冴えないオタクでしたが高校デビューに成功したので男子校でハーレムを築こうと思います

ムーン

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胎動するトラウマ

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金曜日の朝、少し早起きをして昨日の見舞い帰りに買った食材で朝食を作った。レイの家に来てから初めて三人で朝食を食べられると思ったのだが──

「レイ! 起きろ! 飯作ったから!」

「んんん……大声、やめ…………頭、ガンガンするっす……」

──レイがなかなか起きず、俺が想像していた優雅な食事が始まらなかった。

「ったく、お前昨日俺が寝た後こっそり酒飲んだだろ。冷蔵庫から三本も減ってたぞ」

「んー……」

「…………朝までぐっすり眠れるように、抱き潰してやろうか?」

「抱いてくれるんすか!? あっ……痛た、急に起きたら頭が……」

「ほら起きろ、飯作ったから」

二日酔いに苦しむレイを無理矢理抱きかかえてダイニングに向かうと、俺が焼いた目玉焼きを美味そうに食べているアキが居た。

「アキっ、お前……もういいや、レイ、ほら、座れ」

三人同時に食べたかったのだが……

「にーに、にーに作るした卵美味しいです。ご飯作るするありがとうです!」

まぁいいか!



レイは二日酔いで潰れていたし、アキは勝手に食べ始めていたしでろくな朝食ではなかったが、アキの可愛らしい笑顔を見られたからもうそれでいい。

「よし、じゃあ俺はもう学校行くけど、アキ……レイに酒を飲ませるなよ」

「二日酔いの時は迎え酒が……」

「分かるするしたです、このめ酒飲むする、ぼく怒るするです」

「飲まないっすけど……アキくんに怒られてもそんな怖くないっすね」

「アキはハイキック一撃で人を昏倒させられることを教えておく」

「ぇ」

青ざめてアキを見つめるレイを笑い、彼らに手を振って登校した。



昨日リュウを抱くと約束したからか、いつもお喋りな彼が今日は静かだ。それに言及すれば顔を赤くし、更に黙り込むという愛らしい反応を見せてくれた。

「てん、く……だい、じょ…………? 風邪、とか……」

「保健室行く~? 先生には言っとくよ」

「い、いや……そういうんとちゃうねん、体調は悪あらへんから気にせんといて」

カンナとハルに慰められるリュウから一歩離れ、リュウの照れの理由を察しているシュカが俺に囁く。

「……青姦をするなら虫除けスプレー必須ですよ」

「なるほど。ありがとう、買っとくよ」

新情報を手に入れたりもしつつ、昼休み、今日も年積には無視されたがネザメは選挙活動をサボって俺と二人きりの時間と場所を作ってくれた。

「テディベア喜んでくれました! 昨日は帰り際に泣かなくて……本当にありがとうございます」

「そうかい、役に立ったようでよかったよ。お礼は言葉よりも……ね?」

ネザメは自身の頬をつんとつつく。彼の求めを察した俺は身を屈め、その白い頬に唇を触れさせた。

「……ふふ、どういたしまして」

「本当に助かりましたよ。来週……月曜日に選挙ですよね、頑張ってください」

「もちろん。君を手に入れられるかどうかもかかっているからね」

「いやだから俺それまだ同意してないんですけど」

なんて会話をしているうちに昼休みは終わり、俺達はそれぞれの教室に戻った。何事もなく放課後まで時間は進み、今夜のためにリュウと話す時間を設けた。

「アキ、迎えに来てくれることになったからさ、駅で合流しろよ」

「ありがとさん、一人でもええ思うんやけどねぇ」

昨晩、俺はアキとレイにリュウを抱くことを話し、迎えの頼みを済ませておいた。時間を教えて待ち合わせるのには不安があったため、電話をかけたら駅に来てくれと頼んだ。

「もしもし、アキ? 学校終わるしたから、駅、リュウ、お迎え、来る欲しい。あぁ、ありがとうな、頼むよ」

「……アキくんと話すん傍から聞いてたらおもろいなぁ」

「うるさいなしょうがないだろ。ちゃんと合流しろよ、アキは多分日傘持ってるから分かりやすいと思うぞ」

「分かっとるて。水月はお見舞い行くんやんな? 仲良うやりや」

「あぁ、いつか紹介するよ」

今日は真っ直ぐに病院に向かったため、昨日よりも一時間は早く着いた。病室の前に立ったがセイカの叫び声などは聞こえない。

「セイカー……?」

「……鳴雷っ」

病室に入り、カーテンをくぐってセイカの元へ。テディベアを両腕で抱いた彼と目が合い、すぐに彼の拘束具が外されていることに気が付く。

「今日は早かったな」

「用事なかったからな。具合よくなったのか? アレ、ほら……ベルト? ないじゃん」

「拘束のことか? 朝に検査受けた後なんか外してもらえたぞ。寝返りも打てなかったからなぁ……楽になったよ」

「昨日より顔色いいよ。抱き締めてもいいかな」

セイカは特に照れた様子はなく頷き、テディベアを脇に置いて手を広げた。俺は靴を脱いでベッドに乗り、セイカの上半身をそっと抱き締めた。

「……あったかい。セイカ……夢みたいだよ、本当に。セイカを抱き締められるなんて、俺、すごく幸せだ」

「…………俺の何がそんなに気に入ってんのか知らねぇけど、まぁ喜んでんならよかったよ」

抱き締めた身体は想像以上に細い。中学の頃セイカはずっと冬服を着ていて、体育の時間も常にジャージだったから体型はあまり分からなかったけれど、ここまで細くはなかったと思う。

「本当に、本当にっ……大好きだ」

中学時代を思い返す度、吐きたくなる。セイカを愛おしく思い救いたいと願う裏で復讐の炎が燻る。好きだと声に出していないとその炎が燃え上がる気がしてしまう。セイカが少し元気になって話し方が俺を虐めていた当時に寄ってきた今は特に。

「……一旦離すよ」

身体を離し、ベッドの上で見つめ合う。濁った瞳は俺に殺意を向けていた目と同じものとは思えず、憎しみが落ち着く。

「鳴雷……」

セイカの右腕が俺の方を向く。肘下数センチから先がないその腕を見ていると劣情が湧き上がる。セイカは右腕を下ろし、左手で俺の頬に触れた。包帯のザラザラした感触が新鮮だ。

「俺、右利きなんだよ。たまにないの忘れて使おうとしちまう」

「そっか……じゃあ、飯とか不便だよな」

「スプーンかフォークだから何とかなってる。箸はキツいだろうな……」

「…………義手とか作る予定は?」

「ない。動くヤツは高いんだってよ。動かなきゃ別にいらないしな」

まぁ、左手が残っているなら日常生活は不便だろうが何とかなる……かな? 絶対に両腕が必要な状況が俺にはパッと思い付かない。

「義足は? こっちはないと歩けないだろ」

「まぁ、俺が自分で歩けなきゃ困るだろうし……買ってくれるんじゃないかな、安モンだろうけど」

「そっか。リハビリとかしてるのか?」

「いや、断面まだ柔らかいから無理。太腿にソケットつけるって言っても一番体重かかるのは断面だからさ……傷口にんなことしたらどうなるか分かるだろ?」

「あ、あぁ……傷、まだ塞がってないのか?」

「もうだいぶ。そろそろ包帯も外れると思う」

セイカの顔が見られるのは楽しみだが、セイカの顔を見て俺はこれまで通りに彼に接していけるかが不安だ。
包帯で彼の顔が見えないからこそイジメっ子だったセイカと今のセイカが頭の中で上手く繋がらず、軽い嘔吐感や呼吸のブレで済んでいるだけなのかもしれない。

「セイカの綺麗な顔が見れるのが楽しみだよ」

美少年を愛でる性欲がトラウマを上回ることを祈るしかない。
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