こな」
「……あっおい半分以上飲んだだろ今!」
少年達はどうやら三人組の友達らしく、収穫中も三人で何やら話していた。特に仲の良い二人が一本取り、あぶれた少年がもう一本を持って俺の隣に座った。
「えっと……お兄さん……? 半分ずつ……なんですけど」
「ぁ、あぁ……何か、ごめん……」
俺が居なければ友達三人の楽しいバイトだっただろうに。
「先、どうぞ」
「ありがとう……」
暑くてもローブは脱げない。喉が乾いて仕方なかった。とりあえず一口…………不味い。
「……っ」
慌てて飲んだから噎せたフリをして、口を押えて少年に渡す。
「…………俺、もういいわ。残り全部飲みな」
「え? 大丈夫ですか?」
「……そんな喉乾いてないし」
用意されていたのが水だったら飲めたのだろうか。濃いオレンジの味が淫魔の俺には合わなかった。本当に体液以外は摂取できないらしい。
「……あっ、あの、お兄さん」
喉が乾いていたのだろう、少年は一気に半分飲み干し、俺に話しかけてきた。返事が面倒だから気を遣わなくていいのに。
「お兄さん……その、恋人とか好きな人とか居ます?」
「へ……? いや、居ないけど」
何? 恋バナ? 初対面に? まぁ見た感じ中学生くらいの少年だ、大目に見てやろう。年上と見て恋愛相談でもする気か? やめろ、俺は前世では純潔を貫いた男だぞ。
「じゃ、じゃあ……俺、どうですか?」
「…………は?」
どういう意味だ……と続けるつもりだったが、両肩を掴んで壁に押し付けられ、察する。女神に付けられた特性が発揮されてしまった、迂闊にも関節キスをさせてしまったから淫魔の唾液の媚薬効果もあるだろう。
「お、落ち着け……お前な、ちょっと待て! 落ち着け!」
少年の息は荒く、顔は赤い。肩を掴む力も増してきた、顔が近付いてきた。
「……ん? シータ? 何してんだ?」
二人の少年が異常に気付いて近寄ってくる。よし、止めてくれ。
「エイタ、この人見てよ……すっごい可愛い……」
「はぁ? 男じゃん……ん? あれ……」
俺を押さえている少年……シータと呼ばれていたか。シータはエイタというらしい少年に俺を見せるため体を傾けた。
「……な、なぁっ、ヴィータ、この人どう思う?」
エイタは怪訝な顔を焦ったような表情に変え、隣に立っていたヴィータというらしい少年を引っ張った。
「どうって…………ぇ? あれ、何……すっげぇ変な気分」
止めてくれると思って期待したのに悪化した。やばい、一人ならともかく三人がかりで来られたら負ける。このくらいの歳の子供は力はともかく体力がやばい、勝てない。
「……い、いやいやいや、落ち着けよお前ら……俺は……えっと、ゆ、勇者パーティの一人なんだぞ? 俺は大したことないけど、俺に何かしたら勇者が黙ってないぞ?」
社会人の精神を持つ者としては最悪の脅し文句だが、今の俺は生後一週間程度なので問題ない。
「お兄さん……お願い、一回、一回だけキスして……」
ダメだ脅しが効かない。
「シータ……だっけ? 落ち着けよ、性癖と将来歪むぞ」
「一回、一回だけ……お願いお兄さん、お願い」
説得は不可能と判断する。
俺は肩を掴んでいるシータの手を払い、小屋の出口に向かって走る──エイタに足を掴まれて転び、ヴィータに背中に乗られて逃走失敗。
「お兄さんっ……お兄さん、逃げないで、一回だけだからぁ……」
シータが走ってくる。まずい、ローブを捲られたら頭の羽がバレる。
「わ、分かった! 分かった、逃げない、約束する! だから降りろ! えっと……びーた!? 降りろ!」
意外にもヴィータはすんなりと降りてくれた。起き上がると両腕をエイタとヴィータにそれぞれ掴まれる。三人ともズボン越しに分かるほど股間が膨らんでいた。
「キス……だな? 一回だけだぞ?」
「うん! してくれるの?」
「…………離せ。逃げないから」
エイタとヴィータは初めてだろう異常な欲情に言葉が思い付かなくなっているのか、何も言わずに俺の腕を離してローブを掴んだ。俺はそっと両手をシータの顎に添え、上を向かせる。キラキラとした瞳に気後れしつつ唇を一瞬触れさせた。
「……はい終わり! 休憩も終わり! 箱詰めやるぞ!」
「えっ、えっ? ま、待ってよお兄さん……」
「一回っつったろ! 一回しただろ! 短いとかの文句は受け付けねぇぞ、お前何秒とか言わなかっただろ!」
「そんなっ……」
シータは泣きそうな顔になる。やめて欲しい、俺は悪くない。初対面の年上の同性にキスを迫る方が悪い。
「おっ、お兄さん! 俺のお願いも聞いて……!」
「お、俺も俺も! シータだけずるい!」
二人に再び腕に抱き着かれる。シータも泣きながら俺にすがりつく。俺は彼らが性に関しての知識が深くないことを願って、頷いた。
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