161 / 2,313
ずっしりテディベア
しおりを挟む
本屋の裏手で歌見と話していると母から電話がかかってきた。また男の家に寄っているのかという嫌味だ、早く帰らないと夕飯を減らされてしまう。
「すぐ帰るからご飯減らすのだけは……! あっ、切られた」
「お母さんか?」
「はい……」
カッコ悪いところを見せてしまった。落ち込む俺の頭を歌見が撫でる。
「高校生らしいところが見られてなんか安心したよ」
「えぇ……?」
「家は近くか? 送ってやるよ。もう真っ暗だからな、心配だ」
「でも」
「いいから送らせてくれ、彼氏らしいことがしたいんだよ」
これ以上遠慮するのは逆に失礼だ。頷くと腰に腕が回された。これじゃまるで歌見の彼女だ。
「……彼氏」
そういえば、告白ってしたっけ? されたっけ? 好きだと言い合った記憶はあるけれど、ハッキリ付き合おうとは話していないよな。
「水月は着痩せするタイプだよな」
腰に回った腕は大人しくはしていない。太腿をさすったり、腰を掴んだり、腹筋を撫で回したりしている。
「結構鍛えてますから……見えませんか?」
「あぁ、服の上からじゃ見ても分からない」
「そうなんですか……」
「見て分かるくらいに鍛えたいのか? 今くらいのが一番顔に合ってると思うぞ」
「俺もそう思ってます。脱いだらすごい、の意外性も持っておきたいですし現状維持ですね」
「へぇ? 早く脱がしたいな」
すりすりと尻を撫でられ、やはり歌見は俺を抱く気なんだなと実感する。どうやって俺がタチだと認めさせようかな、思い付くまで歌見の家に行くのは控えるべきかもしれない。
「触るのと見るのじゃまた違うんだろうな……」
「先輩、男の裸見て勃ちます?」
「水月のなら勃つよ、確信がある」
「…………嬉しい」
健気さを演出して微笑むと頬にちゅっとキスをされた。歌見のシャツを掴み、控えめに「口がいい」と言うと唇にしてくれた。
「ん……」
人気がないとはいえ道のド真ん中でキスをしてくれるなんて、腰を抱かれた時から思っていたけれど遠慮のない人だ。
「……好きだ、水月」
「ありがとうございます、俺も先輩好きですよ」
街灯に照らされたアッシュグレーの髪は普段以上に白っぽく見える。日焼けした肌も相まってどこか異質な魅力を感じる。
「あ、先輩。俺の家ここです」
「へぇ……いい家だな」
「母さんに挨拶してきます?」
「子供に手ぇ出しておいてそりゃキツいだろ」
年齢差を気にしているのだろうか。歌見はまだ酒を飲めない歳なのだから、レイよりはマシなのに。
「それじゃあ、さようなら。また明日、先輩」
「あぁ……また明日。おやすみ」
ちゅっと短く唇を重ね、積極的な人だなと笑いながら唇を指でなぞる。スマホ片手に玄関扉を開けて中に入り、鍵をかけながら電話をかけた。
「…………もしもし」
『もしもしっすせんぱい、今ちょうど配達終わったっすよ、これから着替えるっす。せんぱいどこに居るんすか?』
「早く帰ってこないと飯抜きだって言われたから家帰っちゃったよ」
『えぇーっ! そんなぁ……』
電話の向こうでレイは酷く落ち込んでいる。歌見が居なくても俺は母からの電話で帰宅していただろうから、これは避けられない展開だったのだ。
『……せんぱいにプレゼント貰ったお礼に、プレゼント用意したのに』
「プレゼント? へぇ……それ、今日じゃなきゃダメか?」
『んなことないっす。明日にするっすよ、今から行くのは悪いっすし』
「え、そうか……分かった。じゃあな」
てっきり家まで届けに来てくれると思っていた。流石に自惚れが過ぎるぞと自分を戒め、手を洗いに洗面所へ。手を洗いながら鏡の中の超絶美形を眺め、この顔ならどれだけ自惚れてもいいのではないかと自惚れた。
母に小言を言われながらの夕飯を終え、諸々の後に就寝。朝までぐっすり眠った俺は、目を閉じたままアラームを止めてため息をつき、ゆっくりと目を開ける──死んだ魚のような目が俺を見つめていた。
「ぅわぁああっ!?」
寝ぼけながらも叫んで壁に頭をぶつける。
「おはようございますっすせんぱい。驚かせたみたいで申し訳ないっす」
床に正座をしたレイがベッドに顎を乗せていた。
「レ、レイ……? 何してたんだ、お前」
「何って、せんぱいの寝顔見てたんすよ」
朝早くから家の前に座り込んで俺を待っているのが不憫だったのでレイには合鍵を渡したが、短慮だったかもしれない。こんなふうに毎朝驚かされたら心臓が止まってしまう。
「そう、か……びっくりしたー……」
「せんぱいの寝顔可愛かったっす。たくさんたくさん撮ったんすよ」
「……そっか」
ベッドから降り、スマホに頬擦りをしているレイの頭を軽く撫でた。ピンク色の染髪は相変わらず柔らかい。
「じゃあ俺支度するから」
「プレゼントあるんで時間作って欲しいっす」
「あぁ、レイは朝飯どうする? 母さんに頼んでこようか」
「買って来てるんでお構いなくっす」
コンビニの袋を見せたレイの頭をまた撫で、朝支度を開始。身嗜みを整え朝食を終え、部屋に戻って荷物を準備。
「……よし。レイ、支度終わったぞ。十分くらい余裕ある」
「ありがとうございますっすせんぱい、じゃあプレゼント……はいっす」
ピンク色の包装紙とリボン、レイの髪を連想させるプレゼントを受け取る。ニコニコと微笑んでいるレイの顔を見ながらリボンをほどき、中身を取り出す。
「……くま?」
「はいっす、テディベアっす!」
「へぇ……! 随分可愛いものを……んっ?」
人間の頭程度のサイズのテディベアだ。茶色い毛の出来のいいそれを抱き上げ、俺は違和感を覚えた。
「どうしたんすか? せんぱい」
「……いや」
重い。テディベアの中身は綿だろうに、異様に重い。いや、ちゃんと座るように尻や足に重りを入れることはあると聞くから、それだろうか。
「ちょ、せんぱい、なんてそんなクマちゃん揉むんすか」
明らかにおかしい。テディベアとしての重りとかじゃなく、硬くて四角い物が胴体に入っている。それを確認する途中、手触りにも違和感を覚えて背中側をじっと観察する。
「せ、せんぱい……」
「……何だこの縫い目」
茶色いテディベアの背に目立つ、赤く荒い縫い目。
「……レイ、お前……何か仕込んだか?」
「なん、にも……?」
「…………レイ」
「なんでそんな気付くの早いんすかぁ! マイクとカメラっすよ、直接仕掛けるよりクマに仕込んだ方がいいかなーって思っただけなんすよ、なんでそんな気にしちゃうんすか!」
よくテディベアの目を見つめてみると、左右で少し違う。どちらかがカメラのレンズなのだろう。俺はテディベアを軽く撫で、勉強机の上に置いた。
「ここでいいか? 他の彼氏連れ込んでヤってるとこ撮れても文句言うなよ」
「…………せんぱぁい! 好きっす好きっす大好きっすぅ!」
何がツボに入ったのか、レイは俺に抱きついて涙ながらに好意を叫んだ。
「すぐ帰るからご飯減らすのだけは……! あっ、切られた」
「お母さんか?」
「はい……」
カッコ悪いところを見せてしまった。落ち込む俺の頭を歌見が撫でる。
「高校生らしいところが見られてなんか安心したよ」
「えぇ……?」
「家は近くか? 送ってやるよ。もう真っ暗だからな、心配だ」
「でも」
「いいから送らせてくれ、彼氏らしいことがしたいんだよ」
これ以上遠慮するのは逆に失礼だ。頷くと腰に腕が回された。これじゃまるで歌見の彼女だ。
「……彼氏」
そういえば、告白ってしたっけ? されたっけ? 好きだと言い合った記憶はあるけれど、ハッキリ付き合おうとは話していないよな。
「水月は着痩せするタイプだよな」
腰に回った腕は大人しくはしていない。太腿をさすったり、腰を掴んだり、腹筋を撫で回したりしている。
「結構鍛えてますから……見えませんか?」
「あぁ、服の上からじゃ見ても分からない」
「そうなんですか……」
「見て分かるくらいに鍛えたいのか? 今くらいのが一番顔に合ってると思うぞ」
「俺もそう思ってます。脱いだらすごい、の意外性も持っておきたいですし現状維持ですね」
「へぇ? 早く脱がしたいな」
すりすりと尻を撫でられ、やはり歌見は俺を抱く気なんだなと実感する。どうやって俺がタチだと認めさせようかな、思い付くまで歌見の家に行くのは控えるべきかもしれない。
「触るのと見るのじゃまた違うんだろうな……」
「先輩、男の裸見て勃ちます?」
「水月のなら勃つよ、確信がある」
「…………嬉しい」
健気さを演出して微笑むと頬にちゅっとキスをされた。歌見のシャツを掴み、控えめに「口がいい」と言うと唇にしてくれた。
「ん……」
人気がないとはいえ道のド真ん中でキスをしてくれるなんて、腰を抱かれた時から思っていたけれど遠慮のない人だ。
「……好きだ、水月」
「ありがとうございます、俺も先輩好きですよ」
街灯に照らされたアッシュグレーの髪は普段以上に白っぽく見える。日焼けした肌も相まってどこか異質な魅力を感じる。
「あ、先輩。俺の家ここです」
「へぇ……いい家だな」
「母さんに挨拶してきます?」
「子供に手ぇ出しておいてそりゃキツいだろ」
年齢差を気にしているのだろうか。歌見はまだ酒を飲めない歳なのだから、レイよりはマシなのに。
「それじゃあ、さようなら。また明日、先輩」
「あぁ……また明日。おやすみ」
ちゅっと短く唇を重ね、積極的な人だなと笑いながら唇を指でなぞる。スマホ片手に玄関扉を開けて中に入り、鍵をかけながら電話をかけた。
「…………もしもし」
『もしもしっすせんぱい、今ちょうど配達終わったっすよ、これから着替えるっす。せんぱいどこに居るんすか?』
「早く帰ってこないと飯抜きだって言われたから家帰っちゃったよ」
『えぇーっ! そんなぁ……』
電話の向こうでレイは酷く落ち込んでいる。歌見が居なくても俺は母からの電話で帰宅していただろうから、これは避けられない展開だったのだ。
『……せんぱいにプレゼント貰ったお礼に、プレゼント用意したのに』
「プレゼント? へぇ……それ、今日じゃなきゃダメか?」
『んなことないっす。明日にするっすよ、今から行くのは悪いっすし』
「え、そうか……分かった。じゃあな」
てっきり家まで届けに来てくれると思っていた。流石に自惚れが過ぎるぞと自分を戒め、手を洗いに洗面所へ。手を洗いながら鏡の中の超絶美形を眺め、この顔ならどれだけ自惚れてもいいのではないかと自惚れた。
母に小言を言われながらの夕飯を終え、諸々の後に就寝。朝までぐっすり眠った俺は、目を閉じたままアラームを止めてため息をつき、ゆっくりと目を開ける──死んだ魚のような目が俺を見つめていた。
「ぅわぁああっ!?」
寝ぼけながらも叫んで壁に頭をぶつける。
「おはようございますっすせんぱい。驚かせたみたいで申し訳ないっす」
床に正座をしたレイがベッドに顎を乗せていた。
「レ、レイ……? 何してたんだ、お前」
「何って、せんぱいの寝顔見てたんすよ」
朝早くから家の前に座り込んで俺を待っているのが不憫だったのでレイには合鍵を渡したが、短慮だったかもしれない。こんなふうに毎朝驚かされたら心臓が止まってしまう。
「そう、か……びっくりしたー……」
「せんぱいの寝顔可愛かったっす。たくさんたくさん撮ったんすよ」
「……そっか」
ベッドから降り、スマホに頬擦りをしているレイの頭を軽く撫でた。ピンク色の染髪は相変わらず柔らかい。
「じゃあ俺支度するから」
「プレゼントあるんで時間作って欲しいっす」
「あぁ、レイは朝飯どうする? 母さんに頼んでこようか」
「買って来てるんでお構いなくっす」
コンビニの袋を見せたレイの頭をまた撫で、朝支度を開始。身嗜みを整え朝食を終え、部屋に戻って荷物を準備。
「……よし。レイ、支度終わったぞ。十分くらい余裕ある」
「ありがとうございますっすせんぱい、じゃあプレゼント……はいっす」
ピンク色の包装紙とリボン、レイの髪を連想させるプレゼントを受け取る。ニコニコと微笑んでいるレイの顔を見ながらリボンをほどき、中身を取り出す。
「……くま?」
「はいっす、テディベアっす!」
「へぇ……! 随分可愛いものを……んっ?」
人間の頭程度のサイズのテディベアだ。茶色い毛の出来のいいそれを抱き上げ、俺は違和感を覚えた。
「どうしたんすか? せんぱい」
「……いや」
重い。テディベアの中身は綿だろうに、異様に重い。いや、ちゃんと座るように尻や足に重りを入れることはあると聞くから、それだろうか。
「ちょ、せんぱい、なんてそんなクマちゃん揉むんすか」
明らかにおかしい。テディベアとしての重りとかじゃなく、硬くて四角い物が胴体に入っている。それを確認する途中、手触りにも違和感を覚えて背中側をじっと観察する。
「せ、せんぱい……」
「……何だこの縫い目」
茶色いテディベアの背に目立つ、赤く荒い縫い目。
「……レイ、お前……何か仕込んだか?」
「なん、にも……?」
「…………レイ」
「なんでそんな気付くの早いんすかぁ! マイクとカメラっすよ、直接仕掛けるよりクマに仕込んだ方がいいかなーって思っただけなんすよ、なんでそんな気にしちゃうんすか!」
よくテディベアの目を見つめてみると、左右で少し違う。どちらかがカメラのレンズなのだろう。俺はテディベアを軽く撫で、勉強机の上に置いた。
「ここでいいか? 他の彼氏連れ込んでヤってるとこ撮れても文句言うなよ」
「…………せんぱぁい! 好きっす好きっす大好きっすぅ!」
何がツボに入ったのか、レイは俺に抱きついて涙ながらに好意を叫んだ。
34
あなたにおすすめの小説
男子高校に入学したらハーレムでした!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
ゆっくり書いていきます。
毎日19時更新です。
よろしくお願い致します。
2022.04.28
お気に入り、栞ありがとうございます。
とても励みになります。
引き続き宜しくお願いします。
2022.05.01
近々番外編SSをあげます。
よければ覗いてみてください。
2022.05.10
お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。
精一杯書いていきます。
2022.05.15
閲覧、お気に入り、ありがとうございます。
読んでいただけてとても嬉しいです。
近々番外編をあげます。
良ければ覗いてみてください。
2022.05.28
今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。
次作も頑張って書きます。
よろしくおねがいします。
男子寮のベットの軋む音
なる
BL
ある大学に男子寮が存在した。
そこでは、思春期の男達が住んでおり先輩と後輩からなる相部屋制度。
ある一室からは夜な夜なベットの軋む音が聞こえる。
女子禁制の禁断の場所。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
お兄ちゃんができた!!
くものらくえん
BL
ある日お兄ちゃんができた悠は、そのかっこよさに胸を撃ち抜かれた。
お兄ちゃんは律といい、悠を過剰にかわいがる。
「悠くんはえらい子だね。」
「よしよ〜し。悠くん、いい子いい子♡」
「ふふ、かわいいね。」
律のお兄ちゃんな甘さに逃げたり、逃げられなかったりするあまあま義兄弟ラブコメ♡
「お兄ちゃん以外、見ないでね…♡」
ヤンデレ一途兄 律×人見知り純粋弟 悠の純愛ヤンデレラブ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる