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双子の弟との女装
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いよいよ宴会の日がやってきた。査定士に予約を頼んだ日からは結構経ったが、子供達の棟への出入りが自由になっていたので待ち時間が長いとは思えなかった。
「せっかくだしさ、オシャレして行きたいよな。なぁシャルぅ、お兄ちゃんにトータルコーディネートしてくれよ。この服もエロ可愛いけど普段着になっちゃってるしさ、もっとこう宴会向けなの!」
宴会は昼遅くからの予定だ。現在は朝、宴会への期待で胸が躍っている。
「宴会向けと言われましても……」
シャルに新しい服をねだっているのだが、デザインが思い付かないらしく彼の顔は暗い。
「えっと……そうだな、このチョーカーに合う感じで頼む。高級感あって、ベースは黒、靴はブーツみたいな重いのじゃないのがいいな。上品な感じがいい」
「…………はぁ、チョーカー……ですか」
土産屋で買ったショゴスストラップに合わせたデザインの服も欲しいが、グロ可愛い服は宴会には合わない。今日着る服ではない。
「黒……この帯は布製ですね、銀糸の刺繍があって……この刺繍を真似て……」
シャルはぶつぶつと呟きながら俺が着ていた服を魔力に戻した。
「まずは黒で……羽と尻尾を出す穴は確保して……上品さ、上品……? インキュバスが……? とりあえず長袖にしますね」
黒い布が身体に張り付いていく。チョーカーとは隙間を開けつつも襟ぐりは狭く、胸も腹も露出なく覆う。背中は肩甲骨の下から尻尾の下までを露出し、腰から下は長いスカート、靴は黒いハイヒール。
「……シャル? 女装か? これ」
「ドレスなら露出が多くても品を出せますが、男物のフォーマル……つまりはスーツですね、これは難しいんです。形がほぼ決まってますから」
肩から手首を覆う袖は肌が透ける黒布で、インキュバスらしいセクシーさもある。しかしスカートはふんわりと広がって足のシルエットを教えない。
宴会向けというか、舞踏会向けでは? シャルの中の宴会像ってどうなってるんだろう。
「頭が寂しいですね……」
「ハゲてるみたいな言い方やめろよ!」
「羽に飾りをつけましょうか」
シャルの手には黒いレースのリボンがあった。完全に女装だなと腹を括り、頭羽の付け根にリボンを結ばせる。
「袖やスカートにチョーカーと同じ銀糸の刺繍を施して……こんな感じですかね、どうですか?」
姿見の前に立つ。お姫様のようなシルエットだ、中性的な童顔なせいで女装に違和感が少ない、こうなってくると短髪なのが気に入らない。
「……シャルー、メイクって出来る? お化粧。後さ……髪もうちょい伸ばしたい」
「お化粧、ですか……経験はありませんがやってみます。髪は兄さん次第ですよ、伸びるよう意識してください、コツは教えますから」
髪を伸ばすコツを教わり、シャルが俺にメイクを施してくれる間に頭に意識を集中させて髪を伸ばした。
「出来ました! 兄さんも少し髪伸びましたね」
「おぉ! 可愛い……お前メイク上手いじゃん。髪……ほとんど伸びてねぇけど、まぁこんくらいでいいかな、ちょっと整えたいなぁ……」
インキュバスの身体の便利さとシャルのメイク技術に感心する。髪はネメシスくらいには伸びた、つまりボブだ。
「髪もやりましょうか」
「そうだな、頼む……ぁ、そうだ、ヘアスタイルなんだけどさ」
ヘアメイクもシャルに頼み、髪にウェーブをかけてもらった。シャルの天パに少し似た気がする。
「ショートカットでもウェーブあれば姫感あるじゃん! シャルとお揃いっぽくなるし……そうだ、シャルもこのドレスにしようぜ、紫とかの色違いで!」
「恥ずかしいから嫌です……」
「お前っ……お兄ちゃんはこの格好してるんだぞ!? 一回着てみろよ、可愛さでテンション上がって女装への抵抗なくなるから!」
「……兄さんがそんなに言うなら」
気乗りしないようだったが、シャルが俺の要求を断ることはまずない。少し食い下がっただけで簡単にドレスに着替えてくれた。
「おぉ……! 可愛いぞシャルぅ!」
「かさばりますね、スカートのボリューム減らします」
「マーメイド風だな、いいじゃん可愛いじゃん。宴会だったらほぼ座ってるだろうし、座った時にもさっとしないこっちのがいいなぁ、俺のもボリューム減らしてくれよ」
大きな鏡があるのに俺達は互いを見ながら服のデザインを整えた。シャルは俺が以前贈った髪留めまでつけて、本当に愛らしい姿になった。
「メイクまで終わると本当に女の子だな……! 可愛いぞぉシャルぅ、いつものお前も可愛いが今ももちろん可愛い!」
「そ、そんな……兄さん、そんなに褒められると照れちゃいます……」
「チーク要らずか? 可愛いなぁ……そうだ、姉さんって呼んでみ」
「え……? ね、姉さん? ですか?」
「あ~可愛い~! 妹が可愛いですわ~!」
「ちょ、ちょっと兄さん……大丈夫ですか?」
テンションが上がってついつい双子姉妹プレイを強要してしまった。はしゃいでいるとロビーでの待ち合わせの時間が近くなった、俺は何も考えずに部屋の外へ飛び出したが、シャルはドレス姿が恥ずかしいのか出てこない。
「兄さん……やっぱり僕は普段着で……」
「だーめ! 行くぞ、ほら、可愛いから大丈夫!」
「ひ、引っ張らないで……このスカート歩きにくいんですっ」
ぐずるシャルを引きずってロビーに到着。まだ誰も来ていなかったのでソファに腰掛けて待つ。シャルは周囲をキョロキョロと見回して身体を縮めており、とても可愛らしい。
「兄さんっ……やっぱり僕着替えます」
「ダメだ」
「恥ずかしいですぅ……」
「恥ずかしがるシャル可愛いから大丈夫!」
「何も大丈夫じゃありません! もぉっ……!」
どれだけ恥ずかしくても俺の許可を得ずに着替えるという発想はないらしく、シャルは赤い顔のまま俯いた。
「サク、シャル、待たせたか? すまない」
重たい足音がこちらに近付いてくる。優しい声にアルマだと確信を抱いて振り向く。シャツにジーンズという普段着のアルマは俺とシャルの顔を見ると笑顔を消した。
「え? あっ……す、すまない、人違い……? いや、サク……か?」
「何ボケてるんだよ、嫁の顔忘れたのか?」
「い、いや……忘れていないから混乱しているんだ。驚いたな、どこかの令嬢かと……化粧をしているのか?」
屈んで俺の顔を間近で見つめ、微笑む。途端に俺の顔も真っ赤になった。
「髪型も少し変わったか? シャルと似ているな、くせっ毛も似合うよ、可愛い」
「えへへへー……そんなぁ、可愛いなんてぇ……えへへへへ」
ソファに座ったアルマの膝に座らせてもらい、何度も褒められて俺はでれでれと照れ笑いをするだけになる。そうしているとまた誰かが駆け寄ってくる。
「やぁ、早いね、まだ時間じゃないのに……おや、サク、シャル……その格好は?」
「おじさん! 見て見て、シャルが作ってくれたんだ、メイクもしてくれたし髪型も変えた、どぉ?」
アルマの膝から飛び降りてその場で一回転、両手を広げて評価を求めると査定士は笑顔で抱き締めてくれた。
「とても可愛らしいよ、お嬢さん」
「えへへー……なんか上品さ求めたら女装になってさぁ」
「似合うよ、サクには性別の垣根なんてないんだね」
「まぁ実際アルマの嫁だし、五児の母だしな!」
胸を張って再びアルマの膝に座る。シャルはいつの間にかアルマの背に隠れていた。
「シャル? どうしたんだい、君の可愛い姿も見せておくれ」
「…………恥ずかしいので、あまり見ないでください」
恐る恐る査定士の前に歩み出たシャルは目を潤ませていた。
「……っ!? 可愛い、素晴らしい、そんなにも羞恥に歪んだ顔が出来るなんて……! あぁ、愛らしい、可愛いよシャル」
そういえば査定士は俺の恥ずかしがる顔や仕草が好きだと言っていたな。インキュバスには珍しいとか何とか言ってたが、ただの趣味だろ。
「とてもよく似合っているよ、シャル。いつものように私の膝においで」
アルマの隣に座った査定士はぽんと膝を叩く。シャルは恐る恐る査定士の膝に腰を下ろす。足を揃えて控えめに座る様はまさに淑女だ。
「あぁ……可愛い、なんて可愛い…………一生養いたいっ……!」
「限界オタクみたいだよおっさん……」
思わずおっさんと呼んでしまうくらい、査定士は敬意が薄れる表情をしていた。
「せっかくだしさ、オシャレして行きたいよな。なぁシャルぅ、お兄ちゃんにトータルコーディネートしてくれよ。この服もエロ可愛いけど普段着になっちゃってるしさ、もっとこう宴会向けなの!」
宴会は昼遅くからの予定だ。現在は朝、宴会への期待で胸が躍っている。
「宴会向けと言われましても……」
シャルに新しい服をねだっているのだが、デザインが思い付かないらしく彼の顔は暗い。
「えっと……そうだな、このチョーカーに合う感じで頼む。高級感あって、ベースは黒、靴はブーツみたいな重いのじゃないのがいいな。上品な感じがいい」
「…………はぁ、チョーカー……ですか」
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「黒……この帯は布製ですね、銀糸の刺繍があって……この刺繍を真似て……」
シャルはぶつぶつと呟きながら俺が着ていた服を魔力に戻した。
「まずは黒で……羽と尻尾を出す穴は確保して……上品さ、上品……? インキュバスが……? とりあえず長袖にしますね」
黒い布が身体に張り付いていく。チョーカーとは隙間を開けつつも襟ぐりは狭く、胸も腹も露出なく覆う。背中は肩甲骨の下から尻尾の下までを露出し、腰から下は長いスカート、靴は黒いハイヒール。
「……シャル? 女装か? これ」
「ドレスなら露出が多くても品を出せますが、男物のフォーマル……つまりはスーツですね、これは難しいんです。形がほぼ決まってますから」
肩から手首を覆う袖は肌が透ける黒布で、インキュバスらしいセクシーさもある。しかしスカートはふんわりと広がって足のシルエットを教えない。
宴会向けというか、舞踏会向けでは? シャルの中の宴会像ってどうなってるんだろう。
「頭が寂しいですね……」
「ハゲてるみたいな言い方やめろよ!」
「羽に飾りをつけましょうか」
シャルの手には黒いレースのリボンがあった。完全に女装だなと腹を括り、頭羽の付け根にリボンを結ばせる。
「袖やスカートにチョーカーと同じ銀糸の刺繍を施して……こんな感じですかね、どうですか?」
姿見の前に立つ。お姫様のようなシルエットだ、中性的な童顔なせいで女装に違和感が少ない、こうなってくると短髪なのが気に入らない。
「……シャルー、メイクって出来る? お化粧。後さ……髪もうちょい伸ばしたい」
「お化粧、ですか……経験はありませんがやってみます。髪は兄さん次第ですよ、伸びるよう意識してください、コツは教えますから」
髪を伸ばすコツを教わり、シャルが俺にメイクを施してくれる間に頭に意識を集中させて髪を伸ばした。
「出来ました! 兄さんも少し髪伸びましたね」
「おぉ! 可愛い……お前メイク上手いじゃん。髪……ほとんど伸びてねぇけど、まぁこんくらいでいいかな、ちょっと整えたいなぁ……」
インキュバスの身体の便利さとシャルのメイク技術に感心する。髪はネメシスくらいには伸びた、つまりボブだ。
「髪もやりましょうか」
「そうだな、頼む……ぁ、そうだ、ヘアスタイルなんだけどさ」
ヘアメイクもシャルに頼み、髪にウェーブをかけてもらった。シャルの天パに少し似た気がする。
「ショートカットでもウェーブあれば姫感あるじゃん! シャルとお揃いっぽくなるし……そうだ、シャルもこのドレスにしようぜ、紫とかの色違いで!」
「恥ずかしいから嫌です……」
「お前っ……お兄ちゃんはこの格好してるんだぞ!? 一回着てみろよ、可愛さでテンション上がって女装への抵抗なくなるから!」
「……兄さんがそんなに言うなら」
気乗りしないようだったが、シャルが俺の要求を断ることはまずない。少し食い下がっただけで簡単にドレスに着替えてくれた。
「おぉ……! 可愛いぞシャルぅ!」
「かさばりますね、スカートのボリューム減らします」
「マーメイド風だな、いいじゃん可愛いじゃん。宴会だったらほぼ座ってるだろうし、座った時にもさっとしないこっちのがいいなぁ、俺のもボリューム減らしてくれよ」
大きな鏡があるのに俺達は互いを見ながら服のデザインを整えた。シャルは俺が以前贈った髪留めまでつけて、本当に愛らしい姿になった。
「メイクまで終わると本当に女の子だな……! 可愛いぞぉシャルぅ、いつものお前も可愛いが今ももちろん可愛い!」
「そ、そんな……兄さん、そんなに褒められると照れちゃいます……」
「チーク要らずか? 可愛いなぁ……そうだ、姉さんって呼んでみ」
「え……? ね、姉さん? ですか?」
「あ~可愛い~! 妹が可愛いですわ~!」
「ちょ、ちょっと兄さん……大丈夫ですか?」
テンションが上がってついつい双子姉妹プレイを強要してしまった。はしゃいでいるとロビーでの待ち合わせの時間が近くなった、俺は何も考えずに部屋の外へ飛び出したが、シャルはドレス姿が恥ずかしいのか出てこない。
「兄さん……やっぱり僕は普段着で……」
「だーめ! 行くぞ、ほら、可愛いから大丈夫!」
「ひ、引っ張らないで……このスカート歩きにくいんですっ」
ぐずるシャルを引きずってロビーに到着。まだ誰も来ていなかったのでソファに腰掛けて待つ。シャルは周囲をキョロキョロと見回して身体を縮めており、とても可愛らしい。
「兄さんっ……やっぱり僕着替えます」
「ダメだ」
「恥ずかしいですぅ……」
「恥ずかしがるシャル可愛いから大丈夫!」
「何も大丈夫じゃありません! もぉっ……!」
どれだけ恥ずかしくても俺の許可を得ずに着替えるという発想はないらしく、シャルは赤い顔のまま俯いた。
「サク、シャル、待たせたか? すまない」
重たい足音がこちらに近付いてくる。優しい声にアルマだと確信を抱いて振り向く。シャツにジーンズという普段着のアルマは俺とシャルの顔を見ると笑顔を消した。
「え? あっ……す、すまない、人違い……? いや、サク……か?」
「何ボケてるんだよ、嫁の顔忘れたのか?」
「い、いや……忘れていないから混乱しているんだ。驚いたな、どこかの令嬢かと……化粧をしているのか?」
屈んで俺の顔を間近で見つめ、微笑む。途端に俺の顔も真っ赤になった。
「髪型も少し変わったか? シャルと似ているな、くせっ毛も似合うよ、可愛い」
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ソファに座ったアルマの膝に座らせてもらい、何度も褒められて俺はでれでれと照れ笑いをするだけになる。そうしているとまた誰かが駆け寄ってくる。
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アルマの膝から飛び降りてその場で一回転、両手を広げて評価を求めると査定士は笑顔で抱き締めてくれた。
「とても可愛らしいよ、お嬢さん」
「えへへー……なんか上品さ求めたら女装になってさぁ」
「似合うよ、サクには性別の垣根なんてないんだね」
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胸を張って再びアルマの膝に座る。シャルはいつの間にかアルマの背に隠れていた。
「シャル? どうしたんだい、君の可愛い姿も見せておくれ」
「…………恥ずかしいので、あまり見ないでください」
恐る恐る査定士の前に歩み出たシャルは目を潤ませていた。
「……っ!? 可愛い、素晴らしい、そんなにも羞恥に歪んだ顔が出来るなんて……! あぁ、愛らしい、可愛いよシャル」
そういえば査定士は俺の恥ずかしがる顔や仕草が好きだと言っていたな。インキュバスには珍しいとか何とか言ってたが、ただの趣味だろ。
「とてもよく似合っているよ、シャル。いつものように私の膝においで」
アルマの隣に座った査定士はぽんと膝を叩く。シャルは恐る恐る査定士の膝に腰を下ろす。足を揃えて控えめに座る様はまさに淑女だ。
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