過労死で異世界転生したのですがサキュバス好きを神様に勘違いされ総受けインキュバスにされてしまいました

ムーン

文字の大きさ
124 / 604

ゴブリンの巣からの脱出

しおりを挟む
首に巻き付けてやった尻尾に力を入れると、ゴブリンはもがき苦しみながら動きを鈍らせていく。醜い声を漏らして口から泡を吹き、そのうちに動かなくなった。

「はぁ、はぁっ…………手、ぅ……痛いっ……!」

俺の両手を貫通して地面に突き刺さったナイフに尻尾を巻き、少しずつ引っ張って抜いていった。

足も手も痛いので腹筋だけで上体を起こし、穴の空いた手を眺めて、不意に腰の横にくたっと落ちた尻尾を見れば、ナイフの柄に巻きついていた。ついさっきまで俺の手に刺さっていたものだ。

「これは……持っていこうか。こっちは……んー」

指を後孔に入れ、中に大量に出された精液を吸収できる位置まで押し込む。それを何度も繰り返す。

「んっ、あ、ぁんっ……指、気持ちぃ……はぁ、はぁっ……あ、きた……不味い……」

いくら不味くて大した魔力が手に入らないといってもないよりはマシだ。

「うん……手、だいぶ治った。足も……」

数十匹分の精液を吸収すると、傷は完治した。足が伸びた訳ではない、膝上の長さのままだ。だが、手のひらと足の断面の傷さえなければ四つん這いで逃げられる、念の為にナイフは尻尾に巻き付けていこう。

「カタラは……巣に連れ込まれてんのかな。外かな……」

四つん這いで慎重に進んでいくと曲がり角に差し掛かり、影に隠れて覗き、ゴブリンが居ないことを確認する。指を舐めて腕を頭上高くに伸ばし、風の流れを調べる。アニメ知識もたまには役に立つ。
松明が壁に刺さっていたり、地面に立てられていたり、転がっていたり。そんな薄暗い道をしばらくく。

「……出口だ」

曲がりくねった細い道の先が明るくなっている。きっと陽光だ。その喜びに洞窟内を動き回ってまた傷だらけになった手のひらと足の断面の痛みが吹っ飛ぶ。

「やった、やった……出れたぁっ!」

外の景色に向かって全力で進み、ようやく洞窟の外に出られた。だが、油断は禁物。出入り口の見張り番らしいゴブリンが真横に立っていた。あちらも驚いているから不意打ちはない、だが、すぐに棍棒を振り上げる。

「……っ、ぅああっ!」

尻尾に巻き付けていたナイフを手に取り、ゴブリンの喉元を狙って突き刺す。ゴブリンは棍棒を落とし、自身の血を手に掬い、喉に刺さったナイフの柄を握ろうとしたところで力尽きた。

「し、死んだ……? 殺した……のか、俺が……」

ナイフを握っている血まみれの手は俺の手だ。尻尾で首を絞めた時よりも「殺した」という感覚が強い。

「い、いや……正当防衛だ。俺はっ、悪くない……」

子供程度の大きさのゴブリンを殺す罪悪感はかなりのものだ。彼らにされたことを何度も反芻し、正当な殺害だと自分に必死に言い聞かせる。

「…………ゲームの主人公ってよくレベル上げなんかできるな……」

俺が殺したのはこれで二匹だ。生まれて最初に襲われたコボルトは弟がトドメを刺したから、俺のカウントではないはず。

「カタラは……大丈夫、だよな……」

どれだけ広いのか、何匹潜んでいるのかも分からないゴブリンの巣に再び入る勇気はない。俺は雄にモテる特性が付与されているから巣に連れて帰られたのであって、カタラは殴られただけで放置された可能性だってある。
仮に巣の中にまだカタラが居るとして、助けに行ったって俺にカタラは救えないし、カタラの脱出の邪魔をしてしまうかもしれない。
俺は誰に言うでもない言い訳を頭に大量に並べて、カタラから目を逸らす理由を得た。

「……早く逃げないと」

罪悪感で足を止めてはいけない。早く巣から離れなければまたゴブリンに捕まる。
痛む手足をついて、俺は再び歩き始めた。

「……アルマ! 居た、よかった、アルマっ、アルマ……! 大丈夫か……?」

ゴブリンに巣まで引きずられた時に背中の皮が剥けたようで、血の跡がしっかりと残っていた。それを辿ると木の根元に転がったアルマの首を見つけた。

「ひっ……!? あ、あっ……嘘、アルマ、嘘ぉ……」

草陰に隠れてアルマをよくよく見てみると、右の頬が破れて奥歯が見えていた。しかし腐り落ちた訳ではなさそうだ、引きちぎられたような──まさかゴブリンか? 持ち帰る途中で俺が抱えていたアルマに気付いて捨てた、それはきっと間違いない。その時に齧ったか何かしたのか?

「どうしよう……アルマ、大丈夫……だよな?」

治りますようにと祈って唇を重ねる。魔力を流し込むイメージは上手く湧かない、これで合っているといいのだが。

「…………とりあえず、ネメスィを探そうな、アルマ。ネメスィはなんだかんだ良い奴なんだ、ちゃんと話せば分かってくれる」

左腕にアルマを抱え、草木を掻き分けて進んでいく。枝葉が皮膚を薄く裂いていく、こんな時にはインキュバスの滑らかで薄い肌が憎い。

「……セーブポイント?」

しばらく進むと泉が見えた。その清浄さはまさにRPGのセーブポイント。

「…………魔力宿ってたりしないかな」

底の石の並びが分かる素晴らしい透明度。きっと飲んでも大丈夫だろうと手で掬って飲んでみる。

「冷たい……けど、それだけだな」

別に魔力が宿っていそうな感じはない。
土汚れが酷いアルマの肌や髪を洗い、口移しで水を飲ませてみたが、頬の穴から零れてしまった。
ゴブリン何十匹分の精液は再生でほとんど使ってしまったし、余っていた分もアルマに注いでしまった。これではネメスィと合流する前に飢え死にしてしまう。泉が魔力も湧かせていてくれたならよかったのに。

「セーブしたいなぁ……あぁでもこれじゃ詰みセーブか……」

前世気分の言動は今や現実逃避だ。
本当に腹が減った、食事をしなければ──野生の魔獣とヤらなければ、アルマも俺も死ぬ。カタラも怪しい。
こういう時に限って見つからなかったりするんだとひねくれつつ、良さげな魔物を探そうと体を反転させると茂みが鳴った。
しおりを挟む
感想 156

あなたにおすすめの小説

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

男子高校に入学したらハーレムでした!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 ゆっくり書いていきます。 毎日19時更新です。 よろしくお願い致します。 2022.04.28 お気に入り、栞ありがとうございます。 とても励みになります。 引き続き宜しくお願いします。 2022.05.01 近々番外編SSをあげます。 よければ覗いてみてください。 2022.05.10 お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。 精一杯書いていきます。 2022.05.15 閲覧、お気に入り、ありがとうございます。 読んでいただけてとても嬉しいです。 近々番外編をあげます。 良ければ覗いてみてください。 2022.05.28 今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。 次作も頑張って書きます。 よろしくおねがいします。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

穏やかに生きたい(隠れ)夢魔の俺が、癖強イケメンたちに執着されてます。〜平穏な学園生活はどこにありますか?〜

春凪アラシ
BL
「平穏に生きたい」だけなのに、 癖強イケメンたちが俺を狙ってくるのは、なぜ!? トラブルを避ける為、夢魔の血を隠して学園生活を送るフレン(2年)。 彼は見た目は天使、でも本人はごく平凡に過ごしたい穏健派。
なのに、登校初日から出会ったのは最凶の邪竜後輩(1年)!? 
他にも幼馴染で完璧すぎる優等生騎士(3年)に、不良だけど面倒見のいい悪友ワーウルフ(同級生)まで……なぜか異種族イケメンたちが次々と接近してきて―― 運命の2人を繋ぐ「刻印制度」なんて知らない! 恋愛感情もまだわからない! 
それでも、騒がしい日々の中で、少しずつ何かが変わっていく。 個性バラバラな異種族イケメンたちに囲まれて、フレンの学園生活は今日も波乱の予感!? 
甘くて可笑しい、そして時々執着も見え隠れする 愛され体質な主人公の青春ファンタジー学園BLラブコメディ! 毎日更新予定!(番外編は更新とは別枠で不定期更新) 基本的にフレン視点、他キャラ視点の話はside〇〇って表記にしてます!

牛獣人の僕のお乳で育った子達が僕のお乳が忘れられないと迫ってきます!!

ほじにほじほじ
BL
牛獣人のモノアの一族は代々牛乳売りの仕事を生業としてきた。 牛乳には2種類ある、家畜の牛から出る牛乳と牛獣人から出る牛乳だ。 牛獣人の女性は一定の年齢になると自らの意思てお乳を出すことが出来る。 そして、僕たち家族普段は家畜の牛の牛乳を売っているが母と姉達の牛乳は濃厚で喉越しや舌触りが良いお貴族様に高値で売っていた。 ある日僕たち一家を呼んだお貴族様のご子息様がお乳を呑まないと相談を受けたのが全ての始まりー 母や姉達の牛乳を詰めた哺乳瓶を与えてみても、母や姉達のお乳を直接与えてみても飲んでくれない赤子。 そんな時ふと赤子と目が合うと僕を見て何かを訴えてくるー 「え?僕のお乳が飲みたいの?」 「僕はまだ子供でしかも男だからでないよ。」 「え?何言ってるの姉さん達!僕のお乳に牛乳を垂らして飲ませてみろだなんて!そんなの上手くいくわけ…え、飲んでるよ?え?」 そんなこんなで、お乳を呑まない赤子が飲んだ噂は広がり他のお貴族様達にもうちの子がお乳を飲んでくれないの!と言う相談を受けて、他のほとんどの子は母や姉達のお乳で飲んでくれる子だったけど何故か数人には僕のお乳がお気に召したようでー 昔お乳をあたえた子達が僕のお乳が忘れられないと迫ってきます!! 「僕はお乳を貸しただけで牛乳は母さんと姉さん達のなのに!どうしてこうなった!?」 * 総受けで、固定カプを決めるかはまだまだ不明です。 いいね♡やお気に入り登録☆をしてくださいますと励みになります(><) 誤字脱字、言葉使いが変な所がありましたら脳内変換して頂けますと幸いです。

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

寝てる間に××されてる!?

しづ未
BL
どこでも寝てしまう男子高校生が寝てる間に色々な被害に遭う話です。

俺、転生したら社畜メンタルのまま超絶イケメンになってた件~転生したのに、恋愛難易度はなぜかハードモード

中岡 始
BL
ブラック企業の激務で過労死した40歳の社畜・藤堂悠真。 目を覚ますと、高校2年生の自分に転生していた。 しかも、鏡に映ったのは芸能人レベルの超絶イケメン。 転入初日から女子たちに囲まれ、学園中の話題の的に。 だが、社畜思考が抜けず**「これはマーケティング施策か?」**と疑うばかり。 そして、モテすぎて業務過多状態に陥る。 弁当争奪戦、放課後のデート攻勢…悠真の平穏は完全に崩壊。 そんな中、唯一冷静な男・藤崎颯斗の存在に救われる。 颯斗はやたらと落ち着いていて、悠真をさりげなくフォローする。 「お前といると、楽だ」 次第に悠真の中で、彼の存在が大きくなっていき――。 「お前、俺から逃げるな」 颯斗の言葉に、悠真の心は大きく揺れ動く。 転生×学園ラブコメ×じわじわ迫る恋。 これは、悠真が「本当に選ぶべきもの」を見つける物語。 続編『元社畜の俺、大学生になってまたモテすぎてるけど、今度は恋人がいるので無理です』 かつてブラック企業で心を擦り減らし、過労死した元社畜の男・藤堂悠真は、 転生した高校時代を経て、無事に大学生になった―― 恋人である藤崎颯斗と共に。 だが、大学という“自由すぎる”世界は、ふたりの関係を少しずつ揺らがせていく。 「付き合ってるけど、誰にも言っていない」 その選択が、予想以上のすれ違いを生んでいった。 モテ地獄の再来、空気を読み続ける日々、 そして自分で自分を苦しめていた“頑張る癖”。 甘えたくても甘えられない―― そんな悠真の隣で、颯斗はずっと静かに手を差し伸べ続ける。 過去に縛られていた悠真が、未来を見つめ直すまでの じれ甘・再構築・すれ違いと回復のキャンパス・ラブストーリー。 今度こそ、言葉にする。 「好きだよ」って、ちゃんと。

処理中です...