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飼育小屋の様子見 (水月+カンナ・リュウ・シュカ)
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冷静に考えると、俺はすごいのではないか? 入学してから二日目で可愛いメカクレ男子と兜合わせをしたんだぞ、中学ではイジメられていたのに。童貞なのに。これぞ超絶美形パワー! 素晴らしい、やはり人間は顔が全てだ。
「みぃくん……立てる?」
カンナに手を貸されて立ち上がる。
「ありがと、カンナ。これは……俺が捨てておくよ」
精液を受け止めたティッシュを丸め、手の中に隠す。
(くそぅ……カンナきゅんのだけなら永久保存確定でしたのに、自分のも入れてしまってはただのゴミですぞ)
心の中で後悔しつつ、トイレのゴミ箱にティッシュを捨てた。手もそこで洗い、冷えた手を温めるように指を絡め合う。
「…………かえ、る?」
「うん、帰ろ……ぁ、ちょっと飼育小屋見に行かないか? カピバラ生で見たことないしさ」
「……う、ち…………さぎ、る」
「ん……?」
「だ、からぁっ……ぼく……うさ、ぎ……かって……」
カンナは家でウサギを飼っているのか。静かな彼には似合う気がする。
「そっか。俺、動物飼ったことないんだよなー、ウサギ可愛いか? で、飼育小屋行くか? 嫌なのか?」
「…………」
カンナは少し俯いて俺の手を握り返す。着いてきてくれるのだと判断し、飼育小屋の方へ向かった。そこには各クラスの飼育委員だろう者達が集まっており、俺が傍に寄るとちょうど解散した。
「おや……委員長、どうなされました?」
一番に俺に気付いたのは鳥待だった。センター分けの黒髪は行儀よく切り揃えられており、ハネなどの遊び心もない。
(眼鏡っ子可愛いですな~……ん? 左目、なんか刀傷みたいなのありますな。真面目なメガネくんがどうしてこんな少年漫画の主人公みたいな傷を……)
眉から頬骨の下までを切ったような傷跡が気になったが、それを表に出さないよう努めた。
「あぁ、鳥待。用事が終わったからちょっと様子見に来たんだ、もう終わったのか?」
「ええ、用事とは学校でのことだったのですね」
飼育担当だろう教師が「早く帰れよ」と軽く声をかけて去っていく。集まっていた生徒達ももう帰ったようだ。
「あ、天正、飼育委員どうだ? やれそうか?」
不機嫌そうにしているリュウに話しかける。彼が本当にMなのか、彼からの好感度がどうなっているのか、その辺りはまだよく分からない。注意しておかなければ。
「…………全っ然つつかれへんかったわ」
「私に感謝してくださいね」
「他のヤツん時はつついとったくせに俺らん時だけ全然やってんで、なんなん」
「どうして痛い目に遭わずに済んだのに嫌そうなんですか?」
「…………なんでつつかれへんかったんか分からんからやメガネ」
「鳥なんてちょっと睨めば寄ってきませんよ」
鳥待は真剣な顔で眼鏡をクイッと押し上げながら答えた。
(ふぉぉぉ眼鏡クィッですぞ! 美形の眼鏡クィッはいいもんですなぁ、今度撮らせて欲しいですぞ)
眼鏡に興奮しているとスネを軽く蹴られた。視線をやるまでもなくリュウだと分かる。
「……なぁ、アイツ気味悪いんやけど。飼育委員は真面目にやるからアイツどっかやってーな」
普通に話しかけてきた……今日、トイレで無理矢理しゃぶらせたよな? なんで普通に話しかけられるんだ? とりあえず無難に返すか。
「つつかれなかったんだろ? よかったじゃないか」
「ことなかれ主義やのぉ、ほんま自分みたいなん嫌いやわ……死ね」
暴言を吐かれた。嫌われているのか? いや、嫌われたとしたら二度と話しかけてこないレベルで嫌われるだろう、なんなんだ?
「死ねだなんて人に言ってはいけませんよ」
「鳥待、いいよ。天正のは語尾みたいなものだから。でも、俺以外には言うなよ、傷付く人も居るからな」
「心配せんでも自分以外には言わへんわ」
オタク心的にはツンデレと解釈してしまいたいが、犬猿の仲に両想いとルビを振るのは冷静に考えると異常な思考回路だ。慎重に見極めよう。
「そろそろ帰ろう。二人は電車乗るのか?」
「乗んで。もしええんやったら一緒に……」
「乗ります。ご一緒させてください」
リュウは舌打ちをして鳥待を睨んだ。
「…………」
カンナも不機嫌そうだ。俺と二人きりになりたかったのか、見知らぬクラスメイトが怖いのか、自惚れた俺は前者を選ぶ。さて鳥待は──
「天正さん、歩道は縦一列になって歩きましょう」
──相も変わらず真面目ムーヴ。一回ヤれば堕ちるのは早そうだが、ヤるまでが大変そうだ。出来れば手荒な真似はしたくないし、どう誘おうか。
「……どうした? 俺の顔に何かついてるのか?」
「なんでもありませんよ」
じっと顔を見つめてくることが多いから、脈ナシってこともないと思うけど。
「みぃくん……立てる?」
カンナに手を貸されて立ち上がる。
「ありがと、カンナ。これは……俺が捨てておくよ」
精液を受け止めたティッシュを丸め、手の中に隠す。
(くそぅ……カンナきゅんのだけなら永久保存確定でしたのに、自分のも入れてしまってはただのゴミですぞ)
心の中で後悔しつつ、トイレのゴミ箱にティッシュを捨てた。手もそこで洗い、冷えた手を温めるように指を絡め合う。
「…………かえ、る?」
「うん、帰ろ……ぁ、ちょっと飼育小屋見に行かないか? カピバラ生で見たことないしさ」
「……う、ち…………さぎ、る」
「ん……?」
「だ、からぁっ……ぼく……うさ、ぎ……かって……」
カンナは家でウサギを飼っているのか。静かな彼には似合う気がする。
「そっか。俺、動物飼ったことないんだよなー、ウサギ可愛いか? で、飼育小屋行くか? 嫌なのか?」
「…………」
カンナは少し俯いて俺の手を握り返す。着いてきてくれるのだと判断し、飼育小屋の方へ向かった。そこには各クラスの飼育委員だろう者達が集まっており、俺が傍に寄るとちょうど解散した。
「おや……委員長、どうなされました?」
一番に俺に気付いたのは鳥待だった。センター分けの黒髪は行儀よく切り揃えられており、ハネなどの遊び心もない。
(眼鏡っ子可愛いですな~……ん? 左目、なんか刀傷みたいなのありますな。真面目なメガネくんがどうしてこんな少年漫画の主人公みたいな傷を……)
眉から頬骨の下までを切ったような傷跡が気になったが、それを表に出さないよう努めた。
「あぁ、鳥待。用事が終わったからちょっと様子見に来たんだ、もう終わったのか?」
「ええ、用事とは学校でのことだったのですね」
飼育担当だろう教師が「早く帰れよ」と軽く声をかけて去っていく。集まっていた生徒達ももう帰ったようだ。
「あ、天正、飼育委員どうだ? やれそうか?」
不機嫌そうにしているリュウに話しかける。彼が本当にMなのか、彼からの好感度がどうなっているのか、その辺りはまだよく分からない。注意しておかなければ。
「…………全っ然つつかれへんかったわ」
「私に感謝してくださいね」
「他のヤツん時はつついとったくせに俺らん時だけ全然やってんで、なんなん」
「どうして痛い目に遭わずに済んだのに嫌そうなんですか?」
「…………なんでつつかれへんかったんか分からんからやメガネ」
「鳥なんてちょっと睨めば寄ってきませんよ」
鳥待は真剣な顔で眼鏡をクイッと押し上げながら答えた。
(ふぉぉぉ眼鏡クィッですぞ! 美形の眼鏡クィッはいいもんですなぁ、今度撮らせて欲しいですぞ)
眼鏡に興奮しているとスネを軽く蹴られた。視線をやるまでもなくリュウだと分かる。
「……なぁ、アイツ気味悪いんやけど。飼育委員は真面目にやるからアイツどっかやってーな」
普通に話しかけてきた……今日、トイレで無理矢理しゃぶらせたよな? なんで普通に話しかけられるんだ? とりあえず無難に返すか。
「つつかれなかったんだろ? よかったじゃないか」
「ことなかれ主義やのぉ、ほんま自分みたいなん嫌いやわ……死ね」
暴言を吐かれた。嫌われているのか? いや、嫌われたとしたら二度と話しかけてこないレベルで嫌われるだろう、なんなんだ?
「死ねだなんて人に言ってはいけませんよ」
「鳥待、いいよ。天正のは語尾みたいなものだから。でも、俺以外には言うなよ、傷付く人も居るからな」
「心配せんでも自分以外には言わへんわ」
オタク心的にはツンデレと解釈してしまいたいが、犬猿の仲に両想いとルビを振るのは冷静に考えると異常な思考回路だ。慎重に見極めよう。
「そろそろ帰ろう。二人は電車乗るのか?」
「乗んで。もしええんやったら一緒に……」
「乗ります。ご一緒させてください」
リュウは舌打ちをして鳥待を睨んだ。
「…………」
カンナも不機嫌そうだ。俺と二人きりになりたかったのか、見知らぬクラスメイトが怖いのか、自惚れた俺は前者を選ぶ。さて鳥待は──
「天正さん、歩道は縦一列になって歩きましょう」
──相も変わらず真面目ムーヴ。一回ヤれば堕ちるのは早そうだが、ヤるまでが大変そうだ。出来れば手荒な真似はしたくないし、どう誘おうか。
「……どうした? 俺の顔に何かついてるのか?」
「なんでもありませんよ」
じっと顔を見つめてくることが多いから、脈ナシってこともないと思うけど。
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