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本屋の裏での会議
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歌見と共に一つのベッドで健全な一夜を過ごし、翌日の早朝は歌見の悲鳴で目を覚ました。
「ななななっ……なんでっ、なんでそんなとこに居るんだ! 目がっ……目が覚めた瞬間に目が合ったら、怖いだろうが! バカ!」
「俺はせんぱいの寝顔を見てたんす! 歌見せんぱいの目なんか見てないっす!」
「お前のその金魚草みたいな目でどこ見てるかなんか分かるか!」
どうやら俺の寝顔を観察していたレイに驚いたようだ。俺もよく目覚めた瞬間のレイの顔のドアップに叫ぶから気持ちは分かるが、耳が痛い。
「え……何すか金魚草って。確かちっちゃい可愛い花がワラワラしたヤツっすよね? 花みたいな目ってことっすか? 口説いてんすか?」
「違う、なんかオギャアアって言うヤツだ」
「言う? 花が……?」
レイは光のない真っ黒な瞳をまんまるに開いて首を傾げていたが、俺が上体を起こすと歌見との会話を中断して俺に抱きついた。
「おはようございますっすせんぱい!」
「おはよう、レイ。納期大丈夫か?」
「顔の差分をあと、えーっと……七個ほど描けばOKっす。リテイクが少ないのを祈るしかないっすね」
「そういえばイラストレーターだったな、お前。本業が忙しいんならバイトなんて辞めればいいのに」
共に働いていても俺の勤務中客として店に居座ろうと、きっと俺を観察出来る時間は変わらないだろう。俺と知り合えた今、レイがバイトを続ける理由はないに等しい。
「俺が居なきゃバイク配達やばかったんすよ? そんなこと言っていいんすか」
レイに辞める気がないのならそれでも別にいい、とにかく体調にだけは気を付けて欲しいものだ。
午前までの授業が終わり、昨日同様ファミレスで昼食を終えた後、俺達は本屋の裏手に集まった。
「何しに来たんだお前ら、こっちは裏だぞ」
配達に一区切りつけて戻ってきたらしい歌見はヘルメットを被ったままだ。
「こんにちはぁ歌見の兄さん」
「やっほーナナさん。俺達カラオケに打ち上げに行くんだけどさ~、ナナさん達も来るんだよね?」
「打ち上げについての相談です。あなたと木芽さんに会うならここが一番手っ取り早いかと」
「ってかさナナさん、このめんもだけどグルチャ入ってよ。こーいう時めんどいじゃん」
「……ちょっと待ってろ、木芽もそろそろ休憩のはずだ。呼んでくる」
歌見が店の中へ入ってしまうとハルは不安げな顔で俺を見つめ、元気のない声で「みっつん」と言いながら俺の服の裾を掴んだ。
「どうした? ハル」
「ナナさん怒らせたかな~……やっぱ店に押しかけんのはダメだったかな~……」
「別に怒ってなかったと思うぞ、大丈夫だ」
「そ~ぉ? なんか怒ってる感じに見えたんだけどな~……」
おそらく緊張して表情が硬くなっていたのだろう、強面の歌見はそれだけで不機嫌に見えてしまう。損な人だ。
「大丈夫、俺が選んだ人がそんな短気なわけないだろ?」
「でも~……めっちゃ短気なの居るしぃ~」
「なんでそこで私を見るんですか」
ハルをなだめ終えるより先に歌見とレイが店から出てきた。現在本業が忙しいらしいレイは寝不足なのか欠伸をしている。
「やっほー、このめん。昨日ぶり~。まずはねー、グループ作るから入って欲しいんだけど~」
メッセージアプリ内にハルがグループを立ち上げる。これでいつでも七人全員でのチャット、通話が可能という訳だ。
「打ち上げするカラオケの住所とかここに送るから~、ちゃんと見てね~?」
「七人だけでいいのか? えっと……あぁ、お前だ、時雨、お前の弟は入れなくていいのか?」
「……!?」
カンナがとてつもない速度で俺の方を振り向いた。それでも崩れることのない前髪の下でどんな目をしているのかは考えたくない。
「しぐしぐ弟なんか居たの?」
「なんだ、聞いてないのか? 七人目の彼氏らしいぞ」
「マジ? へー……えっ、弟ってことは中学生? やばくない?」
カンナが無言で俺の服の裾を掴んでいる。
「遠くに住んでいるんだよな? 打ち上げには来ないとしても、チャットくらいはな」
「あー……いや、カンナの弟は……」
「……か、た。しょ、たい……しと、く」
スマホを取り出したカンナの腰を抱き、みんなからそっと三歩離れ、彼の耳元に口を寄せる。
「ごめんな、カンナ。人数の宣告はちゃんとやっとかないとと思ってさ……今七人って言っちゃって、そしたらどんな子だって聞かれたからつい……で、でも、カンナの弟だって言っただけなんだ。カミアの名前は出してないからセーフにしてくれないか……?」
「……つに、ぃ……よ。も、ど……しよ……も、ない、し……やま、な……で……ぃ」
もうどうしようもないし、謝らないでいい? 謝罪も受け入れてくれない程に怒らせてしまったのか。カミアについて話すのは絶対にいけないと分かっていたのに、歌見にはもう嘘をつけないからと馬鹿正直に話してしまって……あぁ、俺はなんて愚かなんだろう。
「しょー、た……した」
落ち込む俺をよそにカンナがみんなの元へ戻る。
「遠くってどんくらい? 打ち上げとか来てくんないかな~、ってか弟くんいくつ?」
「おな……ど、し」
「双子か?」
歌見が背を曲げて尋ねるとカンナはリュウの後ろに隠れてから頷いた。
「……歌見せんぱいめっちゃ怖がられてるっすね」
「…………うるさい」
「カンナせんぱいはお菓子あげたら懐くらしいっすよ」
「……別に懐かれたい訳じゃない」
言いながらも歌見はポケットを探り、何も入っていないのを確認してため息をついた。
「…………そういえば水月、お前今日お母さんに話があるとか言われてなかったか? まだ帰らなくて大丈夫か?」
「はい、遊びに行ってもいいけど泊まりはダメって言われただけなので。母さんまだ仕事だと思いますし」
「じゃあ今日もみっつん家行っていい? 俺このめんに勉強教えて欲しいんだけど~」
「俺今日は仕事あるんで無理っすね」
「俺が教えてやろうか?」
「ナナさん大学生だっけ。頼れるかも~、お願いしていーい?」
「あぁ、じゃあバイトが終わったら水月の家に行くよ」
今日も俺の家での勉強会が決まった。連続で彼氏全員と家で過ごせるなんて俺は幸せ者だ。だが今日は全員をつまみ食いするような真似はせず、カンナのご機嫌取りに努めるべきかもしれない。
「ななななっ……なんでっ、なんでそんなとこに居るんだ! 目がっ……目が覚めた瞬間に目が合ったら、怖いだろうが! バカ!」
「俺はせんぱいの寝顔を見てたんす! 歌見せんぱいの目なんか見てないっす!」
「お前のその金魚草みたいな目でどこ見てるかなんか分かるか!」
どうやら俺の寝顔を観察していたレイに驚いたようだ。俺もよく目覚めた瞬間のレイの顔のドアップに叫ぶから気持ちは分かるが、耳が痛い。
「え……何すか金魚草って。確かちっちゃい可愛い花がワラワラしたヤツっすよね? 花みたいな目ってことっすか? 口説いてんすか?」
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「どうした? ハル」
「ナナさん怒らせたかな~……やっぱ店に押しかけんのはダメだったかな~……」
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「……か、た。しょ、たい……しと、く」
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イラスト: 市丸きすけ 先生
出版社: アルファポリス
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【作者より、感謝を込めて】
この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。
そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。
本当に、ありがとうございます。
【これまでの主な実績】
アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得
小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得
アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞
第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過
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