過労死で異世界転生したのですがサキュバス好きを神様に勘違いされ総受けインキュバスにされてしまいました

ムーン

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リサーチ不足は大失態

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大人数がバックヤードに集まったが、大事な話し合いはホテルの責任者と査定士に任せられた。

「この度は本当に申し訳ない……何分、あのようなドラゴン達は見たことがなく」

責任者は深々と頭を下げたが、言い訳は忘れない。確かにインキュバスと人間、オーガなどとのハーフ……? クォーター? 何だろう……トリプル?
まぁ、よく分かんないよな、あの子達の種類は。

「見知らぬ種なら保護者に尋ねるべきでしたね」

「あぁ、ドラゴンには特定の植物が有毒になってしまう種、肉を食うと消化不良を起こす種、小麦粉を摂取すると暴れ出す種……様々存在する。適当に基本種のドラゴン用の食事を与えるのは危険だ」

「……扱いに注意が必要な種のドラゴンは、見た目からして特殊な場合が多いので……基本種の派生だろうと」

俺を強姦して孕める身体にしたあのドラゴン、基本種だったのかな? っていうか基本種って何? 犬で言うと品種改良してないヤツとか?

「なぁシャル」

「しーっ……今、おじさんが真面目なお話をされてます」

「……口喧嘩する前にあの子に飯食べさせないと。めちゃくちゃお腹すかせてるんだ……すぐに飯持ってくるって言ったし、早く行かなきゃ」

「おじさん! 中断願います!」

シャルは査定士達の話を止めて俺が今した話をし、厨房から肉を持っていく許可を得た。しかし巨大なドラゴンが満足する量の肉を持っていくなんて非力なインキュバスには二人がかりでも不可能だ。

「頑張ってねパパ」

「あぁ、任せてくれ。前がよく見えないから誘導は頼むよ」

台車に積んだ大量の肉塊によりアルマの視界は塞がれている。なので俺が先導し、シャルが肉を崩れないように支えつつ横を歩くことになった。

「扉も大きいですね……天井がとても高いです。一階だけの高さで僕達の棟の四階分はありそうですね」

「あるかもな。あ、ここだ。右折だアルマ、出来るか?」

猫用扉のような穴を抜けて再び赤いドラゴンの部屋へやってきた。何もかもが巨大な部屋にアルマとシャルは周囲を見回す首を止められないようだった。

「ままぁ! みぅう、ままぁ、おカえリナさい」

「あぁ、ただいま。飯持ってきたぞ。それとほら、お父さんも来てくれたぞ」

「ぱぱ? ぱぱぁ! 久シぶり、ぱぱ!」

「あぁ……すまなかったな、会いに来てやれなくて」

アルマは鱗の位置や向きを気にせずに撫で回しても手のひらを切ったりしないようだ。少し気を抜いただけで怪我をする俺はドラゴンの親には向いていないんだろうな。

「よい、しょっ……ほら、肉……!」

まぁ親になったら向き不向きなんて関係ない。非力だろうと肉の塊を持ち上げて、腹を空かした我が子の口に投げ込むのだ。

「腰がっ……!」

「ぁむっ……ん、ん……オイしい。ありがとうままぁ」

ぎっくり腰になろうとも我が子の「おいしい」の言葉と笑顔が返ってくるのなら安いものだ。

「無茶しちゃいけませんよ兄さん。お義兄さん、台車をもう少し押してください、お子さんの口元まで……」

「あぁ、分かってる。おーい、見えるか? 肉はここだぞ」

「はぁ……痛た……ぎっくり腰も再生すんのか、魔物便利……お、美味そうに食ってるな。今日からはちゃんと腹いっぱい飯持ってくるようにしてやるからな、今まで本当にごめんな」

「めぅう……みぃ、みぃぃ」

アルマと共に夫婦二人でドラゴンの顔を撫でてやると、ドラゴンは嬉しそうな甲高い鳴き声を上げた。

「……じゃあ、お母さん達はそろそろ戻るな。来れたらまた来るから」

「みぃ、ままぁ、ぱぱぁ、シャルおじさん、バイバイ」

「おじっ……!? い、いえ……さようなら…………おじさん、僕は……おじさん、ですか」

「おっさんって意味のおじさんと叔父って意味のおじさんは違うから! なっ、落ち込むなよシャル。お前はまだまだ若いよ」

生まれて一年も経っていないのに「おじさん」は辛いだろう。帰り道ではネメスィと共にシャルを励ました。考えようによっては歳の近い甥姪は可愛いものだろうと結論が付いたが、そういえばドラゴン達の雌雄は分かっていないなぁと新たな疑問も生まれた。

「ただいま戻りました。おじさん、話はつきましたか?」

「あぁ、ついたぜ。慰謝料がっぽり! っていけばよかったんだけどなぁ」

「……サクは大事な時期だからね、変に恨みを買ってはいけない。とりあえずドラゴン達の外出許可と、私達全員のドラゴン棟の自由出入り許可、宿泊料金と食事代の全額返金、で済ませておいたよ。それに、サクの島にも何かホテルのようなものを建てるとなった時は、無償でノウハウをご教授いただけるそうだ」

ただ慰謝料を毟り取るよりも狡賢いような……まぁ、俺が欲しかったのは金ではなく、子供達に自由に会える権利だ。過程はともかく結果は最高だろう。

「自由出入り……! それじゃあ僕、僕の子の様子見てきていいですか?」

「あっ俺も行きたい」

「……俺も行く」

シャル、カタラ、ネメスィがバックヤードから飛び出していった。微笑ましく思いつつ、俺も一緒に走ってしまいたい思いを押し殺して査定士に礼を言う。

「ありがとうおじさん。助かったよ。特に自由出入り、本当に嬉しい。大好きだよ、ありがとう」

椅子に座った彼の上に乗り、抱き締め合ってキスをする。流石に舌までは絡めずに離れ、ホテル職員達に嫌味っぽくお辞儀をしてバックヤードを後にした。

「アルマ、おじさん、一緒に子供達のとこ行くよな? もちろん以外の返答は認めないぞ!」

太くたくましい腕と、細身ながらも老練な腕。左右の腕にそれらを絡めてドラゴン棟へ歩き出す。

「ふ……もちろんだ。俺ももっと子供達と話したい」

「あぁ、もちろんだよ、サク。私のことを忘れていないか不安だね」

「よぉーっし、れっつごー!」

飲んでも酔えないくせに深酒をしたかのようにはしゃぐ俺に、二人は生温かい視線を向けていた。
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