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あなたに抱く衝動は (〃)
ネザメはぽやぽやしていて可愛らしい。彼と接した誰もがそう思うだろう。ミステリアスで儚げで、夢で見かけた美少年のように微笑んでおきながら、少し仲良くなれば可愛らしいポンコツっぷりを晒す。そのギャップはまさに沼、一度ハマれば出られない。警戒心も危機感も薄い美しい生き物を、自分だけのものにしたくなる。
「ぽやぽや、というのは……間が抜けているとか、そういう意味じゃないよね?」
「少なくとも俺はそういう意味で使ってません。オノマトペなので、どうしても個人の解釈によるところが大きいですけど……俺は、おっとりしてて可愛いって意味で使ってます」
「おっとり……たまに言われるよ」
「ネザメさん優雅ですから。所作の一つ一つが丁寧というか……せかせかしてなくて、なんかネザメさんの周囲だけ空気が違うんですよ」
ミフユがうんうんと力強く頷いている。俺の目を見つめて俺の話をしっかりと聞きつつも、ネザメはミフユの反応も見て、照れくさそうに微笑んだ。普段、何でもないモブ共の上に立つ時のネザメは──たとえば生徒会長として挨拶をする時などは──どこか不敵さを感じさせる微笑みを見せる。彼のミステリアスな雰囲気を作る一因だ。
(かっわ、いい……!)
しかし気を許した相手に対しては屈託のない笑顔を見せる。邪気など全くない、幼子のような清純さを感じさせるのだ。だから穢したくなる。俗世で汚濁にまみれる前に、俺の手で壊してやりたくなる。
「……水月くん?」
あぁ全く、微笑み一つでゾクゾクさせてくれる。
「水月くん、水月くんったら」
「鳴雷一年生、ネザメ様がお呼びだぞ。早く返事をせんか」
「……あっ、あぁすいません、ちょっとボーッとしちゃって」
「ボーッと……? 僕と話している時に、他のことを考えないで欲しいな」
「考えてませんよ……ネザメさんがあんまり可愛いから、どうしてやろうかって、もう……自分によくない衝動あること思い知っちゃったりして、頭おかしくなりそうで、もうホント、ほんっと……狂う……」
「……? よくない衝動って何だい?」
「言えませんよ、よくないんだから……行動には絶対移しませんから、心配しないでください。自制心には自信があります。ネザメさんにはネザメさんが喜ぶことしかしませんよ」
「…………暴力的なことじゃないよね? 僕に腹が立つとか」
「違います! 誓って、違います」
そうだ、違う、違うと口にすれば自分の声が耳から入って脳に染み込み、そのうち本心から違うと言えるはずだ。暴力的な性衝動だ、乱暴に抱きたい、泣かせたい……ネザメに怒っている訳じゃない、彼に気に入らない部分なんて一つもない。キュートアグレッションと言ってしまえばそれに似た、独占欲だの支配欲だの入り交じった醜い性欲だ。
「だよね、水月くんはそんなことしない……優しい君がよくないと思うことは、きっと世間一般的には大したことがない「よくない」なんだろう。僕にとってはどうなんだろうね」
「……結構よくないことですよ?」
「もし、もしそれが、その……べ、ベッドの上で、行いたいことに関する衝動なら……僕を、その、少々乱暴に……暴きたい、とかなら…………僕、僕は、構わないよ、君になら……水月くんになら、少しくらい痛いことでも、苦しいことでも…………君の愛を感じられるなら、僕は」
「ダメです」
「……水月くん?」
「やめてくださいそんなこと言うの……愛情は苦痛なんかじゃない、そんなことするの愛情じゃない。嬉しくて気持ちいいことだけが愛情なんです、そう思っててください、もし俺が酷いことしたらすぐ怒ってください」
「…………どうしてそんな泣きそうな顔をするんだい」
「……他の彼氏の話をしても?」
「もちろん構わないよ、妬んだりしないさ。君がどんなふうに人を愛するのか聞かせておくれ」
「…………俺が、衝動的に酷いことしちゃっても、許してくれるんです。みんな……セイカとか特に。嫌がって欲しい、怒って欲しい、許さないで欲しい……俺を調子に乗らせないで欲しいんです、美少年達から愛を返してもらえるのは得難い幸運だってずっと思わせて欲しい、初心を忘れたくない……傲慢になりたくない」
「水月くん……そう思えるだけで君は素晴らしい、美しい心の持ち主だよ。だからきっとみんな許してしまうんだ、君が深く反省していると分かるから」
「…………」
「水月くん、そんな顔をしないで。どうしてそんなに自分に厳しくするんだい? もっと認めてあげて、君自身を。君は身も心も美しいんだ、だから僕は君のことが好きなんだ、何をされてもいいと思えるし、何もかも君がいい。触れるのも、キスをするのも、手を掴まれるのも、何もかも……」
「…………ネザメさん」
「……寝室に行こうか」
今日の昼間は俺が少し甘い言葉をかけるだけで倒れるほど照れていたくせに、今は俺を安心させる優しい微笑みをたたえて俺に手を差し伸べる。その手を取る以外の選択肢はなく、熱に浮かされたように歩いて、大きなベッドの前まで来た。
「ぽやぽや、というのは……間が抜けているとか、そういう意味じゃないよね?」
「少なくとも俺はそういう意味で使ってません。オノマトペなので、どうしても個人の解釈によるところが大きいですけど……俺は、おっとりしてて可愛いって意味で使ってます」
「おっとり……たまに言われるよ」
「ネザメさん優雅ですから。所作の一つ一つが丁寧というか……せかせかしてなくて、なんかネザメさんの周囲だけ空気が違うんですよ」
ミフユがうんうんと力強く頷いている。俺の目を見つめて俺の話をしっかりと聞きつつも、ネザメはミフユの反応も見て、照れくさそうに微笑んだ。普段、何でもないモブ共の上に立つ時のネザメは──たとえば生徒会長として挨拶をする時などは──どこか不敵さを感じさせる微笑みを見せる。彼のミステリアスな雰囲気を作る一因だ。
(かっわ、いい……!)
しかし気を許した相手に対しては屈託のない笑顔を見せる。邪気など全くない、幼子のような清純さを感じさせるのだ。だから穢したくなる。俗世で汚濁にまみれる前に、俺の手で壊してやりたくなる。
「……水月くん?」
あぁ全く、微笑み一つでゾクゾクさせてくれる。
「水月くん、水月くんったら」
「鳴雷一年生、ネザメ様がお呼びだぞ。早く返事をせんか」
「……あっ、あぁすいません、ちょっとボーッとしちゃって」
「ボーッと……? 僕と話している時に、他のことを考えないで欲しいな」
「考えてませんよ……ネザメさんがあんまり可愛いから、どうしてやろうかって、もう……自分によくない衝動あること思い知っちゃったりして、頭おかしくなりそうで、もうホント、ほんっと……狂う……」
「……? よくない衝動って何だい?」
「言えませんよ、よくないんだから……行動には絶対移しませんから、心配しないでください。自制心には自信があります。ネザメさんにはネザメさんが喜ぶことしかしませんよ」
「…………暴力的なことじゃないよね? 僕に腹が立つとか」
「違います! 誓って、違います」
そうだ、違う、違うと口にすれば自分の声が耳から入って脳に染み込み、そのうち本心から違うと言えるはずだ。暴力的な性衝動だ、乱暴に抱きたい、泣かせたい……ネザメに怒っている訳じゃない、彼に気に入らない部分なんて一つもない。キュートアグレッションと言ってしまえばそれに似た、独占欲だの支配欲だの入り交じった醜い性欲だ。
「だよね、水月くんはそんなことしない……優しい君がよくないと思うことは、きっと世間一般的には大したことがない「よくない」なんだろう。僕にとってはどうなんだろうね」
「……結構よくないことですよ?」
「もし、もしそれが、その……べ、ベッドの上で、行いたいことに関する衝動なら……僕を、その、少々乱暴に……暴きたい、とかなら…………僕、僕は、構わないよ、君になら……水月くんになら、少しくらい痛いことでも、苦しいことでも…………君の愛を感じられるなら、僕は」
「ダメです」
「……水月くん?」
「やめてくださいそんなこと言うの……愛情は苦痛なんかじゃない、そんなことするの愛情じゃない。嬉しくて気持ちいいことだけが愛情なんです、そう思っててください、もし俺が酷いことしたらすぐ怒ってください」
「…………どうしてそんな泣きそうな顔をするんだい」
「……他の彼氏の話をしても?」
「もちろん構わないよ、妬んだりしないさ。君がどんなふうに人を愛するのか聞かせておくれ」
「…………俺が、衝動的に酷いことしちゃっても、許してくれるんです。みんな……セイカとか特に。嫌がって欲しい、怒って欲しい、許さないで欲しい……俺を調子に乗らせないで欲しいんです、美少年達から愛を返してもらえるのは得難い幸運だってずっと思わせて欲しい、初心を忘れたくない……傲慢になりたくない」
「水月くん……そう思えるだけで君は素晴らしい、美しい心の持ち主だよ。だからきっとみんな許してしまうんだ、君が深く反省していると分かるから」
「…………」
「水月くん、そんな顔をしないで。どうしてそんなに自分に厳しくするんだい? もっと認めてあげて、君自身を。君は身も心も美しいんだ、だから僕は君のことが好きなんだ、何をされてもいいと思えるし、何もかも君がいい。触れるのも、キスをするのも、手を掴まれるのも、何もかも……」
「…………ネザメさん」
「……寝室に行こうか」
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